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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2021年2月の記事一覧

『火のない所に煙は』(芦沢央・新潮社)

『火のない所に煙は』(芦沢央・新潮社)

若いミステリー作家。殺人事件や探偵が登場するタイプではない。ホラーもの、とも言い難い。今回は、作家が新潮社から依頼を受けて怪談ものを書くというところからスタートする。短編がいくつも連なっているが、一つひとつは別の件である。但し、この作家が最初に書いた「染み」という怖い話に反応して、別の話が届けられたり、ファンめいた押し入りがやってきたりして、次々と怖い話が重なっていく。一つひとつの話は独立している

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『晩年のカント』(中島義道・講談社現代新書・2021.1.)

『晩年のカント』(中島義道・講談社現代新書・2021.1.)

2021年1月発行の知らせを聞いてすぐに注文。中島義道氏といえば、過激な発言で知られる哲学者を思う人も多いだろう。当人は過激だとは考えていない。当たり前のことを当たり前に言っているだけだ。これが出版社側からしてもいけると思ったのか、その著述は幾多の本となって、書店を賑わせている。
 
れっきとしたカント学者だ。著者は当初から、死への拒否感を丸出しにして本で叫び、世間の道徳的不条理に吠えてきていたが

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