見出し画像

アプリによるがん副作用管理のまとめ

※今回は3000字以内に抑えました。お時間のあるときにぜひ。

前回の記事はこちら。

全生存期間と治療継続期間の両延長はやはり魅力的です。そこで、アプリの実践的な使い方、アプリ以外の管理方法のポイント、アプリのデメリットなどをまとめました。

実践的な使い方

「病院指定アプリがない病院」に通われていたら、工夫します。特に支障のない方はアプリを上手に使うことで、ご自宅での様子を主治医にアピールできるといいのかなあと思います。副作用は病院ではなく、自宅で起きます!

便秘、下痢のあの辛さを、体重変化でアピール。アプリの折れ線グラフで見せたら一目瞭然です。どんなに言葉を尽くすことよりも説得的です。病院には通院や入院時の検査データしかありませんから。

診察時に渡される血液検査等の紙の検査項目一覧も、過去5回程度のデータです。アプリなら何年でも、検査項目の追加も自由です。写真も取り込めます。皮膚障害などは発現した日の状態、お薬を塗ったあとの経過も主治医なら見たくなります毎日撮影会をしてください。薬剤が変更されても、アプリならそのまま管理できます。同じ症状が出て「前はどう対処したかな?」となってもその場で遡ることができます。そのためのメモ機能もあります。喉元過ぎると熱さを忘れます。その場でメモってください。ぜひ未来のご自分にメッセージを!

診察前のあの長い待ち時間を使って、主治医に報告する下準備でもアプリは大活躍です。そして診察室を出た後、診察で触れなかった検査項目を凝視して一喜一憂されていること、付き添いのお子さんが一生懸命説明されていることを知っています。その場で写真に撮ってアプリに保存して、落ち着いたら大切な検査項目だけはアプリに入力してください。

治療を受けている病院とご自宅にそれなりの距離があるのでしたら、ご自宅や職場近くでも副作用の観察や処置をしてくれるクリニックや市中病院があるとベストです。主治医なら詳しいです。紹介してもらってください。主治医も巻き込んで、病院指定アプリよりも好成績を上げましょう

前回の臨床試験に対する主観…
薬物療法の期間が長ければ長いほど、差は開きます。長期間投与することで、副作用の頻度や程度も増加しますので。
免疫チェックポイント阻害薬を投与する免疫療法は、年単位が多いです。そして、どの薬剤よりも多種多様な副作用(免疫関連有害事象といいます)が出ますので、誰にも予測できません。
そこで、免疫療法と免疫療法に限らず長期投与の一部がん種(乳がんなど)からアプリを始める病院もあります。最初から全患者さんにしてしまうと現場が回らなくなるからです。また、全患者さんに導入したところで、モニタリングし切れなくなってしまい双方向管理が形骸化する可能性もあります。AIを導入しているケースもあるようですが。
私自身言いたいことはありますが、言ってもしょうがないので、こう実践的に考えませんか、こう動けますよ、というご提案でした。


アプリは厳しい方

当然いらっしゃいます。それでしたら、オリジナリティ溢れる冊子にしちゃってください。冊子の良さは、カラフルに、イラストも、付箋だって自由自在です。そして、冊子を主治医や看護師さんに見てもらってください。皮膚障害などの写真はガラケーでも写ルンですでもなんでもいいです。工夫次第でカバーできます。そして、必要に応じてかかりつけ医というフォロワーも!

アプリ以外で長年管理してきた方

冊子や手帳、スマホ、SNSなど色々なパターンがありそうです。そのスタイルが生活の一部になっているのでしたら、アプリに切り替えるのもどうなのかなあ…とも実は思っています。なので、診察室で主治医と共有できる媒体でしたらそれでも!
説明に難しそうな場合には、見せていただくと正確に伝わりかつ時間短縮に繋がることがあります。そして、説明されなかった症状はないものと受け取られるリスクの防止にもなります。SNSはなかなか見せにくい気がします笑

アプリのデメリットについて…
いくつかのアプリを試していて気づいたのが、どのアプリも頭を使わなくなります。そして、(紙の辞書と)電子辞書のデメリットと同じ状態になりました。
初回の投与時、「こんな症状はよく出ます」「こんな感じで記入してください」「こんな症状が出たらすぐ電話してください」と看護師さんから副作用の指導を受けたと思います。
病院によっては、数十頁にわたりカラーで印刷された副作用の写真や頻度などの冊子も。どれだけあるんですか?と最初は驚かれたはずです。
何か症状が出るたびに、冊子を参照されてきたはずです。でもアプリだと、あの機会はきっと減ります。データに置き換わるので。作業になるので。決まったことを毎日繰り返すだけになります。忙しい日にはとても楽ですが。
ですから、初めての方はひととおり副作用が頭に入るまで、冊子でも管理されたほうが無難です。発現頻度の低い症状も確認することになるので、毎日読むことで頭に残ります。そうなった状態からアプリを使えば、頻度の低い副作用も見逃す可能性はなくなるはずです。


病院指定アプリの次の目標

病院指定アプリでは、アラートが鳴ることで医療者が確認したり、自動的にメッセージを送ったりする仕組みを導入していることもあるようです。それによって、現場の負担軽減と患者さんの安心の両立を模索しています。

そして、次の目標は、電子カルテに反映されることです。現状の運用は、患者さんがアプリで記録した症状を看護師さんや薬剤師さんが中心となってモニタリングしています。つまり、主治医は基本的に関わっていません。報告を受けて、診察中に患者さんから聴くことはあっても、その場では確認できません。

電子カルテに反映されると、診察室でもより詳細にご自宅での患者さんの様子がわかるようになります(もちろん、主治医からすると負担も増えますが)。以前、診察中の録音問題の記事の中でも、主治医と患者さんやご家族とのコミュニケーションについて触れました。電子カルテに録音されたらいいのにと笑。

日常生活でさえすれ違うコミュニケーション。医療現場だとすれ違って当然です。それを減らすために主治医は工夫しています。患者さんやご家族もこれまでたくさん工夫されてきたはずです。文明の利器の良い部分も知っていただき、上手に利用できるといいんだろうなあと思っています。

すでに電子カルテに反映させている聖マリアンナ医科大学病院。レジメン(薬物療法版「旅のしおり」の記事でも登場したあの聖マリです。首都圏の中では、症例数が特別多いわけではありません。しかし、レジメンに記載された副作用の情報も絶妙なんです。患者さんに寄り添う病院です。神奈川に行くこと自体があまりない私ですが、何か機会があれば行ってみたいです。

最後に

アプリによる管理は、がん以外でも導入されています。慢性疾患や精神疾患の外来でも導入されて減薬に繋がっているようですね。最近ではApple Watch外来もあり、心臓疾患あたりでは威力を発揮できる気がします。
がんの副作用でも皮膚障害が出てしまうと、ステロイド剤を使用します。早く処置できると、少量で済みステロイドの投薬期間の短縮に繋がることもあるかもしれません。そして、国も医療DXに力を入れています。治療との相乗効果を期待しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?