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たとえ話からの副作用管理の話

※過去最多の4000字弱です。これまでの記事の中で一番重要なことを書いている気がします。お時間のあるときにどうぞ。


記事の投稿をより長く継続できるのは誰ですか?

①フォロワーがいない人

②フォロワーがいる人

③メッセージをくれるフォロワーがいる人

きっと③ですよね。
実験をしても、③だと思います。。。

①が、③よりも長くor同じくらい継続して投稿できる方法はないでしょうか。数年来の悩みです。


副作用管理の話です。
標準治療は日本全国同じです。でも、副作用管理の方法は違います。

先ほどのたとえ話を副作用管理にしてみます。

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治療をより長く継続できるのは誰ですか?

①冊子などで管理する人

②冊子などで管理して、かかりつけ医もいる人

③病院指定アプリで管理する人

統計はないのですが、現状多くの病院は①、一部の病院で③を採用しています。そして、今後は③がさらに増えてきます。

①について
製薬会社や病院オリジナルの冊子、あるいはご自身でダウンロードしたアプリで、副作用などを管理するケースです。

②について
かかりつけ医とは、治療を受けている病院とは異なる近所のクリニックなどで副作用の相談や処置をしてくれる医師、とここでは定義します。

③について
治療を受けている病院が指定するアプリで患者さんは症状などを記録して、病院はリアルタイムでその記録を確認した上で必要に応じてメッセージを送り、双方向での副作用管理を目指すことです。

「治療を長く継続できる」という質問でした。
ここで、副作用管理と治療継続との間には「論理の飛躍」があると感じられた方。理論派ですね。理屈っぽい私ときっとお友だちになれます。一緒に考えてください。

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副作用管理の違いでなにがどう変わるのでしょうか。年が明けて、新たに薬物療法を開始される方もたくさんいらっしゃるはずです。そこで、まずは基本的なことから書いていきます。

副作用によって休薬したり、薬剤を減量や変更したりします。比較的長く薬物療法をされている方は、きっと経験されましたよね(患者さんはスキップという言葉も使ったりしますね。ここでの「休薬」とは、本来の投与予定日に投与しないことを指します)。

副作用は大きく2つに分類されます。
「血液毒性」と「非血液毒性」。

前者は、骨髄抑制とも呼ばれております。典型的なのは白血球や好中球、赤血球、ヘモグロビン、血小板などの減少です。減少することで、感染症にかかりやすくなったり、倦怠感が出てしまったり。減少しすぎた場合には、増加させるために注射や輸血をすることも。

後者は、薬剤によって大きく異なります。そして、こちらが意外と厄介です。
典型的なのは吐き気ですが、薬剤により4つに分類されています。強めに出る順に「高度、中等度、軽度、最小度」(『制吐療法診療ガイドライン』表2 注射抗がん薬の催吐性リスク分類より)。
「最小度」に分類される薬剤、たとえば(アテゾリズマブ以外の)免疫チェックポイント阻害薬。吐き気はほとんどありません。
「高度」に分類される薬剤、たとえばシスプラチン。制吐剤により気持ち悪い、なんだかむかむかする程度にまで抑えられてきました。
「中等度」に分類される薬剤、たとえばカルボプラチン。シスプラチンの副作用を抑えた薬剤のため、さらに吐き気は抑えられています。
副作用の症状を抑える支持療法の進歩により、病室で嘔吐を繰り返す様子を描いた映画や小説とは全く違う風景となっています。

ここ最近、3つめの副作用として「経済毒性」も学会や医学誌でピックアップされています。しかし、患者さんやご家族にとってはいまさら感満載ですし、医師をはじめとする医療者が主体的に考えるべき事柄です。一人一人が臨床現場でどう対応するかですし、ここでは省略します。

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さて、論理の飛躍でした。
副作用管理と治療継続との間を埋めていきます。

早く症状に気づいて対処できたら、副作用の程度も軽く済む場合がありそうです。

副作用の程度が軽く済めば、休薬せずに治療継続に繋がりそうです。

治療継続に繋がるなら、(休薬より)効果も期待できそうです。

副作用への対応が遅かった場合、反対の結論になります

きちんと論理を埋められているでしょうか。
治療継続から「効果」にも繋げてみました
たぶん繋がりますよね!

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①と③のどちらがより早く対処できるでしょうか。

論理的には、③ですよね。病院がリアルタイムで確認してくれてメッセージまでくれるのですから。メッセージを読んで、場合よっては病院に行くことで副作用が軽く済むこともありそうです。

ところが、医学では話は別です。
論理的に上手くいきそうだと考えても、臨床試験では上手くいかなかったり、これはさすがにと考えられていたことが臨床試験で上手くいったりします。すべては臨床試験の結果次第です。

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ここで答え合わせの臨床試験がこちら。
抗がん剤治療を受ける転移性がん患者(乳がん・肺がん・泌尿器がん・婦人科がん)を対象にしたものです。

英語で書かれていますし、医学統計を学んでいないと正しく理解できません。でも、上記リンク先を翻訳していただけると、なんとなくは分かるはずです。

イメージとしては、「病院指定のアプリで管理」と「冊子で管理」との比較です(論文の表現を使うと「PRO」と「通常ケア」との比較です)。

医学的には「病院指定のアプリ」(「PRO」)が良いよね(有意である)となります。全生存期間は20%延長、治療継続期間は30%延長です。論理的に考えたことと同じ結果です。この臨床試験について言及した記事です。元データの方が詳しいですが、一応。

…(中略)…
そして17年には米国メモリアルスローンケタリング・キャンサーセンターが開発した、患者自身が副作用の情報を入力するシステムが患者のQOL(生活の質)を上げるという論文が発表され、さらにこのシステムを使った患者は使わなかった患者に比べて生存期間が有意に延びたことも明らかになりました。
…(中略)…

家庭画報HPより
太字は加筆

太字にした論文が、先ほど翻訳して読んでいただいたものです。リンク先の記事もぜひ一読ください!

この臨床試験の論文発表後、日本の病院も動き出しました。すべてあの論文ベースです。価値がある論文でないと病院は動きません。しかも、「病院指定のアプリ」は開発費、維持費、リアルタイムでチェックしてメッセージを送る人材確保(臨床現場の負担増)などが必要になります。病院経営の厳しさは聞いたことがあるかと思います。なのにわざわざ導入する病院が増えている理由はなんでしょうか。以下の病院以外でも独自のアプリを使用している病院が全国にあります。

✳︎

さて、ここで冒頭に書いた数年来の私の悩み。
もう忘れていますよね。引用します!

①が、③よりも長くor同じくらい継続して投稿できる方法はないでしょうか。

その回答のひとつが②です。
フォロワーになってくれるかかりつけ医。何かあればご自宅や職場のそばのクリニックなどで、即相談できて、対処もできます。数年考えてきましたが、たぶんこれが一番です。これなら病院指定アプリよりも好成績を目指せると信じています。

加えて、アプリを使える方で冊子を使用中の方。アプリにシフトした方がメリットは大きいです(次回、詳しく書きます。一応、次にご紹介するアプリをチェックして、冊子との比較を具体的にイメージしてみてください)。

最後に、どのアプリにするかですが、良さそうなアプリは大抵通院していないと使えないです。
ただ、おそらくこの2つの対決になるのかなあと思っています(当たり前ですが「病院指定アプリ」の方は、それがベストですよ!)。

現状は「WelbyマイカルテONC®」

①副作用の管理として必要十分な機能であること
先行者利益
アプリから「がん情報サービス」に飛べること

②先行者利益
すでに導入している、そしてこれから導入する病院もあり、一番使用されているアプリだと思われます。まだ導入していない病院であっても、あとから導入するかもしれません。そして、誰でもダウンロードしてすぐに使用できます

③がん情報サービス
ありそうで意外となかったサービスだと思います。ご存じのとおり、何か調べる際に最初にアクセスするのが「がん情報サービス」です。途中から物足りなく感じるところは否めませんし、だからこその例の助言でした。たぶん誰よりもがん情報サービスにアクセスしてきた私です!各種がんの治療ページの最終更新日もほぼ把握しています。現時点では、胃がんの治療ページがほぼ理想形です。執筆担当者は素敵ですね!

理想は「ふくサポ患者アプリ®」

①副作用の管理として必要十分な機能であること
家族による見守り機能があること
小野薬品と3Hによる開発であること

②見守り機能
離れて暮らすご家族にはとても安心できる機能です。副作用でなにか問題があればご本人が病院に連絡します。でも、やっぱり気になってしまうのが家族なんだと思います。患者さんやご家族を理解されているからこその機能です。

③開発
小野薬品はあの「オプジーボ®」(一般名ニボルマブ)の会社ですね。そして、3Hはがん情報を提供している「オンコロ」を運営しています。副作用を知り尽くしている製薬会社と患者さん目線の企業は、最強タッグだと思います。ところが、現時点で一般には公開していないアプリなのです。残念です。

結論
以上から、現時点では「WelbyマイカルテONC」となります。「Welby」は他の疾患のアプリもありますので、応用力もありそうです。

次回、これまでの投稿記事をまとめます。

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