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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを後悔する事に意味を感じ公開します。
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祖父へ

祖父へ

どうか・・わたしを、そして、あなたの息子とあなたが大事になさった嫁(わたしの母)をお見守り下さい。

おじいちゃん、おじいちゃん、泣き言を言わず、静かに息を引き取ったあなたに

似ても似つかぬあなたの息子、我が父は・・今日も今日とて、口角泡飛ばし、文句ばかり言っております。

七夕の短冊・・毎年同じ願い事なの。

*馬に乗って荒野を駆け巡りたい

まぁ・・裸馬で高校に通った悪童たる父ですから・・さ

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祖父よ 祖母よ

大樹よ
空よ
草原よ
山々よ

かの地は時隔てて遠くなりにけり

それでも
わたしに かくあれと
幼き心に教えて下さった
温厚なる敬愛する祖父の魂が
風に乗って聴こえてくるようです

 

母:回想

母:回想

お母さん、お誕生日おめでとう!

ぇっと・・何歳になったんだっけ?”

「38歳よ。わたしは、38歳から年を取らないの。」

遠い昔の記憶、母の名言。

洋装も和装も似合った母の並外れた美貌。

小中学校の保護者会、校長先生筆頭に男性教師達が色めき立ち

母を観に来ていたと、後に知る。

そんな騒動を・・我が兄は恥じ入っていたのだった。

昨日ホームで見た母の明朗さ、思いがけず観た闊達さー

車椅

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桃、一枝

桃、一枝

父が倒れる前のこの季節、母を連れ梅や桃、そして桜を観て愉しんだ。

「土産はイラン、梅の一枝でも買って来い。」

留守番を選ぶ父に、そう、母は常に思いっきり沢山買って帰るのだ。

半分以上は彼女自身が食べる為にw

花を愛でると共に、花とのショット、写真をねだる母を幾枚も写し、

花の色に負けじと、紅ひき服装に気を配り

唇はすこし口角上げて、決して、歯は見せずに微笑む人

まだ3年前なのだ、と思

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華のかんばせ

華のかんばせ

突出した

誰もが振りかえらずに居られない

美しき かんばせ

どの場面、

どの人込みにも燦然と輝く圧倒的なる

美しき かんばせ

凡庸なる

むしろ弱き性もつ かの人の憐れなるかな

美しき かんばせ

目立たずに密やかに

溶け込み

ただ紛れ込めたなら

年を重ねる毎に

かの人の悲嘆の石は裡に積み上がらずに

済んだでありませうに

嗚呼

我が母よ

その美しきかんばせの

瞳は今

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父;覚書

父;覚書

積乱雲を見ると

わたしは、父思い父に畏怖し父に焦がれた

既に巨大な体躯は見る影もなく

半分ほどの痩躯となりし父の

そのぎょろりとした眼を見出すとき

あぁ、まだ父は父なのだ、と思うのだ。