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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを後悔する事に意味を感じ公開します。
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父緊急搬送>入院(過去日記より)

真夜中の電話はいつだってドキっとします。

日付変わり二時過ぎー

鳴り響いたその電話の内容は、父の入所施設からのものであり

「お父さん、ま~た一人でベッドから車椅子に乗ろうとしたんでしょうね!転んでいましたよ!

今度はどうも骨折しているようなので、総合病院に搬送されたところです!

ご家族の方、至急、付き添いを!!」でした。

いや・・叱責されてもねぇ。。と思う心は置いといて。

明日、手術

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七夕の短冊に託す父の念:過去日記

七夕の短冊に託す父の念:過去日記

今日、父に問うた。

「お父さん、七夕の短冊、書きたい事ありますか?」

思いがけない答が戻って来た。

忘れぬよう、覚書。

「馬で荒野を駆け巡りたい」

涙がこぼれそうになる。

父は、裸馬に乗り、高校(当事、中学校か)に通学していたという、地域で

悪名高き暴れん坊。

馬を校舎近所の畑に繋ぎ、知らぬ顔で授業に出ていたそうな。

「こら、○○!ま~た、馬に乗って来たな!ご近所から苦情が来てお

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祖父よ 祖母よ

大樹よ
空よ
草原よ
山々よ

かの地は時隔てて遠くなりにけり

それでも
わたしに かくあれと
幼き心に教えて下さった
温厚なる敬愛する祖父の魂が
風に乗って聴こえてくるようです

 

母:回想

母:回想

お母さん、お誕生日おめでとう!

ぇっと・・何歳になったんだっけ?”

「38歳よ。わたしは、38歳から年を取らないの。」

遠い昔の記憶、母の名言。

洋装も和装も似合った母の並外れた美貌。

小中学校の保護者会、校長先生筆頭に男性教師達が色めき立ち

母を観に来ていたと、後に知る。

そんな騒動を・・我が兄は恥じ入っていたのだった。

昨日ホームで見た母の明朗さ、思いがけず観た闊達さー

車椅

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かっこいいではないか、お父さん

かっこいいではないか、お父さん

それでも母は父を覚えているのだ。
多くを忘れようと、母が口にする「一番大事な人を忘れるわけがなかろうもん」

母の大手術ののち、車椅子で近付いた父が
「おい、オレが誰かわかるか!?」の問いに
即答した母であった。既に三年前・・

認知症という病は、特効薬が無い。が、症状を遅らせることは出来るのだ。それを助ける薬もあるにはあるが、何といっても、周囲の言葉や働きかけ、母の表情を察知し
喜んでいるとわか

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覚書:母の誕生日

覚書:母の誕生日

大好きなモンブランを買って、

ついでに、ホワイトデーのラッピングがキュートなお菓子の詰め合わせを持参し、

母の誕生日を祝う。

スプーンを使わずに、手に持ち、あっというまに消えたケーキ。

唇についたクリームを拭う。母はその間も待てないように、新しい箱を開け始める。

あけるというか、破る。

私が小学校の頃だろうか。

「お母さん、何歳になったの?」と訊けば

「35よ、ずっとこれからは、3

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桃、一枝

桃、一枝

父が倒れる前のこの季節、母を連れ梅や桃、そして桜を観て愉しんだ。

「土産はイラン、梅の一枝でも買って来い。」

留守番を選ぶ父に、そう、母は常に思いっきり沢山買って帰るのだ。

半分以上は彼女自身が食べる為にw

花を愛でると共に、花とのショット、写真をねだる母を幾枚も写し、

花の色に負けじと、紅ひき服装に気を配り

唇はすこし口角上げて、決して、歯は見せずに微笑む人

まだ3年前なのだ、と思

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ただそれだけが嬉しくて

ただそれだけが嬉しくて

母は喋ることも忘れつつあるのか、とみに無口になった。

栄養士さんとの面談。三ヶ月更新、状況報告あり。食べる量が減っていますとのこと。

前は80%は食べていたのが、60%、体重も急に5キロ落ちた。

なのに~クダンの医師め!母に間食させるなと?

BMIがどうだってのさ。そもそも、母の身長からして計算ミスでしょ。

母は165センチあったのだ。多少、縮んだにせよ・・背中の湾曲で145センチって計

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