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目出度くもない年度明け

サンプラザ中野、と言えば「爆風スランプ」のヴォーカルで、代表作「Runner」が青春の歌だった、というとトシがまたばれる。今でも好きで時々歌うが、歌うたびにトシ食ったな、と感じさせられます。音域的には最高音はファルセットを使わないぎりぎりのところ、基本的には中音域と高音域の境目で、自分にはちょうどいいのだが、後半高音のサビが延々と繰り返されるところで、息が切れて上昇フレーズが難しくなる。

はさておき、年度末仕事が片付いたところで一日有休。現実の中野サンプラザ(中はもう空になっているが)近くまで行ってきた。

中野に何の用で?一言で言えば「20年前の意趣返し」である。相手はとうに忘れているであろうことをいい大人がいつまでも根に持っているとは、自分も結構粘着だな、とは思うが、背景はそれなりにある。

「誰に感動が許されるのか?」「高学歴難民のどこが悪いのか」といった記事で多少言及したが、私は20年ほど前の一時期、「繊細な」高学歴難民の渉外係をする羽目になった。よくある親戚間の確執で、対象人物Aは10代のころは秀才で武道の心得があり、権威には反抗的という、同年代には憧れの対象であった。有名私大の博士課程まで進み、指導教授にもそれなりに認められていたらしい(現実にその教授に会ったことがあるが、センスと切れはよいということであった)。が、詳細は分からないながら何かのトラブルで学業を中断、どの仕事も身につかず「高学歴難民」を続けている。

私がなぜAの世話をすることになったかといえば、彼は何かというと学歴や知能指数を引き合いに出して人を馬鹿にする癖があり、曲がりなりにも身辺で匹敵する(博士には落ちたけど)学歴を持つのが自分だったからである。学校にいた年月に比して収入が低いのも同類、と思われたようですね。否定はできないけれど。

お互いもう若いというほど若くはなかったが、付き合ってみるとこれが典型的モラハラ。Microsoftのブラウザのトップ画面でよく外面はいいが実は慢性的被害妄想のモラハラ夫に苦労した元妻の漫画が出てくるがそのままである。しかし時代は進歩した、と思うのは、我々の世代の妻たちの多くが世間体を気にして苦労を耐え忍ぶことを選んだのに対し、彼女たちは毅然として離婚に立ち上がり、「別れてすっきりした」と言い切ることですね。夫側の義母が典型的な嫁いびり姑で、妻側の両親が物分かりよく愛情深い、というのはステレオタイプに過ぎる、逆の場合もあるでしょう、とは思うが。

さてこのAという男、次から次へと事件を起こしてくれる。懲役にはならなかったものの、器物破損や公務執行妨害で警察沙汰は日常茶飯事(たいてい罰金)。その他近隣への迷惑行為の苦情、友人への借金で、私の多からぬ貯金と有休はあれよ、という間に消えた。お前がやったことではないじゃないか、と言っても、被害者がいる以上、誰かが対応しないわけにはいかない。加害者本人は「繊細」を理由に引っ込むか、逆ギレして被害者面をするかどちらかなので、結局私が頭を下げ、賠償金を立て替え(今に至るまで一銭も返してもらってない)てコトを収めることになる。

事件の被害者からは罵詈雑言、実家からはバカ扱い、事件を起こした当人に忠告めいたことを言うと口はもちろんphysicalな暴力、というところで、勤務にも支障が出てきたので、さすがに私もある日キレた。百万円レベルの借金の肩代わりをせよ、と当然のように仰せつけられて、「もう貯金もお前のために使い果たしたし、そこまでする義理はない」と絶縁を言い渡したのである。

結局このときはすったもんだの末、彼の両親と私の両親が折半でお金を出すことになったのだが、ここでその彼の姉という人が、何をどう吹き込まれたか、私に言った。「私のおかあさんをもう苦しめないで。やっぱり働かない人にお金の価値は分からないのね」。それはあなたの弟の話だろう、なぜ日々(出来るとは言えないが)真面目に仕事に行っている私にそれを言う?

今でもその彼からは、数年おきに思い出したように手紙が来る。内容はやはり誰かに与えられた「精神的苦痛」で働けない、経済的に苦しいからどうにかしてほしい、というものだが、一切無視している。近頃も頻繁にハガキ(でこういうことを書くな)で、両親も亡くなった、姉は経済的に困っていないはずなのに援助してくれない、と言ってくる。

私が今日中野へ行ったのは、その姉の一家が中野の繁華街で商店を営んでいたからで、まだそのHPはネット上に残っている。私としては、当時彼女の両親が払った金額と同額の現金(まあ働いていたおかげで多少の貯金は取り返した)と弟の手紙を突き付け、「これでも私は働いていないのですか?お金は渡しますが、あなたの弟のためではなく、根拠なく私の人格を貶めたことに今どう思うかお聞きしたいためです」と言うつもりであった。

が、残念なことにその店は消えていた。「姉」という人もその配偶者ももう還暦を超えているし、引退してどこかで静かに暮らしているとしても不思議ではない。無駄遣いはせずに済んだとは言うものの、どこか割り切れない気分で電車に乗り、スマホを開いてみると、案の定仕事の連絡が数件来ている。年度が代わって早々また忙しくなりそうだな、でも今日は休ませてくれ、と適当に映画館に入った。

見たのは「変な家」。書店でちょっと立ち読みして面白そう、と思いつつそのままになっていた小説の映画化。好きなTV番組「歴史探偵」の主人役が准主役で出ているのも気になっていた。

見た感想。小説をチラ見した限りではミステリのような気がしていたが、正統派ホラー。映像は迫力あり。ホラーとしてのストーリー展開はベタで、怖いといえば昨年6月に見た「最後まで行く」の方が現実味があって怖かった。

そういえば、と今思い出したが、私の出生地は中野区である。2歳半で今の実家に越してきたので、そのころのことは記憶にない。今思い出せる最初の記憶はその引っ越しの日で、運送トラックの運転手とその助手のひとが、新築の家の床の間に座ってジュースを飲んでいた。200ccくらいの缶を付属の小さな缶切りで空気穴と飲み口を開けて飲む、というこれも「知っている」とトシのバレるものである。たしかディズニーの絵柄がついていて、幼児の私はその缶が欲しくてたまらなかったが、何といえばいいか分からずただじっと見ていた…

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