地方大学院生のグローバル戦略。
どうも、こんにちは。ぶっちーです。
皆さんお元気でしょうか。
今回のnoteですが、最近、僕は、仕事や研究で国外との関わりが持てることが増えてきました。ただの交友関係や旅行ではなく、具体的なプロジェクトやお仕事になる話も出てきました。
九州からダイレクトにグローバルに対して挑戦できる機会を増やしていきたいと考えてきた僕にとって、これほど有難い話はないのですが、たまに「なぜできるようになったのだろう」と不思議に思うんです。確かに20歳を過ぎた頃から「将来はグローバルに活躍したい」と考えていたものの、僕は生粋の北九州市生まれ北九州市育ち。20歳まで国外に旅行ですら行ったことなく、英語も全く話せませんでした。
一般的に、グローバル人材になりたいと思えば、
外交官か、外資系企業に就職しよう!
英語が大事。とりあえずTOIECなどで高い得点をとろう。
地方では国外と触れる機会が限られているから、ひとまず東京に出よう!
こんなことを考えるかもしれません。僕もそう考えていた1人でした。確かにこの考え方は一理あるのだけど、これらが全てではないです。地方生まれ・地方育ち、帰国子女でもない僕みたいな人は、このような戦い方はしてはいけない気がするんです。
「地方学生は国際感覚がない。地方の生まれ育ちではグローバルに勝負できない」と言われますが、本当にそうでしょうか。
僕がこれまで国外と関わり続け、うまくいったことやうまくいかなかったことを踏まえながら、地方地域出身の凡人がグローバルで挑戦する機会を得るための要点をまとめてみました。20歳の右も左もわからなかった僕自身に向けて書くつもりで書いてみました。同じような悩みを抱えている人にとって、少しでも力になれれば嬉しいです。
1. 基本的な考え方
a. 今、あなたが英語を完璧に話せるとして、何をしたいか。
まず考えなければいけないのは、そもそも「あなたがワクワクするもの・情熱を捧げるものは何か」です。僕の場合は「都市建築」です。もっと具体的にいうと、「創造性が生まれやすい都市環境」について関心があります。このテーマを軸に、研究者としてたくさん事例研究したり、経営者として、実際に国内外の街づくりに国内外で関わっていきたいと考えています。このような「軸」や「方向性」を持つことが重要です。
とにかく、必要な問いかけは、「今、あなたが英語を完璧に話せるとして、グローバルに対して何を仕掛けていきたいか」です。これが全てです。
b. 目的があって、その達成のための手段として「英語」がある。
「英語はどこまでいっても手段である」ということです。僕は、昨年度まで行政機関に同伴する形で、国外出張をしたり、国外機関を迎え入れたりすることが多くありました。通訳のような立ち回りです。確かに、このような立場でも登壇など有難い機会は沢山ありました。でも、一定期間続けてみて「これは違うな」と思い、すぐに辞めました。なぜなら、通訳は"拡がり"が生まれないからです。通訳では「誰かの言ったことを正確に訳す」ことが求められるので、言うなればただの「スキル」です。時給や単価は上がるかもしれませんが、基本的にはクライアントのn数を増やす作業です。パートタイムや時給換算での仕事が多く、仕事の横の広がりは生まれづらいです。ずっと誰かに依存する形となります。加えて、これからAIが発達すれば「正確に訳す」通訳のスキルセットの価値はますます下がってしまいます。だから、英語能力そのものを仕事としてスケールさせていくことはやはり現実的ではありません。
僕は、学部生の頃、スウェーデンを留学先に選びました。アメリカに留学する日本人は「英語を話せるようになる」ために留学する人が結構多いですが、スウェーデンではそういう人は少ないです。スウェーデンの留学生は「北欧の福祉や教育を学びたい」のような明確な目的を持っている人が多いです。僕は「開発学や教育システムを学びたい」からスウェーデンに留学しました。つまり、英語を勉強することが、留学の目的になっているか、自分の目標を達成するための手段になっているのかの違いです。英語はいつまでたっても「ただの手段」です。そこを大前提として考えることが大事です。
僕が去年、行政の同伴者として海外出張していた頃は、名刺を渡しても「行政の人」や「通訳の人」という見られ方しかされませんでした。でも、現在は、国外の方が僕の専門分野や関心分野を理解した上で話してくれるようになっています。なぜなら、通訳業務のみの仕事を受けるのを一才やめたからです。プロジェクトの中で通訳が必要な場合は、通訳者ではなくプロジェクトを円滑に進めるための「ファシリテーター」であると、関係者さんには伝えています。もちろん、専門・関心分野以外は受けないことが基本姿勢です。その代わりに、専門分野や関心分野の国際プロジェクトについては積極的に受けるようにしました。これによって、自分が通訳者ではなく「僕の今進めている都市建築分野の取り組みをグローバルに進めていきたい人」というイメージをつくることができました。このような小さな心掛けをするだけで、私の専門分野や関心分野、得意分野を理解してもらいやすくなり、国外の行政の方が大学や民間企業の方と繋いでもらえることや、新しいプロジェクトが生まれるなど、次の話につながっていきます。
c. 英語なんて、使う機会が増えれば勝手に上手くなる
まとめます。今、あなたが英語を完璧に話せるとして、何がしたいですか?何を仕掛けたいですか?そこを強く持つことが大事です。英語能力は、仕事や研究をするのであれば一定以上の力は必要ですが、使う機会が増えれば勝手に上手くなります。だから、まずは「国外の人と意見交換してみたいこと」や「国外のどのような人とどのようなプロジェクトをしたいか」などを考えてみることが良いかもしれません。英語はどこまで行っても手段であり、目的ではない。この心持ちは重要です。
d. 今の時代、国・地方の役人だけが海外と繋がる主体者ではない。
世界的な国際連携の考え方として"C2C(City to City)"という考え方が重要視されてきているのをご存知でしょうか?
C2C(City to City)とはその名前の通り都市間連携のことですが、これまでの国際連携は、姉妹都市協定やMOU(Memorandum of Understanding)では、G2G(Government to Government)、つまり政府間同士の連携が一般的でした。例えば、日本のある都市と国外の都市がMoU協定を結び、使節団を送り合ったり、共同でイベント開催をしたりするなどです。
C2Cとは自治体間の連携が前提としてありながらも、プレイヤー同士との具体的な交流や連携プロジェクトの創出を狙うものです(下図参照)。都市は悪魔でもプラットフォームであり、プラットフォーム内にある民間企業や学術研究機関同士の連携を積極的に図っていくものです。「そんなの当たり前じゃない!?」と思った方。わかります。でも、実情は違うんです。実情の都市間連携は、「市長同士が握手して写真撮っておわり!」、「毎年偉いおじさん5人くらい姉妹都市協定先に訪れて美味しいもの食べて終わり!」、「ビジネス交流と銘打って、名刺交換して終わり!」などばかりです。
昔なら、市長同士が握手して挨拶するだけでよかったんです。名刺交換するだけでよかったんです。でも、今日では、それではもう通用しなくなりました。「姉妹都市やMoU結ぶだけなら興味ないです」という自治体や団体企業が国外で増えています。オンライン化が進み、プロジェクトもオンラインで完結できることも増え、国外と協働してプロジェクトを進めることのハードルが一気に下がりました。これほど繋がりやすくなった時代に「繋がるだけ」の価値は下がりました。これからは「つながった上で、何を連携していくか」が問われていきます。つまり、トップダウン型だけではなく、実際のプレイヤーが繋がり、連携を図っていくボトムアップ型の取り組みに対する関心が高まっているということです。
つまり、個人や規模の小さい企業団体個人であっても「国外と一緒に何かを協働して取り組む」ことが国際的に一般的になりつつあるということです。むしろ、これができない都市、企業、団体、個人は、世界の潮流から遅れていくことになります。そして、日本は既にこの潮流から隔絶され、相手にされなくなってきているのが僕が国外と関わる中で実感していることです。
だから、個人や1社の企業団体では国外との繋がりをつくっていくことが難しいと考えている人も、実際は国外と関わっていく可能性は十分にあります。だから、国内の仕組みや環境を理由に諦めるのではなく、グローバルを前提に取り組みを拡げていく姿勢を持つことが重要です。実際に、僕みたいな地方都市に拠点を置く20代、大学院生、小さな会社ですらも仕事や共同プロジェクトに繋がっているんです。だから、できないわけがない。あなたの取り組みをグローバルに拡げられるポテンシャルは無限にあるということを理解してほしいと考えています。
2. どのように拡げていくか
次のトピックは「どのように拡げるか」です。例え、もうすでに取り組んでいることがあるとしても、それをどのようにしてグローバルの文脈にのせていくかは非常に難易度が高いです。そこで、2章では「どのように伝えていけばいいか」や「どのように広げてばいいか」をまとめていきます。
a. 基本的な考え方
とはいえ、自分のしたいことを国外に拡げていくことは簡単ではありません。「国外の会うべき人に最短で適切な方法で繋がる」ことが鍵となります。つまり、会うべき人がどこにいて、何をしていて、どのようにアプローチするべきかが大事になります。そして、この一連の流れを可能な限り多く反復させていくことが重要になります。
ちなみに余談ですが、国際連携の難易度で言うと、産学官の連携のうち、大学・研究機関の連携のハードルが最も低いです。次に民間企業です。研究者については、研究費の取り方についてノウハウが研究者個人に溜まっており、共同研究や論文の書き方も世界で共通の認識があるので、連携が決まってから実際にプロジェクトに移るまでの流れがスムーズに進みやすいです。流れとしては、同じ専門や研究テーマの研究者を国外で探し、研究内容を議論し、権利関係を明確にし、両者それぞれの研究費を活用しながら研究プロジェクトを立ち上げ、必要であれば国際交流基金などにアプライするイメージです。民間企業の場合は、国によって法律や文化慣習、言語が違うため、ハードルが一層高くなります。特に、国外から日本に進出すると言うのは、とてもハードルが高いです。特に、日本では良くも悪くも慎重に物事を進めるので、進出に関心があっても国へのランディングの段階で挫折するケースが多いです。最後に行政の連携ですが、行政の連携は「場合によって必要になる」といったイメージです。例えば、大学や大企業が、自治体がMoUを結んでいないと提携を結びづらい場合においては、自治体も巻き込みながら連携を組んでいくこともありますが、行政には国際連携の担当者がいるので、あまりみなさんには直接関係する話ではないかもしれません。
b. "Enabler"に頼ろう
さて、「国外の会うべき人に最短で適切な方法で繋がる」にはどうすればいいのか。そのポイントは、「進出したい地域の実情をよく理解し、一定のネットワークを持っている現地の個人・団体・企業に相談」することです。
例えば、韓国やイギリスと聞いて知っている都市は何ですか?韓国と言われれば、ソウルと釜山くらいかもしれません。しかも、ソウルや釜山と聞いて思い浮かべるのは、韓国料理やソウル大学・釜山大学ぐらいではないでしょうか。イギリスの例もそうです。リバプールと言われて思い浮かべるのはthe Beatlesやサッカーくらいで、リバプール大学でどのような研究が盛んに行われていて、どのような産業が発展しているかについて理解している人は多くありません。もっと言うと、そのエリアにどのようなプレイヤーがいて、政治や行政はどのような意思決定の仕方をしていて、都市としてどのような課題があって、ビジネス文化や慣習について理解している人はほぼ皆無です。
つまり、連携に関心がないのではなくて、連携するニーズやメリットが双方に見えてないだけなんです。
「進出したい地域の実情をよく理解し、一定のネットワークを持っている現地の個人・団体・企業に相談」する適任者として、"Enabler"があります。Enablerとはヨーロッパで生まれた概念で、産学官の間に入り、橋渡しやプロジェクトの推進を行う企業団体個人を指します。
もちろん、個人的なつながりがあればそこを頼るのも良いし、行政や民間企業、大学研究機関に連絡しても良いかもしれません。しかし、彼らが「会うべき人に最短で適切な方法で繋がる」ために適任かは分かりません。行政や民間企業、大学研究機関は、それぞれに割り当てられた従来の役割を全うしなければいけません。行政ならルールメイキングや調整。民間企業は事業の推進と規模の拡大。アカデミアなら研究調査を進めることが責務です。彼らは元々の業務で忙しいので、新しい話であるあなたを手助けしてくれることはなかなかありません。また、会いたい人本人に直接連絡することについても、もちろん、得策ではありません。なぜなら、あなたと会いたい人の間に信頼関係が構築されていないからです。直接、対面で会うことなしにその信頼関係を築くのは簡単ではありません。だからこそ、信頼してもらえやすい人に頼ることが大事なんです。
このEnablerは頼って大丈夫です。なぜなら、Enablerは、仕事の一つとして、産学官連携や国際連携を担っていることが多いからです。Enablerは、産学官の間のグレーゾーンに身を置き、縦割りの構造の横串を指して、都市に新たなネットワークをつくっていきます。そのような橋渡しをしながら、実際にプロジェクトマネジメントをすることで社会の中に新しいビジネスや政策、研究プロジェクトをつくっていくことが彼らの仕事です。ちなみに、Enablerの法人格は、非営利型の株式会社(≒行政が株式を所有)である場合が多く、自治体の地域戦略を踏まえながら、民間企業のようなスピード感と機動力を持って対応していきます。基本的に、ボードメンバーは自治体や大企業が入っていることが多く、資金源は半官半民の場合もあれば、自治体が全額負担している場合もあります。
Enablerのような立ち回りをする機関の例としては、スウェーデン(ヨーテボリ)のLindholmens Science Park、フィンランドヘルシンキ市のForum Virum HelsinkiやHelsinki Partners、エストニアのStartup Estonia、イギリスのConected Places Catapult(CPC)などがそれに該当します。日本でいうと、自治体の外郭団体や産学官連携推進団体、研究開発団体、街づくり会社団体、イノベーション創出機関がそれに類似しています。
c. 自分のプロダクトorサービスを明確にして、あとはn数を稼ぐ
誰かと連携をするのであれば、あなた自身のサービスもしくはプロダクト、研究内容を明確にした上で、どのような人とどのような目的で繋がりたいかを言語化する必要があります。それさえできれば後は、Enablerを通して、できるだけ多くの連携先候補に連絡するのみです。
国際会議やカンファレンスなどで、自社のサービスやプロダクトを必要としている営業先を探そうとする人が多いですが、それだけではほぼ運頼みです。相手先の状況やニーズは状況によって変わりますし、現地のマーケットの現況についても把握は簡単ではありません。そうではなくて、海外出張の際は、Enablerのような中間に立つ機関とアポイントメントをとり、必要に応じて連絡できる関係性をつくっておくことの方が良いと思います。
もう一度言いますが、あなたの事業や研究において、海外の機関団体企業との連携に関心がないのではなくて、海外の事業者や団体企業と連携するメリットが見えていない、だけの可能性があります。Enablerに相談すると、現地の実情やニーズも見えてきます。なので、予期していないニーズの発見やマーケットの発見につながることも十二分にあります。
3. 一番伝えたい"思い"の話
福岡でギャラリーを構えている方の言葉で「震源地はひとり」という言葉があります。この言葉は僕が大切にしている言葉の一つです。僕なりに解釈すると、「目の前の人を最優先に大切にすることが大事。全ての変化は"ただの一人"から生まれる」という意味です。
人は無意識に「すごそうな人」や「偉い人」に頼ろうとします。逆に、自分と関係ない人は適当に遇ってしまうことも少なくありません。ただ、ここまで読んでいただいた方はわかるように、国際連携というのは文化や慣習、言語の壁を越えなければならず、一朝一夕でできることではありません。権力やお金があればできることでもありません。人の「コミットメント」が重要なんです。したがって、もしあなたの取り組みに少しでも関心を持ってくれる人がいたら、あなた自身も、その人がどのような立場の人であっても、本気でコミットメントすることが大事です。言語や文化の違いがあったとしても、プロダクトやサービスが良ければ相手にその価値は伝わるし、情熱があれば目の前の人はワクワクするし、仲間になってくれます。だから、ここまで読んでくれたあなたにも、情熱を持って、国外に挑戦していっていただきたいと思います。
僕は海外志向論者ではありません。別に海外が日本より優れているとも、日本が海外よりも優れているとも考えていません。ただし、グローバルを前提に挑戦した方が多くの機会に恵まれるのは間違いないと考えています。
日本にいると不意に「今置かれている場所で自己評価をしがち」ですが、今あなたがいる場所での評価がすべてでは決してありません。
あなたが思っているよりも、支援してくれる人や機関、お金をサポートしてくれる団体企業は国外にたくさんいます。
「地方で、この街で、何ができるか」だけに囚われず、「何がしたいか」を大切にして、是非、世界に旅に出てみて欲しいです。
きっと素敵な出会いがたくさん待っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最後にちょっとだけ #PR
今、私が代表を務めるURBANIX株式会社では、国際連携の支援や国際展開の支援も行っています。事業を行っている方や研究をされている方の中で、少しでも活動を国外に拡げてみたい方がいればお力になれるかもしれません。
弊社は、国外のEnabler(特にヨーロッパ)とこれまで関わってきており、国外へのアクセスが可能です。現在もイギリスのEnablerの皆さんと一緒にプロジェクトを進めています。また、私が、現在、大学院の博士課程で研究していたり、前職で自治体の方と一緒に仕事をしていたり、(少しですが)スタートアップで働いた経験があったりと、産学官民のどのような立場であっても、ニーズや現況に合った1on1のサポートが可能です。
海外進出や海外展開に関心がある方
事業や研究の状況に合った細かなサポートが必要な方
言語や文化の違う人たちとのコミュニケーションのサポートが必要な方
海外展開をどのように進めていけばいいか不安な方
上記のような関心や課題を持たれている方は、「とりあえず話を聞いてみたい」でも結構ですのでお気軽にご連絡ください。
それでは、また🙌