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『ダイ・ハード』:1988、アメリカ

 ニューヨークの刑事であるジョン・マクレーンはクリスマス休暇を過ごすため、妻のホリーと2人の子供たちが暮らすロサンゼルスへやって来た。キャリアウーマンのホリーがロサンゼルスの日本商社であるナカトミ株式会社で働き始めたことに伴い、夫妻は離れて生活していた。
 マクレーンが空港に到着すると、迎えに来たのはホリーではなく、ナカトミ商事から派遣された運転手のアーガイルが運転するリムジンだった。

 マクレーンは34階建てのナカトミビルに到着し、受付のガードマンにホリーのことを尋ねた。ホリーが旧姓で仕事をしていると知り、彼は渋い顔になった。ガードマンはマクレーンに、人がいるのは慰労パーティーの開かれている30階だけだと教えた。
 パーティー会場へ赴いたマクレーンはタカギ社長と会い、彼の案内でホリーのオフィスへ赴いた。密かにドラッグをやっていた社員のエリスは、慌てて誤魔化した。そこにホリーが戻り、タカギとエリスは部屋を去った。マクレーンとホリーは、些細なことで言い争いになった。ホリーは秘書のジニーに呼ばれ、部屋を後にした。

 ハンス・グルーバーか率いる武装グループがナカトミビルに乗り込み、受付係を射殺した。一味は電話線を切断し、29階から下を封鎖した。ハンスたちは武器を持ってパーティー会場へ乗り込み、そこにいた社員たちを人質に取った。
 銃声を耳にしたマクレーンは、ドアの隙間から様子を窺った。一味は会場以外の部屋も調べるが、マクレーンは隙を見て非常階段から上の階へと避難した。

 ハンスはタカギを別室へ連行し、金庫を開けるコンピュータのパスワードを教えるよう要求した。彼らの狙いは、巨大金庫に眠っている6億4000万ドルの無記名債券だった。マクレーンが隠れて様子を覗いていると、タカギはパスワードを明かすことを拒んで射殺された。
 マクレーンは32階の火災報知器を鳴らし、消防車を呼ぶことで外部に事件を知らせようとする。しかし一味は間違いだったと連絡し、消防車を帰らせた。一味のトニーが32階へ来たので、マクレーンは彼を倒した。

 マクレーンはトニーの体に一味へのメッセージを記し、エレベーターに乗せて30階へと送り込んだ。彼はエレベーターの屋根に潜んで一味の会話を盗み聞きし、ハンスやトニーの兄であるカールの名前をチェックした。
 マクレーンは屋上へ行き、緊急周波数で警察に無線連絡した。警察は救助要請を信用しなかったが、屋上へ来たカールたちがマクレーンに発砲したため、その銃声が無線越しに聞こえた。パトロール中だった警官のパウエルは、ビルの様子を見に行くよう指示を受けた。

 マクレーンはカールたちの銃撃を逃れ、通風口へ潜り込んだ。カールたちが追って来るが、パトカーがビルに近付いたため、発砲を控えた。マクレーンはパトカーに事件を知らせるため、窓を破壊しようとする。
 それに気付いた敵の2人が襲撃してくるが、マクレーンは彼らを倒して爆薬と起爆装置の入ったバッグを手に入れた。パウエルがビルに入って来ると、ガードマンに化けたエディーは何事も無いようなフリをした。パウエルはロビーを調べるが、特に異変は見当たらなかった。

 パエウルがパトカーに戻った去ろうとした時、マクレーンが死体を投げ落として銃を乱射した。慌ててパウエルは無線を握り、応援を要請した。警察無線を傍受していたTVリポーターのソーンバーグは、特ダネをモノにするため中継車を出させる。
 マクレーンはパウエルと通信し、一味の人数や人質の状況を伝えた。現場に到着したロス市警のロビンソン市警副本部長は、バウエルがマクレーンから得た情報を完全に無視した。

 ロビンソンはパウエルの意見を無視し、SWATに正面からの強行突入を命じた。一味は監視カメラでSWATの動きを掴んでおり、的確な射撃でSWATを始末していく。ロビンソンは装甲車を突っ込ませようとするが、一味はロケット弾で迎撃した。
 マクレーンは入手した爆弾をエレベーターシャフトに投げ込み、ロケット弾が発射された階を爆破した。ハンスはロビンソンと連絡を取り、収監されているテロリストを2時間以内に解放するよう要求した。ただし、それは本当の狙いではなく、時間稼ぎのための要求だ。

 エリスはハンスにマクレーンの正体を告げ、自分が説得すると持ち掛けた。エリスはマクレーンと友人関係にあると嘘をつき、無線を使って交渉しようとする。エリスはマクレーンに、起爆装置の場所を明かして後は警察に任せるよう促した。
 マクレーンはエリスの愚かな行為に驚愕し、「奴らはお前を殺すぞ、俺とは無関係だと言え」と叫ぶ。ハンスはエリスを射殺し、マクレーンに「お前が起爆装置の場所を明かさないと、新たな人質を殺す」と脅す。マクレーンは脅しに乗らず、通信を切った。

 FBI捜査官のビッグ・ジョンソンやリトル・ジョンソンたちが現場に到着し、市警察から指揮権を奪った。屋上の様子を見に行こうとしたハンスはマクレーンに見つかり、咄嗟に逃げ出した人質のフリをした。
 マクレーンから拳銃を渡されたハンスは正体を現すが、発砲しようとすると弾丸は入っていなかった。マクレーンはハンスの正体に疑いを持ち、弾丸を抜いた拳銃を渡して試したのだ。

 カールたちが駆け付けたため、マクレーンは銃撃しながらコンピュータ室へ滑り込む。マクレーンが裸足なのをチェックしていたハンスは、カールにガラスを撃つよう命じた。
 床にガラス片が散らばり、マクレーンは足の裏に傷を負いながら非常階段へと走った。ビッグ・ジョンソンたちが対テロリストのセオリー通りにビルの電源を落としたため、ハンスたちの狙い通りに金庫の電子ロックが開いた…。

 監督はジョン・マクティアナン、原作はロデリック・ソープ、脚本はジェブ・スチュアート&スティーヴン・E・デ・スーザ、製作はローレンス・ゴードン&ジョエル・シルヴァー、製作総指揮はチャールズ・ゴードン、撮影はヤン・デ・ボン、編集はジョン・F・リンク&フランク・J・ユリオステ、美術はジャクソン・デゴヴィア、衣装はマリリン・ヴァンス=ストレイカー、音楽はマイケル・ケイメン。

 主演はブルース・ウィリス、共演はアラン・リックマン、ボニー・ベデリア、レジナルド・ヴェルジョンソン、ポール・グリーソン、ウィリアム・アザートン、ハート・ボックナー、ジェームズ繁田、アレクサンダー・ゴドノフ、ロバート・ダヴィ、グランド・L・ブッシュ、ブルーノ・ドイオン、デヴォロー・ホワイト、アンドレアス・ウィスニエフスキー、クラレンス・ギルヤードJr.、ジョーイ・プルーワ、ロレンツォ・カッチャランツァ、ジェラール・ボン、デニス・ヘイデン、アル・レオン、ゲイリー・ロバーツ、ハンス・バーリンガー、ウィルヘルム・フォン・ホンブルグ他。

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 ロデリック・ソープの小説『Nothing Lasts Forever』を基にした作品。『プレデター』のジョン・マクティアナンが監督を務めた、アクション映画の金字塔。
 マクレーンをブルース・ウィリス、ハンスをアラン・リックマン、ホリーをボニー・ベデリア、パウエルをレジナルド・ヴェルジョンソン、ロビンソンをポール・グリーソン、ソーンバーグをウィリアム・アザートン、エリスをハート・ボックナー、タカギをジェームズ繁田、カールをアレクサンダー・ゴドノフが演じている。
 TVドラマ『こちらブルームーン探偵社』で人気を集めていたブルース・ウィリスは、この映画のヒットによって肉体派アクションスターとしての地位を確立した。

 アクション映画の歴史について語る時、『ダイ・ハード』以前、『ダイ・ハード』以後という分け方をしてもいいと思えるぐらい、この作品はアクション映画界に大きな影響を与えている。「閉鎖された環境の中で、主人公が孤立無援の戦いを強いられる」という枠組みは、この映画以降、多くの作品で使われた。
 「いかにも強そうなマッチョマンが敵を倒していくのではなく、痛みを表現し、不運を呪ってブツブツと喋りながら戦う」というアクション映画の主人公像も、この映画が初めてだろう。また、それまでのアクション映画の主人公とは違い、マクレーンは敵を倒したら持っている道具や武器を調べ、それを利用して戦っている。

 パソコンごと椅子に括り付けた爆弾でフロア全体を吹っ飛ばすとか、屋上が大爆発を起こす寸前にマクレーンが消化用ホースを体に巻いてダイブするとか、そういう派手なアクションシーンも、もちろん見せ場として素晴らしいのだが、シナリオの完成度も高い。伏線を散りばめ、それをキッチリと回収していく構成が見事なのだ。
 その辺りが、これ以降に作られた亜流映画とは大きく違う点だ。

 冒頭、飛行機の中で怖がっているマクレーンは、隣の客からおまじないとして、「裸足になって指を丸めて歩くといい」というアドバイスを貰う。ナカトミビルに到着したマクレーンは、ホリーの部屋で待っている間に裸足になる。
 その時に事件が発生したため、彼は裸足のままで戦うことになる。マクレーンはトニーを倒した時に彼の靴を試すため履いてみるが、サイズが合わないので諦める。

 ホリーはマクレーンが来る前、自宅に電話している。マクレーンから電話が無かったことを家政婦のポーリーナから聞かされた彼女は失望し、家族写真の入った写真立てを倒す。マクレーンがナカトミビルでホリーのことを確認した際、彼女が「ホリー・ジェネロ」という旧姓で勤務していることを知る。
 これらの理由により、ハンスはホリーがマクレーンの妻であることに、なかなか気付かない。

 ホリーが自宅に電話を掛けた際、ヒスパニック系らしき家政婦のポーリーナが応対する。ソーンバーグが押し掛けて来た時、ポーリーナは追い返そうとするが、「移民局に連絡するぞ」と脅されて、要求を受け入れざるを得なくなる。
 マクレーンがホリーの部屋で彼女と話していた時、イチャイチャするカップルが迷い込んでくる。一味はパーティー会場を占拠した後、他の部屋を調べるが、そこでカップルを発見する。一味が女に気を取られている隙に、マクレーンは非常階段へ脱出する。

 アーガイルはマクレーンに名刺を渡し、地下駐車場で待機している。そこでマクレーンはホリーの部屋から名刺を見て彼に電話する。この通話が途中で切れることによって、一味が電話線を切断したことが観客に伝わりやすくなっている。
 地下駐車場から出られなくなっていたアーガイルは、一味のテオが脱出用車両を用意している様子を目撃し、自分の車を突っ込ませて彼を退治する。

 マクレーンがビルに到着した際、ガードマンは30階にしか人が残っていないことを説明している。だから、一味のテオが29階から下を封鎖するシーンで、どういう意味を持つ行動なのかが理解できる。
 マクレーンがビルに入って行く際、1階のホールに監視カメラがあることが示されている。ロビンソンがSWATを突入させようとする際、一味はその監視カメラを使って動きを把握する。

 エリスはホリーが結婚していることを知りながら口説いており、密かにドラッグをやっている。性格的に問題のある男であることを描いておき、「一味に取引を持ち掛ける」という愚かな行為に出るシーンへと繋げる。
 ハンスはマクレーンと遭遇して人質のフリをした際、相手が裸足なのをチェックしている。そこでカールが助けに駆け付けた際、ガラスを撃って床に散らばらせるよう命じる。

 一味の2人が装甲車の攻撃に向かう際、マクレーンはエレベーターの隙間から漏れる光を見て、彼らが降りていったと知る。また、この時、一味はロケット弾を1つ途中で落としている。
 マクレーンは爆弾を作ってエレベーターシャフトに投げ込むが、これは光を見て下へ行ったと分かっているから取れる行動だ。その爆弾がロケット弾に誘爆したため、フロア全体が吹き飛ぶ大爆発になった。

 ハンスはロビンソンやFBIに対し、政治犯の釈放を目的とするテロリストであるかのように偽っている。だからFBIは対テロリストの際のセオリーとして、ビルの電源を落とす。それは一味の思惑通りで、金庫の電子ロックを開けることに成功する。
 パウエルはマクレーンとの会話で、かつて13歳の少年を誤射してしまったことから銃が撃てなくなり、デスクワーク専門になったことを語る。ラスト近く、死んだはずのカールが現れてマクレーンたちに発砲しようとした時、そのパウエルが拳銃を撃って彼を倒す。

 序盤、エリスはオフィスへ戻って来たホリーに対し、会社から貰ったロレックスの腕時計をマクレーンに見せるよう促している。終盤、ビルから落下しそうになったハンスに腕を掴まれたホリーが道連れにされそうになった時、マクレーンがそのロレックスを外すことで、ハンスだけが落下する。ビルから出て来たマクレーンがパウエルに「女房のホリー・ジェネロだ」と紹介した時、ホリーは「ホリー・マクレーンよ」と修正する。
 そんな風に、魅力的なキャラクター、派手なアクション、緻密なシナリオと、三拍子揃った作品なのだ。そりゃあ、面白いはずだよ。

(観賞日:2011年10月19日)

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