ちょい飲みとコミュニケーション、うどんについて考えてみる
「とりあえず生!」
多くの飲み会で、最初の一杯としてビールを選ぶことを表す言葉だろう。また、居酒屋の飲み放題といえば、2時間が定番である。
このような中、うどんで有名な丸亀製麺が30分飲み放題のサービスを提供していることが、当記事では話題となっている。
消費者の節約志向と働き方改革による「飲みニケーション」の効率化のため、ぱっと飲んで帰れることにより、人気が高まっているとのことだ。
当文中では、1日の生活時間や男性会社員の1ヶ月のお小遣い、さらに丸亀製麺のビジネスモデルなどについて確認することとしたい。
1. 1日の生活時間は?
まず、男性会社員などの1日の生活時間を調べるため、総務省から公表されている「平成28年社会生活基本調査」をもとに、平日の総平均時間を確認してみた(現在は生活時間が変化している可能性もあるが、ある程度の傾向は把握できるだろう)。
男性会社員などを含む全体の平日の総平均時間をグラフにしたものが、下図である。
同調査によれば、平日の総平均時間は、(1)「マスメディア利用」が156分、(2)「教養・趣味・娯楽」が39分、(3)「スポーツ」が18分、(4)「交際」が17分、(5)「休養・くつろぎ」が14分となっている。そして、これらを合計した「自由時間」は245分となっている。
仕事や家事、育児などに追われ、何かと忙しい現代であるが、自由時間は可処分時間を奪い合う競争でもある。インターネットを見たり、SNSを更新したり、読書をしたり、ゆっくり休んだりする。
2時間飲み放題ではなく、30分のちょい飲みであれば、気軽に飲みたい人の需要も考えられるだろう。
続いて、男性会社員の1ヶ月のお小遣いについて調べてみることする。
2. 男性会社員の1ヶ月のお小遣いは?
ある企業の「2018年サラリーマンお小遣い調査」をもとに作成した男性会社員のお小遣いのグラフが、下図である。
同調査によれば、男性会社員1か月のお小遣いは、(1)「20代」が42,018円、(2)「30代」が36,146円、(3)「40代」が37,073円、(4)「50代」が44,017円となっている。
仮に、ある男性会社員の1ヶ月のお小遣いを「35,000円」と仮定する。また、1日のランチ代を500円、1ヶ月の稼働日数を20日と仮定する。
この場合、
お小遣い35,000円-ランチ代500円×稼働日数20日=25,000円
さらに、この男性会社員が動画配信サービス等の利用者であり、Amazonプライム会員に加入(408円)、Netflixのベーシックプランに加入(864円)、DAZNに加入(1,890円)していると仮定する。
すると、
25,000円-Amazon408円-Netflix864円-DAZN1,890円=21,838円
さらに、この男性会社員は毎週1回5,000円の飲み会に参加していると仮定する、
21,838円-飲み会1回5,000円×月4回=1,838円
となる。
飲み会好きな人は飲み会だけでお小遣いが無くなってしまうことも考えられる。コスパ(コストパフォーマンス)重視とも言われる若年世代にとって、短時間で低コストである、ちょい飲みのニーズは高いかもしれない。
3. 丸亀製麺のビジネスモデルなどを調べてみる
これまで生活時間や1ヶ月のお小遣いから、ちょい飲み需要がありそうなことを確認してきたが、これから丸亀製麺のビジネスモデルなどについて調べてみることとする。
3.1 外食産業の市場規模の推移は
まず、そば・うどん店などの外食産業の市場規模の推移などを確認することとする。公益財団法人 食の安全・安心財団の「外食産業市場規模推移」をもとに、外食産業の市場規模の推移をグラフにしたものが下図である。
グラフを見ると、2017年の食堂・レストランの市場規模は約10兆円となっている。すし店は約1兆5000億円、そば・うどん店は約1兆3000億円となっている。また、グラフでは確認できないが、外食産業全体の市場規模は、2005年の24兆4000億円から2017年の25兆7000億円と拡大を続けている。
近年、時短ニーズがあることや、中食や宅配の需要も拡大していることから、今後も外食産業の市場規模が拡大していくことも予想される。宅配ではUberEATSのようなサービスや、高齢者向けの宅配の需要が拡大していくことなども見込まれるだろう。
3.2 丸亀製麺とはなまるうどんを比較してみる
続いて、うどんで有名な丸亀製麺とはなまるうどん(以下「はなまる」という。)を比較してみることとする。
まず、店舗数と売上の比較である(下図参照)。
丸亀製麺の817店に対して、はなまるは495店となっており、丸亀製麺ははなまるの1.65倍の店舗数となっている。
売上を比較すると、丸亀製麺の899億円に対して、はなまるは288億円となっている。丸亀製麺の売上は、はなまるの3倍以上となっている。
次に、丸亀製麺とはなまるのメニューを比較してみる。ここではかけうどんを参考にする(下図参照)。
かけうどんの価格を比較すると、丸亀製麺の並290円に対して、はなまるは並150円となっている。かけうどんの価格を比較すると、丸亀製麺の方がやや高いようである。また、トッピング等を含めた客単価は、丸亀製麺が約500円、はなまるが約450円と言われていた時期もあるようだ。
続いて、丸亀製麺とはなまるの店舗立地や市場セグメントを図で表すと、下図のようになるだろうか(かなりおおざっぱですが)。
丸亀製麺がロードサイドへの立地を主体とするのに対して、はなまるは駅前・繁華街を主体とする。また、丸亀製麺は男性やファミリー層など幅広くターゲットとしているのに対して、はなまるは女性をターゲットとしている。
香川県は糖尿病の罹患率が全国でワースト1位だったこともある。健康志向の高まりから、はなまるは健康への取り組みを実施したこともある。たとえば、「はなまる健康宣言」である。また、女性が一人でも来店しやすいように、カフェスタイルの内装にしているとのことだ。
昨今はSNSの企業アカウントによる企業コラボも話題となることがある。丸亀製麺とはなまるうどんもツイッター上でのやり取りがあったようだ。マーケティングではAIDMAと呼ばれる手法などもある。SNSなどにより消費者とのタッチポイントを増やす施策は、有効であるとも考えられる。
3.3 丸亀製麺を分析する
続いて、丸亀製麺を分析する。
丸亀製麺は2018年1月以降、既存店の客数が減少していた。
そこで、丸亀製麺の最大の強みであるうどんを訴求するために制作されたCMが、下の動画である。
うどんは製法は簡単であるが、その食味はコシ、歯切れ、つるつる特性の総合された複雑なものであるとされる(三木英三(2006)『うどんのテクスチャー』)。
多くの外食チェーン店はセントラルキッチンを持ち、各店舗では調理の仕上げだけを行う。セントラルキッチンのメリットとして、次のようなものが挙げられる。
・各店舗の人員、厨房・保管スペースの削減
・作業の標準化
・味の標準化
しかし、丸亀製麺はセントラルキッチンを持たない、脱セントラルキッチンによる経営とのことだ。すべての店舗で麺からだしまで手作りしている。美味しいうどんの提供と効率化のトレードオフを克服していることが、丸亀製麺の強みとなっている。
4. まとめ
これまで生活時間や男性会社員の1ヶ月のお小遣い、丸亀製麺のビジネスモデルなどについて確認してきた。
飲み会の実体についてのある調査では、「武勇伝、武勇伝、デンデンデデデン」を聞かされたことがあるビジネスパーソンが半数以上との結果もある(部下は、上司だってパーフェクトヒューマンではないだろうと思っていたかもしれない)。
しかし、飲みニケーションではなくとも、職場のコミュニケーションは大切だろう。心理的安全性が職場の生産性を高めるとの研究もあるようである。心理的安全性が高いチームは、他の社員に相談しやすかったり、質問をしても馬鹿にされることが少ないと感じる。
さらに、職場の生産性を高める知の探索や知の深化には、「誰が、何を知っているか」のトランザクティブメモリーも重要である。異質な人とつながっていくことも大切である。
パワハラなども問題となっている昨今。風通しの良い職場を作ることやチームビルディングは多くの企業にとって課題だろう。
ちょい飲みだけでなくコーヒー1杯などでもよいと思うが、気軽に雑談などもできる雰囲気があると、働きやすくなっていくのかもしれない。
【参考文献】
総務省HP「社会生活基本調査」
公益財団法人 食の安全・安心財団HP「統計資料」
株式会社トリドールホールディングスHP
吉野家ホールディングスHP
丸亀製麺HP
はなまるうどんHP
「"はなまるうどん"が健康、美容に熱心に取り組むワケ」『日経Gooday』2016年6月14日
「丸亀製麺に復活の兆し 裏にUSJ再建請負人・森岡氏」『日経×TREND』2019年6月28日
沼上幹、一橋MBA戦略ワークショップ(2018)『一橋MBAケースブック【戦略転換編】』東洋経済新報社
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