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【性別適合手術と妻へのプロポーズ1】私の人生が大きく動いた4年間

このnoteでは、LGBTQ当事者として、福祉の現場に立つ者として、「生」「性」そして「私らしさ」について思いを綴ります。自己紹介はこちらからご覧ください。
自分は男性だと思いながらも、一体何者かわからずに生きてきた私。戸籍も男性として生きていくと決め、私はついに性別適合手術を受けることを決意します。今回からは、現在につながる手術のお話と妻とのストーリーを綴ります。

2014年、31歳になった年、私は性別適合手術を受けました。戸籍上の性別を女性から男性に変更し、名前も男性らしいものに変えました。そして同じ年、妻となる女性にプロポーズをしました。

女性としての身体の性と、男性としての心の性の不一致を抱えてきた私にとって、2014年は人生が大きく変わる年でした。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

短大を卒業した私は、身体、知的または精神に何らかの障害のある子どもたちが通ってくる児童発達支援センターB園などで保育士として働いていました。そして、B園在職中、初めて自分以外のトランスジェンダー(※1)と出会ったことをきっかけに、GID(※2)外来の受診にたどり着きます。

27歳になって、私は自分がトランスジェンダーであることを理解することができたのです。女性として生まれてきた私が、自分が女性であることに違和感を持つのには、性同一性障害(※2)という理由があったことをようやく理解したのです。

その後、私は、性別適合手術を受けることを念頭に、男性ホルモンによる治療を開始しました。投与開始1か月くらいで生理は止まり、1年くらいすると外見にも変化が現れ始めました。

しかし、手術はすぐには受けられません。壁となったのは手術費用でした。200万円の貯金を目標にしていましたが、親元を離れて一人暮らしをしていた私にとってそれだけのお金を貯めることは簡単ではありませんでした。だから、GID外来受診から性別適合手術まで4年間かかったのです。

ただ、その間、私が焦ったり苦しんだりしていたかといえばそんなこともありません。トランスジェンダーであるという診断がなされ、自分が抱えていた心と体の性の不一致に理由があることがわかったこと、性別適合手術という目標が見えたことで、私は前向きに生きることができたのです。

今回から「性別適合手術と妻へのプロポーズ」編として、ホルモン治療とカウンセリングから乳腺切除手術(いわゆる胸オペ)、性別適合手術(子宮、卵巣摘出)の進む過程について、そして妻との出会いと妻へのプロポーズについてお話ししていきます。

性別適合手術をはじめとする治療の詳細については、当事者の方の状況や考え、さらに医療機関によって詳細は異なります。それでも、私の体験をお話しすることで、人口の約0.7%(※3)とも言われるトランスジェンダーの方たち、特にまだ受診にたどり着いておらず、自分は何者なのかと悩んでいる方のお役に立てればと思っています。そして、みなさんの身近にもきっといるトランスジェンダーという存在を知るきっかけになればと思っています。

また、受診から手術に至る4年間の中で経験した学童保育支援センターでの仕事についても触れたいと思います。治療の途中ではあるけれども、女性ではなく、男性として働こうとした私を周囲がどのように受け止めてくれたかもお話しします。

そして、妻へのプロポーズについては、妻にも当時を振り返ってもらい、妻の言葉と共にお話ししたいと思います。異性愛者である妻は、私との出会い、そして結婚について「私はあなたみたいな特別な人ではなく、普通の人と結婚するつもりだった」「なぜあなたと結婚したのか、自分でもよくわからない」と言います。しかし「あなたとは家族になれたらいいなと思った」とも言ってくれます。妻のこうした言葉から、人と人とのつながりについて、みなさんと一緒に考えてみたいと思っています。

次回は、私が受けたホルモン治療についてお話しします。


※1 トランスジェンダーは、出生時に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人たちの総称です。性別越境者とも言われます。身体との向き合い方や性別表現は人それぞれ多様です。
※2 GIDはGender Identity Disorderの略で、性同一性障害のことです。性同一性障害は医学的な用語で、身体的な性別に不快感、違和感などをもち、身体を変え、反対の性で生きることを強く望む状態を指します。なお、性同一性障害は、アメリカ精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM)の第5版において「性別違和(Gender Dysphoria)」に、そして世界保健機構(WHO)の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD)の第11版において「性別不合(Gender Incongruence)」へ、いずれも置き換わっています。
【私がこのnoteで「性同一性障害」という言葉を使う理由】
https://note.com/tasakichisato/n/n5e5dff63a74b
※3 数値は、厚生労働省 国立社会保障・人口問題研究所「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」の結果を参考にしています。

【これまでの私のnoteはこちらからご覧ください】


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