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【子ども時代のちーちゃん10】好きな人からの言葉。「あなたが男だったらよかったのに」

このnoteでは、LGBTQ当事者として、福祉の現場に立つ者として、「生」「性」そして「私らしさ」について思いを綴ります。(自己紹介はこちらから)
高校時代を卒業し、私は短大に進学します。今回からはその頃のエピソードをお話しします。

高校を卒業した後、私は保育士になるために短大に進学しました。

実は、高校1年生の頃から、父親の借金が原因で、家の経済状況は大きく悪化していました。そして、高校3年生の時には両親が離婚。私は、学費だけでなく、生活費も自分で工面するため、昼間働ける夜間の短大を選びました。

保育士になりたいと思うようになったのは、中学生くらいからです。小学校の文集には将来はキャビンアテンダントになりたいと書いていました。女性が就くことが多い職業ですが、当時はあこがれていたんです。

しかし、中学校に入って、全く英語ができないことに気がつき、キャビンアテンダントはあっさりとあきらめました。また、その頃から、いわゆる女性らしさが求められるような職業は自分には合っていないと考えるようになりました。私の中にも、女性らしさ男性らしさで物事を判断するジェンダーバイアスが生まれていました。

キャビンアテンダントの次にあこがれを抱いた仕事が保育士でした。子どもの面倒を見るのが好きな自分には、きっと保育士が合っていると考えるようになりました。

短大入学後は、昼間は飲食店でアルバイトし、夕方から学校に行くという生活でした。とても忙しかったけれど、バイトも勉強もどちらもとても楽しかったです。

短大生になっても私の性自認は揺れていました。私は高校3年生の時に、同級生のC子に「私は、心は男の子だと思う。男として、女の子のことを好きになっている」とカミングアウトしていました。そして、せっかく制服から解放されたのだからと、男の子っぽい服装を楽しむこともありました。それでも「女の私が男の子っぽい服装をするのはやはり変だ」と、女の子っぽい服装を選ぶことが多かったのです。

当時はまだ自分がトランスジェンダーであることはわかっていませんでしたし、そもそも世の中にLGBTQに関する情報が少なかったため、私の考えも日々揺れていたのです。

そんな中、短大1年生の時、私はバイト先の年上の女子大生を好きになりました。一緒に遊びに出かけて、手をつないで歩くこともありました。私はその先輩に、自分の気持ちを告白したり、性自認や性的指向をカミングアウトしたりすることはありませんでしたから、きっとその先輩は、私のことをあくまでも「後輩の女子」としてかわいがってくれていたのだと思います。

でも、先輩への思いが強くなり、私があれこれとプレゼントをあげるようになると、先輩は私の思いに気づいたのか、私に対して距離をとるようになったのです。

そしてある日、先輩からはっきりと言われました。「私が好きになるのは男の人。あなたが男だったらよかったのにね」。

今まで、何人かの女の子と仲良くしてきました。「好きだ」と言葉にしなくても、手をつないだり、抱きしめたりして思いを伝えることができていました。でも、初めて「あなたは男ではない」と拒絶されたのです。

私は、とても落ち込みました。自分は心が男であっても、やっぱり男ではないんだと思いました。

男になれないなら、女になろう。私は、体のラインを強調するような女性らしい服を着るようになりました。そして、短かった髪も伸ばし始めました。自分で男だと思っていても、男にはなれない。だったら、女になるしかありませんでした。

あるとき、仲良しグループの中の1人の男の子が、私に好意を抱いていると人づてに聞きました。私は思いました。男の子と付き合ったら、私は本当の女になれるんじゃないか。今の心の中の違和感がおさまるんじゃないか、と。私は、その男の子と付き合ってみようと思いました。

短大時代の「カレ」とのお付き合いの様子は、次回お話しします。

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