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対話と僕⑤:真っ当に批判し合う能力

・はじめに

ここまでの記事では対話との出会いから期待している事まで徒然なるままに書いてきた。
前回書いた「真っ当に批判し合う能力」にいくつかの反応を頂いたのでこれについて詳しく書いてみたいと思う。

僕が何故「批判」をポジティブに捉えているのか。
僕が何故「批判し合う能力」を身に付けられる対話に期待しているのか。
この辺りを体験談を基に書いていきたいと思う。

・「批判」をポジティブに捉える理由

僕が「批判」をポジティブに捉える理由の一つとして新卒で入社した会社での経験が影響しているのではないかと思う。
就活時は売り手市場で入社後半年でリーマンショックが起こるという変化が激しい社会人1年目だった。
そんな状況で同期の殆どが営業部門に配属されたので、厳しい営業活動についてお互いの考えを交換しながらなんとか乗り越えていった。

自信があったモノに指摘を受けたり、自信が無かったモノを肯定されたり、自分の何気ない発言が相手の気付きに繋がったり。
こうした「批判し合う」という体験を重ねて「対話」というものに興味を持つことになったのだと思う。
環境に恵まれていたとも言えるが、社会人の早い段階で批判で得られるものを体験できたことは大きかったと思う。

・「送り手」と「受け手」の問題

前述のような体験から「批判し合う」ために必要なものは何か(当時はまだ「コミュニケーションに必要なものは何か」という文脈だったかもしれない)ということを考えることが増えていった。
そこでたどり着いたのは「送り手と受け手の問題」という考え方だった。
コミュニケーションの問題は「送り手」「受け手」の何れか一方だけで解決することはないので、双方の概念やスキルを学ぶことが必要だと思うようになった。
ただ、ここ数年は「送り手」偏重のノウハウやスキルが多かったように思える。

日本人は欧米に比べて議論や討論が苦手とされる意見はよく見る。
それに対していつからか「伝え方」や「アウトプット」などの「送り手」のスキルを学ぶ機会や書籍は増えていった。
そうした流れは良かったと思うが、そこから転じて「論破」という概念がある種ネタ的に拡がったことで「受け手」を無視した論調が広がっているように思えた。

しかし最近では「受け手」に言及するコンテンツも増えてきている。
1on1、傾聴、アンラーニング、コーチングなどのワードがビジネス界隈で頻出するようになったことが影響していると思われる。
「傾聴=肯定」というようなズレた論調も目にするが、学ぶ場が増えたことで実践と知識を織り交ぜることができつつある。
配慮はするも遠慮はしない「送り手」と自分の考えとは違っても一旦は理解しようとする「受け手」。
この両者のスキルは『真っ当に批判し合う能力』にとって必要なモノであるだけでなく、普段のコミュニケーションにも十分に活かせると思っている。

・「送り手」と「受け手」に必要なこと

この辺りはまだまだ深掘りが甘いところではあるが、今のところ必要なモノだと感じているものを書いてみようと思う。

1,「送り手」に必要なこと
  ・提案の前に掘り下げ
  ・遠慮ではなく配慮
2,「受け手」に必要なこと
  ・理解しようとする努力
  ・違いに対する寛容
3,両者に共通していること
  ・相手への興味関心

相手の意見に物申す前に掘り下げて、配慮しながら自分の思ったことを伝える。
反射的に拒絶するのではなく理解しようとして、自分と違う考えを受け入れるように努める。
そしてシンプルに相手が何故そう思ったのかに興味を持つ。
上記の詳細はまた別の機会に述べることにするが、この辺りは普段のコミュニケーションにも十分に活かせるスキルでは無いかと思う。
これらを身に付けることができる「対話」は僕が目指す「批判し合う能力」を実現するだけでなく、普段のコミュニケーションにも繋がるという事である。
そういう意味でもツールとしての「対話」には価値があるんじゃないかと思う。

・書籍紹介

「送り手」と「受け手」というコミュニケーションにおけるキーワードが出たのでそれに纏わる書籍を紹介したいと思う。
ハイディ グラント ハルヴァ―ソン著の『だれもわかってくれない』だ。

社会心理学をベースにして他者とのディスコミュニケーションの仕組みやその原因などを体系的に示してくれている。
『相手は何故自分の事を理解してくれないのか』に対して『自分は相手の事を理解しているだろうか』という事が常にあるということ、相手の事を知る為の行動は自分を知ってもらう為の行動でもあるということ、それを感じることができる書籍だ。
また、自分自身を理解する事が大切であることも述べられている事が著者のバランス感覚を示していると感じた。

・最後に

こうやって徒然なるままに対話への思いを書いていると、どうやってまとめるべきか悩ましくなってくる。
得られるもの、期待しているもの、必要なもの。
今までの回を読み返すとあまりまとまっていないように思える。
この辺りをもう少し体系的にまとめていければ対話の魅力を伝えられるのかもしれない。
もう少し実践と知識の習得を繰り返してまとめていければと思う。
独りで考えるのには限界があるので、それこそ対話的に皆さんの意見を取り入れながら形にしていきたいと思っている。
遠慮のない意見を頂けると嬉しく思う(少々の配慮があるとなお嬉しい。


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