ビール瓶をテーブルに置く占い師
「占いをしていて、どんな時に幸せを感じるだろうか?」
そう聞かれた時、考えて突き詰めてみると、私の場合、人に感謝された時に幸せを感じることのように思える。
占い師として相談に乗り、うまく相談を解決することができた時。
相談者と最初に会った時よりも、帰り際の方が笑顔がたくさん見えた時。
こういう形で、相談した方から感謝の気持ちを受けることがあると、自分の中に喜びを感じ、幸せだなと感じるのだ。
もちろん、うまくカードを読めることもあれば、読めない事だってある。
ただ、相談に対して全力と最善を尽くすのはいつだってそうだ。
私の場合、昔からお酒を飲みながら占うことが多い。大阪の北新地で占いをしていた時に、お客さんから「君も飲まないか?」と言われたのがきっかけだった。
最初は渋々飲んでいたが、そのうちお酒を飲んでも占いに支障が出ないことがわかってきた。
飲まないで居ても、お客様からお酒をすすめられるので、乾杯して飲む。
結局マスターも「別に飲んでも構わないよ」と言うので飲むことになり、その状態で占いをする。
お酒を飲みながら占いをする占い師の誕生である。
タロットカードをシャッフルして、カードを置く。
相談者の話を聴きながら解決の糸口を探し、カードとにらめっこしながら、お気に入りのビールをひと飲みする。
「こんな占い師、見たことない」とよく言われるが、これが私が酒場で占いをする時のスタイルだ。
「さあ、カードを読むぞ」と言う時に一口飲むこともあれば、相談者にとてつもなく大切なことを伝えたい時に、ビールを一気に飲み干す時もある。
酔っぱらいながら天を仰ぎ、スピリチュアルな言葉を拾おうとする自分を出す事もあれば、「乾杯!」と言って相談の最後にグラスを交わし、相談を終えたりすることもある。
酒場でビールを飲みながら占うスタイルを重ね続けるうちに、私の占いテーブルにはお酒が欠かせなくなった。
ビール、ハイボール、ウイスキーにワイン。
それこそたくさんのお酒に囲まれながら占うのだ。
そしていつしか、他の占い師から「ビール瓶をテーブルに置く占い師」と言われるようになった。
占いテーブルに置いているのは、ビール瓶とタロットカード。
日本中探しても、占いのテーブルにビール瓶を置いている占い師はきっと私だけだろう。
(秋葉原での路上占いイベントでの私のブース)
相談をしていると、幸せを運ぶカードが出て来ることもあれば、時には厳しさを運ぶカードが顔を見せる場合もある。
笑いが起きる相談もあれば、涙を堪えるような辛い相談もある。
相談の場でどんな事が起きようとも、私は相談者と寄り添って考える。
その傍にはビール瓶があり、私の占いのテーブルをそっと見守っている。
恋の話、仕事の話、人間関係の悩み。人それぞれに困ったことがあり、それを解決したくてみんな暗中模索をしている。
そんな相談者達がグラス片手に、私の元に相談にやって来るのだ。
お酒は占いのサポートをしてくれている存在。いつもそう思っている。なぜなら、お酒を飲みながら占う人は、気持ちがオープンになっているからだ。
なので、通常の占いよりも、あまり出してこない本音が出て来ることが多いのだ。
そのような形で見えてくる本音の部分を汲み取ることが、相談を解決するヒントになることもよくある。
今は酒場での占いをお休みしているが、酒場での占いを再開すると、きっと私の占いのテーブルに相談者がやってくる。みんな、好きなアルコールの入ったグラスを片手に。
そんな風景が戻る日を心待ちにしながら、この冬を過ごしている。
今は自分の大好きな食卓に、いつもの瓶ビールを置きながら。