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みんなのフォトギャラリーを通してさまざまなnoteに写真を使っていただきました。こちらでもその一部をご紹介させていただきます。
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#小説

1人の花嫁の決断の話 番外編

 「…だ、そうですよ。花婿さん。」  その受付係の近くに座っていた男が、頭を抱えた。よく見れば、その男は花婿衣装を身に付けていた。  「そういうと思ってたけど…。」  「賭けは僕の勝ちですね。」  「はぁ…。」  「あなたも人が悪い、まさか彼女が生き返る方を選択すると思うだなんて。」  男は髪をがしがしとかきながら、立ち上がった。  「あいつがそうしないのは分かってたけど、どうしても生きててほしくてさ。」  たとえ会えなくても、俺はあいつに生きててほしかったん

超短編小説「三択」

私は迷っていた。 『三人の女性ライブアイドル』 どのアイドルを 推していくべきか。 当時の私は 複数の人を推せるほどの 財力がなかったし 当然、二股三股は気が引けた。 迷いに迷った末 私はある人を選んだ。 数年後 選択しなかった二人の活動を調べてみた。 一人はアイドルを辞めていた。 当時からスタッフと交際していたようで 今は子育てタレントとして活躍している。 私が選んだ人は期待はずれだった。 当初はすごく活動熱心に見えたが 壁にぶつかると諦める、今どきの人だ

【ショートショート】ちょっと待ったー!!

最愛の真由美との結婚式。 純白のドレスに身を包み、ヴァージンロードを歩く真由美は本当に綺麗だった。 真由美とは、友人を介した食事会で出会った。 ほとんどお酒も飲めない純粋な真由美に一目惚れして、僕達は付き合うことになった。 そして、晴れて、結婚式という今日の日を迎えた。 真由美のベールをめくり、誓いのキスをしようとする。 そのときだった。 「ちょっと待ったー!!」 大きな声と同時に、チャペルの扉が開いた。 そこには、1人の男が立っていた。 「真由美!おれとや

短編小説「すこし、先のはなし」 第一話『理想の男』

【はじめに】私が初めてnoteに記事を投稿したのは、2018年の元日でした。 翌2019年の年明けには初めてnoteに連載小説を投稿し、2020年の年明けには、初めて作劇に関する有料記事を投稿しています。 こんな具合に年始には、noteで何かしら新しい試みをしてきました。 今年は、初めて書いたショートショートを投稿します。 「すこし、先の話」というタイトルでシリーズ化したいなと思っています。 今回は、その第一話『理想の男』です。 お楽しみいただけたら、嬉しいです。 ***

変化する銀の鳥 3

前回   早足で現れたのは、やや年老いた女だった。足元まで隠れるくらいのゆったりとした長い服に、青いマントを羽織っている。口元や目じりに皺が深く刻まれているが、髪は黒々としていてまだ老婆というほどではない。とはいえ単純に若いというには、着実に時間が積み重ねられている風貌だった。  彼女はあたりをすばやく見回す。それから少しすると、今度はその場に屈む。そして這いつくばりながら土の上を両手で撫で、草むらをかき分けて中にしきり出入りする。服の裾や袖が汚れるのにもかまわずに。どう

1ヶ月の話

 あまりの忙しさに、とっくに給料日を過ぎていたことを忘れていた。生活費用の口座へ給料の8割をうつさねば。  この時いつも、生きているだけでもお金が必要だということを実感させられる。  これが私の生活の価値なのか?あんまり良くない想いが胸に充満する。  すぐにカード払いなど、現実的な考えに戻す。今月は少し贅沢しても大丈夫そうだ。  仕事終わりの疲れきった身体へのエネルギーとして、コンビニ弁当を買う。  コンビニ弁当を提げながら、少し考え事に耽っていた。  信号を待っ

【脚本】江川と西本

江川:西本、私の西本。 西本:江川、私はココにいるよ。 江川:大変だ。定岡が下で呼んでいる。行かなくちゃ。 西本:江川、もう行くのか。君を今すぐ伊東のキャンプへ連れ去りたいよ。 江川:そうして欲しい。どうしよう西本、私は間もなく山倉と結婚させられそうになっているの。 元ネタは分かるよね。

死花-第6話-⑤

「そうか…4月に結婚したんだ。おめでとう。」 「うん…ありがとう。」 鴨川辺りにある和風の純喫茶。 抹茶の入った器を丁寧に回して口に運ぶ総一郎を懐かしそうに見つめながら、絢音は白玉餡蜜をスプーンで掬う。 「綺麗になった…あの時よりも、ずっと…」 「いやだ…いつからそんなお世辞、言うようになったの?」 「お世辞じゃないさ。本当に、綺麗になった。」 「………」 自分を眩しそうに見つめる総一郎の視線が恥ずかしくて、絢音は俯き、スプーンに乗った色とりどりの寒天を見つめ

『ねがいごと』

いま私の願いごとが 叶うならば 翼がほしい この背中に 鳥のように 白い翼つけてください この大空に 翼を広げ 飛んでゆきたいよ 悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ ゆきたい 『翼をください』より 幾人の若者が 大空を見上げて 飛び立つことを 夢見たことか その数たるや 人類の歴史上 かぞえることなど 到底できまい 翼を広げ 飛び立つと そこに自由は あるのかしら 強風に煽られはしないか 雨が降ってきたらどうしよう 何者かと衝突があるのでは

新庄と契約しても良かったのでは…。

新庄獲得見送りか…。 獲得すれば球界が盛り上がるのに…。 というか、昔、ヤクルトが素人同然のアレックス・ラミレス・ジュニアと契約したくらいなんだから、新庄と契約しても良かったんじゃ?

刑事もの、医者もの、弁護士ものドラマ

ドラマを見ていると、刑事もの、医者もの、弁護士もの(それに類するもの)がやたら多い。なぜかと考え、核になるシンプルな目的があるからわかりやすくて面白いのではないかという仮説に達した。 刑事もの  目的 犯人をつかまえる 医者もの  目的 病気を治す 弁護士もの 目的 裁判で勝つ ここから派生して、色々な物語について、登場人物の目的を示すとその物語のポイントを端的に表すことができるのではと思いつきました。 鬼滅の刃 目的 鬼をやっつける でも、なんか一見しては目的が分か

透明人間まではまだ遠い

以前、会社入口で検温すると32度になる話を書いた。 相変わらず、奴は32度を表示しながら「正常範囲内です」と仰せである。 正常範囲とは? そしてあろうことか、ついに僕の存在を認識しなくなった。 センサー前に立っても、一切反応しない。 沈黙。 ぴょんぴょんと飛び跳ねて、自分の存在を主張する。 5回ほど跳んでやっと、34度を表示しつつ「正常範囲内です」と仰せになった。 もしかして、自分という存在は既に存在しないのか。 手のひらを空に翳すと、すうっと透けて見えた。 そうか、僕は

ヘイヨーさんの人生外伝 キザオ君とチガサキ君8 ~鋼の卵達

残って練習を行う皆の演技力自体は非常に低いものながら、キザオの知る限りでは陰口を漏らす者はなく、逆にいがみ合っていた者同士が直接意見し合う様子が見られる様になりました。 また授業時間以外にも有志で集まり練習をしていたのですが、出席率がほぼ毎回全員出席になります。でかい公園で約30人の男女が怪しい動きをし声を出す……。何とも不可思議な存在だと思われるでしょうが、他のクラスもその公園を使っているので周囲の人々に奇異の目で見られる事はありませんでした。閉園の21時迄練習をほぼ毎日

【140字小説】老女とハロウィン

「Trick or Treat!」外で元気な声が響く。 ハロウィンの町内行事で、仮装した子供らが家々を回っているのだ。 普段篭りがちな私の家にも来るのだろうか。 いらぬ気を使わせて全く迷惑な行事だ。 __玄関で声がする。 老女は可愛く包んだ菓子を持ちいそいそと立ち上がった。