右も左も分からない
初めての道を歩いているとわけもなく元気になります。散歩とは違う、知らない場所に踏み入れる感覚が好きなのです。ちょっとドキドキする。
自分の身体を使って世界の一端を知ろうとする行為というと大げさかな。
手がかりは自分の感覚のみ。見えるもの聞こえるもの、鼻を利かせたっていい。そうやって得たものを頼りに想像をめぐらすのはとても楽しい。
◇
そんな私には気になる人がいます。
Googleマップの端っこにいる黄色のヒト。クレーンゲームのようにつまみ上げられては、ストリートビューの開始位置に落とされる可哀そうな人です。毎回知らない場所に落とされるのはどんな気持ちでしょうか?
面白そう。やってみたい。
違う、これ私の気持ちだ。
◇
なんの予備知識も持たず観光地を歩くとどうなるのか?美味しいお店や観光スポットを探り当てることはできるのか?
自分の直感を信じて歩く旅。やってみました。軽井沢 体験記です。
* * *
2018年4月28日朝9時。私が降り立ったのは軽井沢駅。初めて訪れました。
GW初日ふと思いついて一人で軽井沢に来たものの、ここって…
寒いじゃないか!けっこう肌寒い・・。
夏の避暑地だもんな。半そでじゃまだ寒いんだよ。
◇
駅の構内をぐるっと見回すけどどっちを行けばいいのか?
右も左も分からない。
改札口向かって左に進むとたぶんこっちはウラのほう。スキー場のゲレンデみたいなものが見えるし、手前はでっかい駐車場がある。
右に進むとオモテらしきロータリーがあるからこっちに行ってみました。
SEARCHその1:駅のオモテとウラを確かめましょう
◇
駅の高架広場からは駅前と遠くの景色が見える。うーん・・
これぞ軽井沢という場所はどこなのか?
駅前ではなさそう。別の場所にあるのか?軽井沢銀座って聞いたことがあるけど、そこを目指すべき?
まっすぐ伸びる道の先に何かある気がする。人の流れもそっち方面だしね。
SEARCHその2:人の流れを観察してみましょう
レンタサイクルも見つけたけど、まずは歩いてみることにしました。自分の足で距離感を確かめたかったから。ま、テクテク歩いて行きましょうか。
帰りに立ち寄るかもしれないから、気になるお店を横目でチェックしながら歩く。そんなのも案外楽しかったりします。
◇
歩くこと20分。旧軽井沢ロータリーという人が集まる場所に着きました。
なるほど駅からここまでバスで来ればよかったのか。帰りは時間がなければ「バスを使う」と覚えておこう。
SEARCHその3:帰りのことも事前に想定しておきましょう
軽井沢っぽくなってきた!このあたりが旧軽井沢というらしい。散策する観光客。両サイドにお店が立ち並ぶ通りはそのすぐ先。軽井沢銀座みつけた!
◇
朝9時半でまだ早かったので、軽井沢銀座を端から端まで歩いてみました。
SEARCHその4:目的となる場所の全体像をつかんでおきましょう
レストラン・カフェ、テイクアウト店、雑貨店、お土産屋etc。気になるお店をチェックしながら商店街が途切れるまでテクテク歩く。
商店街の終点は老舗の旅館。その先も道は続くけどお店はなさそう。
引き返そうとすると、赤いレトロな観光バスがこちらに近づいてきます。旅館前のバス停には「見晴台行き」と書いてあるではありませんか!
見晴台って見晴らしがいいところ? 行く!絶対行く!深く考えずバスに乗り込みました。かわいい観光バス。長距離じゃない、はず、たぶん。
SEARCHその5:ときには知らないバスに飛び乗ってみましょう
↑ マネしちゃだめですよ
◇
バスに乗ること10分。終点に着きました。どうやらここは旧碓氷(うすい)峠のてっぺんのようです。道をはさんだ右手に峠茶屋があり、左手は石段を上ると神社があります。見晴台はここからもう少し歩いたところ。
行きのバスは折り返し帰ってしまうので、次の便で戻ることにしました。次はおよそ1時間後。神社、見晴台、峠茶屋の順で観光してみます。
◇ 神社
旧碓氷峠の頂上は長野と群馬の県境。ここの神社はちょうど真ん中で県をまたいでる珍しいお社でした。山門の石畳に「長野県|群馬県」の印あり。
熊野皇大神社で運矢というのを見つけました。運試しの的入れです。鉛筆サイズの破魔矢をイメージしてください。これを崖下の四角い井戸みたいな穴に投げ込み、見事入ると運がいいらしいけど、運矢が軽くて難しい。私は入りませんでした。でも面白いものに出合えてラッキーだったかな。
◇ 見晴台
さすが見晴らしがいい。パノラマの山並みが手前から奥まで幾重にも重なっており、雄大な景色でした。これだけでも来た甲斐あったかも。
◇ 峠茶屋
帰りのバスを待つあいだ、峠茶屋で休憩しました。力餅が有名らしい。碓氷峠は旧中山道の難所らしく、旅人たちが力餅を食べて越えていくのだとか。私は大根おろしでいただきました。美味。
・・さて、軽井沢銀座に戻りましょうか。
◇ 軽井沢銀座
観光バスを降りて軽井沢銀座に戻ったのが11時半。すでに観光客で賑わってました。商店街はそんなに長い距離じゃないけど、路地にもお店があったりするから、散策しながらのお店めぐりは楽しかったです。
SEARCHその6:路地を見つけたら積極的に探検してみましょう
次は家族を連れてくる予定で、今回は下見を兼ねてやって来ました。
軽井沢のメインはやっぱりここですね。
◇ サイクリング
軽井沢銀座にもレンタサイクルがいくつかあったので、サイクリングしてみることにしました。帰りは夕方ごろ駅を出発したいので時間を再確認。13時。うん、まだ大丈夫。軽井沢駅には16時ごろ戻ればいいか。
SEARCHその7:帰りの時間は逆算して余裕のある行動を取りましょう
さあ、サイクルマップ片手に出発です! ※さすがにこのマップは必要 。
◇ 雲場池
雲場(くもば)池は、軽井沢銀座から自転車ですぐに行ける観光地です。ひょうたん形の池の周りをぐるっと散策しました。新緑の時期もいいけど、秋は紅葉がきれいらしい。次は家族とここを訪れよう。
◇ 高級別荘地
軽井沢といえば高級別荘地。どんな建物が立ってるのか見てみたい。
雲場池の辺りは緑がとてもきれいでサイクリングしてて気持ちがよかったです。念願の別荘もちらほら見かけました。避暑地で過ごす夏か。いいなあ。
◇ ここからが長かった・・
調子に乗って自転車をこぎ過ぎました。
別荘地を抜けた後そのまま西へ進み、中軽井沢駅から南下して、国道18号線をひたすら東へ走ってました。誰か止めて。もはや観光地でもなんでもない。プリンス通りで北上して、軽井沢銀座に戻り、自転車を返却すると、すでに15時を過ぎてました。たっぷり1時間以上は迷走してたな。
ただ収獲もあって、国道18号線沿いに千住博美術館を見つけました。今回は時間がなかったけど、次は家族を連れてここに来よう。
さあ、帰ろうか。ふぅー。
◇ 軽井沢ニューアートミュージアム
軽井沢駅に戻る途中に小さな美術館がありました。それが軽井沢ニューアートミュージアム。ちょっと寄ってみました。現代アートが好きだし、建築物も好きなので、こういうふらっと立ち寄れる美術館は大好きです。
◇ 軽井沢駅
軽井沢駅発のバスでJR横川駅まで。在来線に乗り換えて高崎駅で下車。
所要時間は乗り換え含めて1時間半。高崎駅に着いたのは18時でした。
* * *
【まとめ】
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ふと思いついて軽井沢に行くってどういう状況だ?と思われた方もいらっしゃると思います。実はこの年の4月に群馬県高崎市に転勤したばかりだったのです。家族はその半年後に引越してくることになっており、それまでは一人暮しのため思いついたことでした。高崎から軽井沢までって近いんです。
◇
初めての場所で直感を働かせて、その場で旅を作り上げていくのはゲーム感覚で楽しかったです。直感力も鍛えられます。ただ誰かと一緒に行く旅行はやっぱり失敗したくないから、この遊びは難しいですよね。日帰りで行ける未開拓の観光地があれば、こんな一人旅も面白いかもしれません。
◇
この遊びは後日答え合わせをして完結します。
旅から帰ってきて、そこで初めてガイドブックを読むんです。ガイドブックに載ってる観光スポットや観光ポイントをどこまでカバーできたか?ホントだったら行きたかったのに、見逃したところはなかったか?
そうすると次は行き当たりばったりの旅ではなく、計画的な旅行としてこの経験を活かすことができます。自分で考えてその場その場で行動した旅は、驚くほど自分のものになっているはずです。
◇
半年後の秋。家族が高崎にやって来て、さっそくみんなを軽井沢に連れて行きました。千住博美術館に行き、軽井沢銀座を案内して、見晴台で眺望を楽しみ、雲場池で紅葉を楽しみました。
あの旅が先にあったから、家族に楽しんでもらえた小旅行になりました。
(終わり)
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