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新規事業担当者・起業家のための事業計画作成のコツービジネスモデル設計編・後編ー

西田 泰典さん著『事業計画に落とせるビジネスモデルキャンバスの書き方』では、資金獲得をめざす新規事業担当者・起業家のために、紙一枚から作る穴のない事業シナリオ「ビジネスモデル・キャンバス」の書き方をご紹介しています。

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新規事業想像プロセスの全体像

新規事業を立ち上げるまでのプロセスは、
1.新規事業構想
2.ビジネスモデル設計 前編後編
3.事業計画書の作成
4.投資の意思決定
の4つのフェーズで構成されます。

1.新規事業構想についてはこちら>>
2.ビジネスモデル設計 前編についてはこちら>>

ー2.ビジネスモデル設計編・後編ー

この記事ではビジネスモデル・キャンバスの9つのブロックの左側の書き方、仮説検証についてご紹介します。

ビジネスモデル・キャンバスの書き方
<キーリソース>

キーリソースのブロックでは、、価値を提案するのに重要なリソースを検討します。


ヒト・モノ・カネ・情報の視点で検討する


一般に経営資源とはヒト・モノ・カネ・情報を指します。中でも最も重要なのはヒトです。
ヒトは独自の価値を提供す津ための人材や組織も含めて記述します。
モノは独自の価値を生み出すための建物や施設、ネットワークなど。
カネは独自の価値を提供するための財政上のリソースを記述します。
例えば、キャッシュフローが潤沢で投資に充てる現金が多い、信用を担保にして大規模な融資を受けることができるなど。

情報は独自t¥の価値を生み出すために不可欠な情報を機j津します。
例えばGAFAは膨大な顧客データを活用して事業を拡大しています。

ビジネスモデル・キャンバスの書き方
<主要な活動>

このブロックでは、ビジネスモデルを実現する上で、重要な活動を記述します。

①成功要因は何かを考える

他社に対して優位に立つために必要なこと、またはもっとも優位性があると思われる分野を特定してリソースを集中的につぎ込むべきことを指します。

例えば生鮮食品を扱うスーパーマーケットの場合、できるだけ仕入れすぎず、廃棄率を減らすことが必要です。
化粧品を扱う場合、化粧品そのものの製造よりもマーケティングや販売活動が重要となるでしょう。

成功要因が何か明確になったら、その成功を実現するための活動を記述します。そのとき、一般的な活動を記述するのではなく、具体化し独自性のある活動にします。

②自社と外部企業が担う領域を区分する

経営資源を一定の仕組みにシステム化するためには、まずは自社が担う領域と外部記号が担う領域の線引きをする必要がると言及されています。
外部気企業が担う領域は専門能力を取り入れたい場合や、外部企業に委託するほうがコストがかからない場合、自社のリスクを低減したい場合などです。

③バリューチェーンで考える

バリューチェーンに沿って考えてみることで抜けもれがないか確認することができます。
企画、開発、設計、販売・マーケティング、、調達、生産、物流アフターサービス、人事・労務といった各機能において「価値提供」を実現するための重要な活動を考えていきます。

④3つの価値基準から「主要な活動」を考える

トレーシーとウィアセーマが提唱する3つの価値基準から検討する方法があります。マーケットリーダーは3つのうちどれか1つにたけており、のこり2つは標準レベルを維持している企業だと言及しています。

④-1.オペレーション・エクセレンシー(卓越した業務)
④-2.カスタマー・インティマシー(顧客との親密性)
④-3.プロダクト・リーダーシップ(製品リーダー)


 ④-1.オペレーション・エクセレンシー(卓越した業務)

卓越した業務運営によって、群を抜いた品質、コスト、納期・スピードといった価値提供を実現している企業です。
例)ユニクロ、イケア、マクドナルド


 ④-2.カスタマー・インティマシー(顧客との親密性)

顧客との関係性を重視した価値提供をしている企業です。
価格が高くても顧客との密着度をベースにして取引をします。
例)IBM

 ④-3.プロダクト・リーダーシップ(製品リーダー)

世の中にない製品・サービスを生み出す、あるいはその性能・機能が高いレベルでリードしている企業です。
例)アップル、ソニー、3M


ビジネスモデル・キャンバスの書き方
<キーパートナー>

このブロックでは、独自の価値提案を提供するために必要なパートナーを明らかにします。


①オープン・イノベーションという考え

自社のイノベーションプロセスを内部だけに留まらず、外部の知識や技術を取り入れながら、新しい価値を生み出そうという動きが活発になってきています。
技術の進歩が速い現代では、ゼロから開発しているとその変化についていけなくなるため、他社の知識や技術を取り入れながらその変化に対応していく必要があるのです。

②パートナーを考える切り口

オープン・イノベーションのように企業がパートナーと共に「新しい価値を創り出す」という以外にもパートナーとの組み方があります。

②-1.「価値を創り出すための供給先」としてのパートナー
②-2.「コストを削減する」という視点でのパートナー

 ②-1.「価値を創り出すための供給先」としてのパートナー

供給先の交渉力の脅威にさらされると相手に主導権を握られてしまうので、きちんと評価をしたうえで選定することが重要です。実績も含め定量的に評価して選定しましょう。


 ②-2.「コストを削減する」という視点でのパートナー

他社と共同で設備・インフラを使用することでコスト負担を減らす、原材料を共同で仕入れることで原価低減を図る場合など。
場合によっては競合と組むことも考えられます。

③パートナーはバイネームで記述する

サプライヤーや保守会社というざっくりとした記述の仕方よりも、提携する企業名をそのまま記入したほうがイメージしやすくなります。

④特定のパートナーに依存しすぎない

パートナーを選定したら、特定のパートナーに依存しすぎないことに注意しましょう。供給先パートナーに依存しすぎないの場合原材料の供給不足や価格の高騰によって自社に悪影響を及ぼす可能性があります。供給元の多様化を検討しておきましょう。

ビジネスモデル・キャンバスの書き方
<コスト構造>

このブロックでは、ビジネスモデルを実現する上で発生する重要なコストを記述します。
①主なコスト項目
②コストの構造


①主なコスト項目

おおよそどれくらいのコストが必要なのか記述しましょう。
記述するコスト項目を固定費、変動費と分けて整理すると抜け漏れなく検討することができます。
例)
固定費:人件費、販売管理費、減価償却費、研究開発費
変動費:原材料費、仕入れ費、外注費

②コストの構造

劇的にコストを減らす方法を考え、持続性のあるコスト構造を設計する必要があります。

②-1.従来の常識を疑う
②-2.パートナー企業に任せる
②-3.固定費を変動費化する
②-4.やらないことを選択する


 ②-1.従来の常識を疑う

容易にできることではありませんが、意識してみることが大切です。
できれば全く異なる業界にいた第三者の人からアドバイスを受けるといいでしょう。

 ②-2.パートナー企業に任せる

自社の強みが発揮できる部分を自社でもち、それ以外をパートナー企業にアウトソーシングする方法もあります。
最近では自社で工場をもたず、パートナー企業に生産を依頼しているファブレスな企業も多くあります。

 ②-3.固定費を変動費化する

事業環境の変化が激しい現代において、固定費を変動費化することは有効です。

 ②-4.やらないことを選択する

コストを削減するのではなく、活動をしないことを決める、といった考え方もあります。そのために提供する価値の「選択と集中」が必要です。



ビジネスモデル・キャンバスの確認点

ここまででビジネスモデル・キャンバスの9つのブロックを埋めることができたとおもいます。検証に移る前にいくつか確認していきましょう。

①ブロックの関係性
②参入障壁
③SWOTの視点で評価する

①ブロックの関係性

鳥の目になってビジネスモデル全体を俯瞰しましょう。
最も重要なのは「価値提供」と「顧客セグメント」にある「顧客が抱える切実な問題」との関係です。このブロックの紐づけがなされていなければビジネスモデルは成立しません。


②参入障壁

次に参入障壁が構築できているかの確認をしまあす。
自社が新規参入する場合は、参入障壁が低いほうが有利になりますが、立ち上げ後は参入障壁を高める努力が必要です。
ハーバードビジネススクールの教授ポーターの参入障壁の7分類に沿ってみてみましょう。

②-1.規模の経済
②-2.製品の差別化
②-3.巨額の投資
②-4.仕入れ先を変更するコスト
②-5.流通チャネルの確保
②-6.規模とは関係ないコストの不利
②-7.政府の政策


 ②-1.規模の経済

事業の規模が大きくなるほど製品やサービス一つ当たりのコストが小さくなることですが、大規模生産が一般化していると、新規参入は難しくなります。


 ②-2.製品の差別化

製品が機能、品質、デザイン、アフターサービスなどで差別化がさrている場合に招聘となります。強いブランドイメージを確立されている市場に参入するのは容易ではありません。


 ②-3.巨額の投資

研究開発や設備投資など、投資額が大きな市場や、退出の際に投資したものが回収できなくなる(サンクコスト)場合はさらに新規参入が難しくなります。


 ②-4.仕入れ先を変更するコスト

品質面や審査の手間などにかかるコストです。部品などを購入する企業が新たに仕入れ先を切り替えるコストが大きい場合は、新規参入する企業にとっては参入障壁となります。


 ②-5.流通チャネルの確保

自社の新製品やサービスを流通させるには多大な労力とコストが必要となるため、すでにある自社の流通チャネルを活かせればいいですが、チャネルを一から構築しなければならない場合、新規参入障壁が高くなります。

 ②-6.規模とは関係ないコストの不利

既存企業が独占的な技術がある、立地に恵まれている、独占的に材料を入手できる、習熟や経験則による蓄積がある場合、新規参入障壁が高くなります。


 ②-7.政府の政策

薬品や銀行など、行政の許可が必要となる場合や既存企業が法的に優遇されている場合は新規参入障壁が高くなります。



③SWOTの視点で評価する

SWOTの視点から評価することも有効です。
SWOT分析
S・・・Strengths(強み)
W・・・Weaknesses(弱み)
O・・・Opportunities(機会)
T・・・Threats(脅威)


ビジネスモデルの仮説検証

初期の段階ではビジネスモデル・キャンバスはプロトタイプです。仮説検証をしてブラッシュアップしていく必要があります。

検証手法(リーンスタートアップ)

ここではリーンスタートアップの考えかたで仮説検証をしていきます。
エリック・リース氏が提唱した「無駄なく、新しい事業を立ち上げる」というものです。
投資を最小限に抑えながら、最低限の製品・サービスの作りこみを行い顧客の反応を観察し、改善をスピーディに繰り返します。

検証はどのくらい必要か

BtoBの企業においては事業の立ち上げまでに最低10件~30件くらいのインタビューや観察をするといいでしょう。

BtoCでは100件以上の顧客との直接対話や観察が必要です。

顧客検証の留意点

基本的に新規事業創造が目的なので新規の顧客にアプローチする必要があります。
また、窓口担当者との対話ではなく、実際に業務にかかわっているキーマンに接触することが重要です。

事前の準備

顧客を理解するために事前に顧客に関して情報収集・分析をしておきます。準備の段階ではインターネットに公開されている二次情報でも十分です。
顧客の製品、業界での地位、課題、今後の方向性、財政状況などを理解しておきましょう。
また、あらかじめ確認したいことを質問票として送っておきましょう。質問票はA4サイズ2~3枚程度を目安にします。





このページではビジネスモデル・キャンバスの残りの4ブロック、仮説検証についてご紹介してきました。
次はいよいよ事業計画書に落とし込むプロセスです。


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