ごぼうに支配された頭--いたづらなるダイアリー

まぎれもなくこれは、いたづらなる(暇な/むなしい)ダイアリー(日記)である。

今朝のランニング中のできごと。
いつものように準備をして外に出た。今日は心拍数を上げすぎずに、ゆるいペースでいこうと決めて軽快に走り出した。ゆっくり走るにしてもフォームが崩れないように意識する。一定のリズムを刻みながら足を動かしていく。
まずは1km通過。いい具合に低い心拍数で走れている。
5kmを同じペースで、低い心拍数を維持して走れれば目標達成である。この調子でいこう。


しかしそれはいきなりやってきた。
何の脈絡もなく僕の頭の中に現れた。別に匂いがしたわけでもなく、最近食べたわけでもなく、食べたいと思っているわけでもなく、ただ唐突に『きんぴらごぼう』がやってきたのである。
たとえばトーストや納豆のような、朝食と言われて思い浮かべられるものであればあるいはまだ納得できたかもしれない。なんせ朝だから。
しかしなぜか『きんぴらごぼう』であったのだ。

いつものようにタイムを追求して走っていれば、考え事をする暇もなくただ呼吸と足の動きだけを意識していたことであろう。一生懸命に。
しかしながら今日はゆるいペースで走っているが故に脳に余裕が生まれた。
そこにきんぴらごぼうがつけ込んできた。きんぴらごぼうは見逃さない、いかなる隙も。なんとも鋭いやつである。

二本の足が生えた、細切りのごぼうとにんじん、とうがらし、それと白ゴマが、脳内トラック(なんだそれ)でせっせこマラソンをはじめた。僕のペースに合わせるように。
人の頭の中で勝手に走らないでいただきたい。
2km通過。ペースは安定している。

そもそも「きんぴら」ってなんなんだ。
僕は「きんぴら」という言葉の由来が無性に気になり出したが、途中で立ち止まって調べることも叶わず、なんとも苦しいモヤモヤを抱えたまま走り続けなければならなくなった。
それでもってきんぴらごぼうといえば、大抵の場合にんじんが一緒に入っていると思うのだが、なぜごぼうだけがメイン扱いされているのかという点もなんだか引っかかる。『きんぴらごぼうにんじん』ではダメなのか。そりゃあとうがらしや白ゴマはあきらかにサブキャラであるからして名前に含まれないのもわかる。しかしにんじんはメインと言ってもいいのではなかろうか。それともあくまでもにんじんはごぼうの食感を引き立たせるために入れられるのであって、たとえごぼうと細切り仲間であれどメインたり得ないと。なんともにんじんがかわいそうに思えなくもないが、きんぴらの世界にはきんぴらのルールがあるか。まぁいい。
こんな思考とごぼうたちがずっとぐるぐるトラックを回っていた。
3km通過。心拍数が上がりはじめた。きんぴらごぼうのせいだ。
違った。単に息が上がりはじめただけだった。心拍数への意識が薄れているのが問題だ。きんぴらごぼうについて考えている場合ではない。大きな手で脳内トラックのごぼうたちを追い払うイメージをする。ごぼうたちは慌てふためき、潰されまいと逃げまわる。しまいに姿を消した。
これでランニングに集中できる。フォームに意識を戻そう。背筋を伸ばし、顎をひいて前を見る。しっかりと腕を振り足を踏み出す。
4km通過。心拍数が落ち着いてきた。あと1kmこのペースを維持ればゴールだ。
心の余裕が出てきた矢先、ごぼうたちはまたしても現れた。ちらちらと様子を伺うでもなくしれっと脳内トラックに戻ってきた。
なんという太々しさ。というよりなぜそこまで僕の頭に取り付くのか。またしてもきんぴらごぼうに思考を戻さざるを得なくなってしまった。もう十分だというのに。
だいたい僕はきんぴらごぼうが好きでもない。嫌いでもないが。たしかにお弁当メニューとしてはよく作るし度々食べる。しかしそれは常備菜として楽で定番であるという理由だけであって、特別な好意を寄せているわけではない。それが気に入らないとでもいうのだろうか。まぁいい。もう好きに走らせておく。
きんぴらごぼうと仲違いしてしまっては今後のお弁当生活に支障が出る。

こうして最後はごぼうたちと共に走り切った。
途中で心拍数が上がってしまったから今日のミッションは失敗である。
きんぴらごぼうのせいだ。

家に戻って「きんぴらとは」で検索した。

「きんぴら」の名は、江戸時代に流行した古浄瑠璃「金平浄瑠璃」の主人公で、金太郎で有名な坂田金時の息子という設定の「坂田金平」に由来していると言われる。ごぼうのしっかりした食感や歯ごたえ、唐辛子のピリ辛さを坂田金平の強さや勇ましさに例え、「きんぴらごぼう」と呼ばれるようになったとされる。

農林水産省

あの坂田金時の息子が由来で、東京の郷土料理だそう。古くから愛されている。

そんなこんながあって僕はこのnoteを書いているわけだが、もちろん今もきんぴらごぼうのことを考えている。つまり今日の僕の頭はずっときんぴらごぼうに支配されていたことになる。まったくきんぴらがなんだというのだ。


もうこんな日はきんぴらごめんだ。
いや違う、まっぴらごぼうだ。

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