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「安全」から「自由」へ 実践探究を通して生き方をアップデートしたまいちゃん【前編】

子どもたちの「好き」や「やりたい」を形にする挑戦に伴走をする実践探究*。
実践探究では、日々の目に見えるチャレンジやアウトプット以上に、
子どもたちがどのように取り組み、何を感じ考えているのかというプロセスを大事にしています。
チャレンジやアウトプットの大きさがどれくらいであれ、結果が成功であれ失敗であれ、
そのプロセスで子どもたちは必ず何かしらの変化を経験します。
この変化は「好き」や「やってみたい」と同様に千差万別です。

*実践探究へのお問合せ先は記事の最後に記載しています。

子どもたちが自身のチャレンジや周りの人たちとの関わりの中で、何を感じ考えているのか、どんな変化を遂げているのか。
他でもないその子自身の変化についてのストーリーをお伝えできればと思っています。

今回は、実践探究に通って約1年のまいちゃん(小6)とそのお母さんへのインタビューで聞いた物語をお届けします。
実践探究に通うまでは、人見知りで自分の意見を言うことが得意ではなく、「みんなと同じ方が安全」という考えだったまいちゃんには、この1年で自他ともに認めるほどの変化がありました。

まいちゃんにどんな変化があったのか、何がそのような変化をもたらしたのかを紐解いていきます。

インタビューでは、お母さんも「初めて聞いた」と驚くような、まいちゃんの心の深い部分を言葉にしてくれました。
また、まいちゃん親子の会話から、無意識にやってしまいがちなことのリスクに気づき、子どもに伴走する立場としてハッとする場面もありました。

まいちゃんの心の内側をのぞくような、そして親子のパートナーシップの1つの在り方を隣で眺めるような気持ちでお読みいただければと思います。


「変わりたい」と思った実践探究説明会

まいちゃんが実践探究に通うことを決めた理由は2つありました。
1つ目はとてもシンプルで、お母さんに「これどう?」と紹介されて「おもしろそう」と感じたから。
そして2つ目は「変わりたい」と思ったから。

実践探究が始まる前、探究学舎では保護者向けの説明会が行われました。
そこでは、普段は人前に出て話すことのないワッキーの姿が。
「僕は喋るのが得意ではありませんが…」と素直な気持ちを前おきに話し出すワッキー。
実践探究でどんなことをしたいのか、どんな世界を創りたいのか、子どもたちとどんなことを分かち合いたいのか…丁寧に語るワッキーから、まいちゃん親子は強い想いを感じました。「この人にならついていきたい」と思ったお母さん。
そしてこの時、人前で、あるいは人と話すことが得意ではないと感じていたまいちゃんは、ワッキーの姿を見て「自分もこんなふうになりたい。変わりたい」と思ったのだと言います。
実は、この「変わりたい」という想いがまいちゃんの中でとても強く、同時に葛藤をも抱えたいたことが、話を追って行く中で徐々に明らかになっていきました。

「みんなと話したい、でも」

2021年4月から実践探究の誕生とともにに通い始めたまいちゃんは、小さい頃から大好きな折り紙の探究に取り組むようになりました。
最初に取り組んだのは、折り紙についてその歴史や面白さを紹介する本作りのプロジェクト。
元々1人が好きなまいちゃんの活動スタイルは、「同じ場所で、1人で、黙々作業」スタイルでした。
振り返ってみて、最初の頃は一度作業する場所を決めたら一歩も動かないことを心に決めていたと言います。

もちろん「変わりたい」と願ったまいちゃんが何も感じていなかった訳ではなく、
周りのみんなを見て「私もみんなみたいにお話ししたい」と思っていました。
それでも、まいちゃんの心にはみんなと話す一歩を踏み出せない“何か”が眠っていました。

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周りと同じであることは安全である

まいちゃん自身は実践探究に通うまでと通いはじめて以降、小学校5年生までの頃の自分と6年生の自分に大きな変化を感じていると言います。

それまでは「自分の意見がなかった」と言う彼女は、特に国語の「感情を読み取ってどう思いましたか」という問いが苦手。
読み取る?どう思う?ってどういうことだろう?
迷ったまいちゃんは、先に完成して紹介されていた友達の意見をちょこっと変えて、“自分の意見”にすることでその場を凌いでいたと言います。

自分の意見がなかった、あるいはあるはずの自分の意見に気づかなかったまいちゃんには、この時大事にしていたことがありました。
それは「安全」でした。
「人と違ったらどうしよう」という想いが強かったまいちゃんは、みんなと同じであることに自分の安全を求めていたのです。

実践探究の教室で席から移動しないようにしていたのも、この安全のためでした。
自分から話しかけることだけでなく、話しかけられることも恐れていたからです。

視線を周りに向けたら、席を移動したら周りから話しかけられるかもしれない。
話してみたいけれど、どういう話し方をしたら良いかわからない。
話を合わせられなかったらどうしよう?
こんな葛藤から、みんなみたいに話したいと思いながらも、話しかけられないように同じ場所にじっとすることを選択していたのでした。

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お母さんの葛藤:願い、見守る

実は、葛藤していたのはまいちゃんだけではありませんでした。
まいちゃんのお母さんには普段から心がけていることがありました。
それは、まいちゃんの在り方や感じ考えたことを、お母さんの言葉で言い直したり正したりせず、そのままに受け取ることです。
けれども、探究学舎に通う子どもたちには手をハイハイと挙げて自分の意見を言う子が多い。そんな様子を見て「我が子もそうなったら良いなぁ」と期待する気持ちがあったと言います。

当時のまいちゃんの姿は、お母さんの目に次のように映っていました。

周りを見て、今こういう状況だから自分はこうした方が安心安全だ、というようにアクションを選択しているように見えた。班の活動で何かを決める時も、決めることが目的なのだから自分が多数派と同じ意見にしたらすぐに決まる、というように意見を合わせているようだった。自分の意見を伝えてわちゃわちゃすることを避けているように見えた。

お母さんの頭には、色んな期待が駆け巡っていました。
それでも、やはり押し付けたくはない。
「彼女自身がなりたいようになれたら良い」と願い、見守ることに徹することを心に決めていました。

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「変わりたい」「みんなと話したい」という願いこそあれ、自分の安全を大事にする心からなかなか一歩を踏み出せずに葛藤していたまいちゃん。
そして、まいちゃんの在り方や考え方をありのままに受け入れることを心に決めながらも、期待や願いを持っていたお母さん。

まいちゃん親子はそれぞれの葛藤をどのように乗り越えていったのでしょうか。
後編に続きます。

▼後編はこちらからお読みください。
https://note.com/tanq_unofficial/n/n783bb3916fd4


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企画・編集・執筆:ちひろ
今は実践探究でメンターをしたり、文章を書いたりしています。
感動したことや葛藤したこと。感じたことを言葉にすることで認識できる自分の世界は広がると信じて、子どもたちの心の中を言葉にするお手伝いに努めています。

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子どもたちの「好き!」「やってみたい!」は千差万別です。
何が正解なのか、成功なのかは誰にもわかりません。
子どもたちとご家族とメンターが、関わりの中で一歩ずつステップを上り、積み上げ、作っていく。そのプロセスが豊かで、尊いものであるということこそ、わたしたちが「実践探究」を通して伝えていきたいことです。

ご入会を検討されている方、どんなプログラムなのか詳しく知りたいという方は、以下のメールまでお気軽にご連絡ください。
practice@tanqgakusha.jp(担当:宮脇)

※実践探究は2023年8月をもってサービスを終了いたしました。今までありがとうございました。
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