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「安全」から「自由 」へ 実践探究を通して生き方をアップデートしたまいちゃん【後編】

実践探究*に通い、自身と向き合いながら内面的な変化を遂げている「まいちゃん」のストーリーを2回に分けてお届けしています。
前編では、まいちゃんが「みんなと話せるようになりたい」と願いながらも、どうしても一歩踏み出せない背景にあるものを紐解いていきました。

▼前編はこちらからお読みください。
https://note.com/tanq_unofficial/n/ne2ddc85d6281


後編では、そんなまいちゃんが何をきっかけにどんなふうに変化していったのかに迫っていきます。

*実践探究へのお問合せ先は記事の最後に記載しています。


「安全」から「自由」へ

まいちゃんが現在大事にしているものは「安全」ではなく「自由」。
この変化の裏には一体何があったのでしょうか。
転機をもたらしたきっかけの一つが実践探究でした。

実践探究では子どもたち一人ひとりがそれぞれ好きなことに取り組んでいます。
料理をしている子がいれば、一方ではジオラマを作っている子がいる。
はたまたマインクラフトで自分の世界を創ったり小説を書いたりしている子がいる。
毎週教室でみんなを楽しませられるようなイベントを作っている子がいる。

教室の本棚を見れば背たけが不揃いでジャンルのバラバラな本が並んでいる。
棚には子どもたちの様々な作品が並んでいる。

実践探究では、みんなが違うことは当たり前です。
同じなのは、好きなこと・やりたいことがあって、教室に来ることが好きということだけ。

そんな、違うことが当たり前で、どこまでも自由な教室で過ごす毎週の時間は、
自分の本当に好きなことややりたいことと向き合わざるを得ません。
それぞれが好きなことをやっている状況は、自ずとそこに居る人々に「それで、あなたは何をやりたいの?」という問いを突きつけます。

また、周りの子どもたちの勢いや挑戦にも影響を受けました。
文化祭ではみんなが大きな声で「いらっしゃい!」とお客さんを呼び込み、一生懸命作ったものを売っている。
せっかく作った物も、待っているだけではお客さんは買いに来てくれません。
そんな中、まいちゃんも「負けちゃいらんない」「私も頑張らなきゃ」と声を張り上げてお客さんを呼びました。

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自分の作品をお客さんに売るまいちゃん

結果、売りに出したものは完売。
自分の作ったものが全部売れ、大きな達成感と喜びを味わいました。
そして、同じ曜日に実践探究へ通っている子がマイクを持ってお客さんの案内をしているのを見て、次は実行委員をやってみようという気持ちも芽生えたと言います。
実際に、文化祭の次に開催された博物館イベントでは実行委員に挑戦しました。

このような「私は私でやらねば」という状況は、みんなと同じことが安全であると考えていたまいちゃんに「自由で良いんだな、自由って良いな」と感じさせたのだと言います。

みんなと違うことへの「いいね」

「安全」から「自由」へ。まいちゃんの大切にしたいものの変化は、具体的な行動にも現れるようになりました。

例えば、実行委員に加わった博物館企画では、集客に使う案内のチラシ作りに取り組みました。
みんなが作ってみた案を出す中、まいちゃんも自分が作ったものを提案。
シンプルとわかりやすさに拘って、ああでもないこうでもない…と試行錯誤を重ねて作ったまいちゃんの案は、みんなの「いいね」を集めて案内のチラシに採用されました。

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まいちゃんが作った招待状

また、以前は多数派の意見に合わせたり、友達の意見を編集することで意見を生成したりしていましたが、みんなと違う自分の意見を口に出すことを畏れなくなりました。
学校では、一通り色んな意見が出て、自分の意見がまだ出ていない場面に遭遇。
勇気を出して意見を言ってみると、まだ出ていなかった新しい意見に対して「いいね」という言葉や反応がもらえたと言います。
今では少しずつ自分から手を挙げるようにもなってきたと言います。

実践探究の教室でも、メンターや他の子たちに自分から話しかける様子が日常茶飯事に。
表現探究にも通い、自分や自分の好きなものを表現する挑戦もしました。

親から見ても、メンターから見ても、
まいちゃんが自信を持って周りのみんなと関わるようになったこと、そして自分の意見を言うようになったことは明らかな変化でした。

もちろん、「みんなと違ったらどうしよう」という不安を完全に感じなくなった訳ではありませんでした。
それでも、恐れていたはずのみんなと違うことに対して「いいね」をもらえると知った経験によって、
まいちゃんは「人と違ってたとしても良いや」と思えるようになり、自分を外に表現する一歩を踏み出せるようになったのです。

そんな現在の自分自身のことを、「自分の決めた道を行けるようになった」と強い確信に満ち溢れた言葉で表現していました。

実践探究での時間を経て、安全から離れたところにあると思っていた「人と違うこと」が、決してそうではないと気づけたのかもしれません。
安全が満たされたから、自由を楽しめるようになった、インタビュアーの目にはそんな風に映りました。

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成功を喜ぶ博物館の実行委員の仲間たち

葉っぱのように自由に

すっかり自由を楽しめるようになってきたまいちゃんには、今後の「ありたい姿」があります。
それは、「ママみたいに、自分の意見をはっきり言ったり、相手の意見に対して傷つけないようにコメントできる人」であること。
また、「たくさんの考えを持っていたい」のだと教えてくれました。色んな視点で複数の意見を持っていた方が、より良い意見を提示できるからだと言います。

そして、最後に自分の変化を木に例えて話してくれました。

木だったら根っこの方が安定感があって安全
けれども、葉っぱが邪魔で空が見えない。
動くことができず、見えるのは広がる地面だけ。
守られている感じがする。
上の方にある枝や葉っぱは、風に吹かれて飛ばされてしまうかもしれないけれど、自由に動くことができる
空も大地も見える。根っこにいるより、遠くまで見たい景色を見ることができる。

今のまいちゃんは、木の真ん中らへんにいる葉っぱだと言います。
でもまだてっぺんには行っていません。
目指す先は木のてっぺん。
もっと色んなものを見ることができそう。

木のてっぺんがどんなところかは想像もつきません。
今てっぺんだと思っているものに辿り着いた時、そこがてっぺんではなかったと気づくかもしれません。

それでも良いのだと彼女は言います。

「人と違ったらどうしよう」という大きな不安を乗り越え、
「自分は変われる」という自信を得たまいちゃんは今、
挑戦し、自分がさらに変化することにワクワクしています。

現在は1日一個は達成したい目標を作っていると言います。
日常の身近な目標が大きな目標に、小さな挑戦が大きな挑戦につながると信じて。

それぞれの挑戦と変化が歓迎される実践探究の教室で、まいちゃんが自分自身も知らなかったような自分と出会えることを願っています。

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みんなと共同でプロジェクトに取り組むまいちゃん

母娘のパートナーシップ

インタビュー中は、まいちゃんに対するメンターのようなお母さんの接し方が印象的でした。

普段は在宅勤務の日も忙しく、なかなかまいちゃんの横にいて何かをする時間が多いわけではないというお母さん。
それでも、まいちゃんへの眼差しはとても冷静で、それでいてその眼差しの絶対的な正しさを常に疑うものでした。

まいちゃんが人見知りだと自覚していたことについて話していた時、
お母さんが「そうだ〜私からはそう見えるって話なのに、断定しちゃってた」と反省する一幕がありました。
聞けば、こんなエピソードがあったそう…

ある日、まいちゃんはお母さんの用事に、一緒に行くことになりました。
そこで出会ったお母さんの友人に、少し緊張したまいちゃんは、挨拶をしたらあとはひっそり。
その際、お母さんは友人の方に「すみません、人見知りなんですよ」とまいちゃんを紹介したのだと言います。

ありふれた会話のように思えますが、お母さんは「人見知りなんですよ」とまいちゃんの気質を断定してしまったことを反省していたのでした。
なぜなら、こういう場面で他者から見える性質を断定して言葉にすることが、「自分は〇〇なんだ」と子どもが内面化することにつながる可能性があるからです。

子どもに伴走する立場として、私も気をつけなければとハッとさせられました。

このような、言葉の選び方に相当慎重にならなければ気づけないことを強く意識して子どもに接することは、お母さんにとっての挑戦であるように感じました。

どんな時もまいちゃんの在り方を否定せず見守ることに徹していたお母さんは、
インタビューの時間、反省も含めて自分の感じたことや考えたことを「私にはこう見えていたよ」という伝え方で率直に伝え、
終始まいちゃんの言葉に「そんな風に感じてたんだね」「いいねー!」と共感し肯定していました。

この接し方は、まさにまいちゃんが今後の「ありたい姿」として挙げていたものでした。

母、職業人という役割ではなく、他者との関わり方において親がロールモデルになる、という素敵な関係を目にしました。

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企画・編集・執筆:ちひろ
今は実践探究でメンターをしたり、文章を書いたりしています。
感動したことや葛藤したこと。感じたことを言葉にすることで認識できる自分の世界は広がると信じて、子どもたちの心の中を言葉にするお手伝いに努めています。

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子どもたちの「好き!」「やってみたい!」は千差万別です。
何が正解なのか、成功なのかは誰にもわかりません。
子どもたちとご家族とメンターが、関わりの中で一歩ずつステップを上り、積み上げ、作っていく。そのプロセスが豊かで、尊いものであるということこそ、わたしたちが「実践探究」を通して伝えていきたいことです。

実践探究は現在試行錯誤しながら、探究学舎三鷹教室にて運営しています。
ご入会を検討されている方、どんなプログラムなのか詳しく知りたいという方は、以下のメールまでお気軽にご連絡ください。
practice@tanqgakusha.jp(担当:宮脇)

※実践探究は2023年8月をもってサービスを終了いたしました。今までありがとうございました。
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