見出し画像

国連本部でインターンする方法

今回はニューヨークの国連本部でインターンする方法を簡単に解説します。国際政治や国際協力に関心がある方の中には、国連のインターンを希望する方も多いのではないしょうか。ただ、実際の応募方法を知らない人も多いと思います。

今回は国連本部でインターンする方法を大きく3つに分けて解説します。「メリットと注意点」、「応募の流れ」、「Q&A」です。ぜひ関心がある方は、実際に応募してみてください。(なお、国連事務局のインターンの解説です。他の国連関係機関もインターンを募集していますが、応募方法や内容が若干異なります。)

国連インターン

まず先に国連のインターンの基本的な事柄を解説します。国連のインターンの人数は近年増加傾向にあり、ニューヨークの国連本部だけでもインターンが4,000人以上います。(米国議会では6,000人のインターンがおり、Googleでも3,000人いるので、米国基準だと特別多いわけではありません。)ただ、残念ながら日本人のインターンの数は非常に少ないのが現状です。下記は2014年度の国連インターンの出身国別の割合です。

https://www.impactgrowthlab.com/blog/ultimate-guide-to-united-nations-internships/

ちなみに16位から20位は、レバノン(65人)、ブラジル(61人)、オランダ(58人)、スウェーデン(56人)、スイス(55人)です。日本はトップ20にも入っていません。国連インターンは教育水準の高い先進国出身者数が多いという問題があります。しかし、それでも日本人のインターンが少ないのは、そもそもの応募者数が少ないことが原因と考えられます。これは裏を返せば、日本人で国連インターンを希望する人にとってチャンスなので、ぜひ積極的に応募してみて下さい。

メリット

・国連で働ける
そもそも国連で働くのは競争率が高く、決して簡単なことではありません。インターンといえども、国連での勤務は貴重な経験になります。部署にもよりますが、国連のインターンは、政策文書作成・リサーチなどレベルの高いタスクも担います。

・将来のキャリアに繋がる
インターンをしても将来的な国連勤務が約束されるわけではありません。ただ、国連で勤務できる可能性は高まります。実際に多くの国連職員が過去にインターンを経験しています。また、インターン後にコンサルタントとして勤務できる可能性もあります。

・人に出会える
国際関係や国際協力に関心がある人にとって、第一線で働いている国連職員の話を聞けるのは貴重な経験になります。普段は聞けない話も聞けます。

・内部資料を読める
国連事務局内の全て内部資料にはアクセスできませんが、部署内の資料であればクラウドで共有されているので好きなだけ読めます。また、iSeekという職員用のポータルサイトなどもあります。内部資料を自身の大学院の研究等には使えませんが、国連に関する自身の知識を深める上で貴重な資料になります。

注意点

・大学院生か卒業後1年以内
現役の大学院生か卒業後1年以内でなければ応募できません。大学生でも最終学年であれば応募は可能ですが、大学生のインターンはほとんどいません。なお、社会人経験は必要ありません。

・無報酬
国連事務局でのインターンは無報酬(Unpaid)です。インターンに関わる全ての費用を自分で賄う必要があります。ニューヨークへの渡航費や、毎日の国連本部への交通費なども実費です。

・フルタイム
インターンは基本的にフルタイムで週35時間の勤務です。

・期間は2ヶ月間〜6ヶ月間
インターン期間は最低2ヶ月間から最長で6ヶ月間です。

・勤務経験として計算されない
国連のポストに応募する際は、関係分野での勤務経験年数が必要です。しかし、インターン経験はこの勤務経験に含まれません。

・競争率が高い
国連本部でのインターンは人気で、世界中の優秀な大学院生や卒業生が応募します。ただ、しっかりと下記の応募の流れに沿って準備すれば、誰にでも可能性はあります。

応募の流れ

ここから応募の流れを解説します。基本的にインターンの応募は、正規ポストと同じ流れです。

  1. 希望ポストの決定

  2. inspiraの入力

  3. 面接

  4. 採用決定・ビザ取得

1. 希望ポストの決定

まずは希望ポスト探しです。空席を下記のウェブサイトで確認します。

上段タブか下のCategoryからInternshipを選びます。ニューヨークの国連本部希望の場合はDuty StationでNEW YORKを選びます。

下記のように現在応募可能なインターンのリストが表示されます。

上記のリストから希望のポストを選びます。ポストをクリックすると下記のような詳細な説明(Job Description)を見ることができます。

応募回数に制限なないので、複数に応募できます。ただ、それぞれのポストに志望理由書(Motivation Letter)が必要なので、多数のポストに応募するには時間と労力が必要です。戦略的に少数のポストに絞り、上記の説明を熟読し、本当に自分の希望に合ったポストなのか考える必要があります。

2. inspiraの入力

希望のポストが決まったら国連の人事サイトであるinspiraの入力です。希望ポストの「Apply Now」のボタンをクリックします。

クリックすると下記のページに飛びます。アカウントを持っていない方は「Create account here」からinspiraのアカウントを作成します。

ログインするとinspiraのページに移ります。

inspiraの詳細な操作方法や入力方法は「Applicant Guide」をご覧ください。

https://inspira-apps.un.org/Inspira/ApplicantGuide/Applicant%20Guide%20-%20English.pdf

このinspiraの入力は書類選考に当たります。基本的にほとんどの応募者が書類選考で落とされるので、応募ステップの中でも最も重要なステップです。
下記は国際人事センターの応募書類の書き方の注意点です。まずは、inspiraに直接入力するより、Wordで作成して、作成後にinspiraにコピペすることをお薦めします。

特に1点目の注意点の「合致していることを示す」は大切です。具体的には、希望ポストのJob DescriptionのResponsiblitiesに出てくるAction Verbを使って職務経歴書を書きます。例えば、Job Descriptionに「Monitor and Analyze key political and security developments」と記載があったら、自分のinspiraにも「Monitored and analyzed 」から始まる経験を入力します。もちろん、Job Descriptionに出てくる全てのAction Verbを使用する必要はなく、違う単語を使用しても問題はありません。ただ、単語レベルで関連性を強調することが重要です。社会人経験がなければインターンの経験を記載しても大丈夫です。下記の国際人事センターの動画を参考にしてください。

また、2000文字(250 words程度)のMotivation Statementが必要です。Job DescriptionのCompetencyを意識して、熱意よりもスキルを重視します。Motivation Statementという名称ですが、国連への想いではなく、即戦力であることをアピールして下さい。

3. 面接

inspiraの書類選考が通ると、応募締め切りから1〜2ヶ月後程度で希望の部署から面接の連絡がメールできます。面接日時をメールでやりとりし、オンラインで面接します。希望部署の2人〜3人が面接官です。

上記は国際人事センターの正職員用の動画です。インターンの面接でこのレベルの面接はしませんが、受け答え方を参考にする良いと思います。質問内容は部署や人によって異なりますが、下記が質問例とオンライン面接のポイントです。

質問例

  • なぜこのポストに応募したのか?

  • 今は大学院生?専門は?

  • 修士論文の内容は?

  • 過去のリサーチ経験と分野は?

  • フルタイムのインターンだけど、大丈夫?

  • 無報酬で関係費用も全て支払ってもらうけど、生活費はどうする予定?

  • インターンの希望開始時期と期間は?

オンライン面接のポイント

  • 笑顔で明瞭に話す

  • 想定問答集を作成し、事前に練習する

  • 熱意よりもスキルを重視し、即戦力をアピール

  • 服装はフォーマル

  • パソコンを棚などに乗せ、立って話す

  • カメラは肩から上を写す

  • 照明やライトで部屋と自分の顔を出来るだけ明るく写す

  • 背景は自分の部屋の白い壁か整頓された本棚

4. 採用決定・ビザ取得

部署にもよりますが、面接から1〜2週間程度で合格通知がいきます。採用が決まったら、必要書類を提出します。大学院の在籍証明書・卒業証明書や健康診断書、また国連のオンライン研修修了証明書(指定された2時間程度のコースを5つ程履修します。)などです。同時進行でビザを取得します。ビザはアメリカの現役大学院生であればF1ビザで、その他はG4ビザです。

以上が、簡単な応募の流れです。特にinspiraの入力は時間がかかりますが、ぜひ応募してみて下さい。

Q&A

・大学院の知名度は重要か?
インターンには様々な大学院生や大学院卒業生がおり、大学院の知名度は合否に影響を及ぼす決定要因ではありません。ただ、名の知れた欧米の大学院生は多く、特にニューヨークにあるコロンビアやNYUの大学院生は多い印象があります。

・必要な英語力は?
国連からTOEFL等のスコア提出を求めることはありません。ただ、inspiraの入力や面接をふまえると、最低でもTOEFL IBTで100点以上の英語力は必要です。なお、英語ができなくてもフランス語ができれば合格する部署もあります。

・応募時期は?
インターンの採用は通年です。空席はUN Careerのサイトで随時更新されます。

・どういう人材が求められているのか?
部署によって異なりますが、何か強みを持っていると良いと思います。国際政治や国連に詳しいことは当たり前なので、差別化が必要です。最近は国連で定量的分析ができる人材が求められているので、StataやRなど統計ソフトを使えると良いアピールになります。

・コネクションは必要か?
国連本部のインターンを獲得する上で国連職員とのコネクションが必要だという噂は聞きますが、全く必要ありません。inspiraに3人のリフェレンスを入力する欄があり、現職の国連職員のリフェレンスがいればプラスになるかもしれませんが、いなくても全く問題ありません。普通は大学教授や元上司の名前を入力します。

・大学院と両立できるか?
フルタイムのインターンなので大学院との両立は大変ですが、両立している人もおり、不可能ではありません。ただ、両方ともが中途半端にならないよう、できれば大学院の履修単位を少なくして、インターンに集中できる環境を作った方が良いと思います。

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは活動費として活用させていただきます。