おイモ

小説を書いたり、マンガを読んだり、音楽を聴いたり、ギターを弾いたり、阪神タイガースを応…

おイモ

小説を書いたり、マンガを読んだり、音楽を聴いたり、ギターを弾いたり、阪神タイガースを応援したりしています。

マガジン

  • 霞の向こうに

    薄い文庫本くらいの文量です。頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃえ。 縦読みはカクヨムでどうぞ https://kakuyomu.jp/works/1177354055199082736

最近の記事

白煙

白煙 1  地元の国道の家具屋で買ってもらったすのこベッドは、バラバラの状態で運ばれてきた。料金を送料に上乗せしてでも組み立てをお願いすべきだった。これからこれをやっつけるには疲れすぎている。  部屋の隅っこには段ボールが積み上がっており、生活用品や食料品の袋(おそらくスーパーの備え付けのレジ袋で一番大きいサイズ)がどっしりと畳の床に横たわっていてほとんど足の踏み場がない。  母はこれでもかと無駄なものを買い込んだ袋を私の新居に投げ込んで、「心配だわあ」と漏らした。そして

    • 好きなことを好きであり続けるということ「YESTERDAY」

      幸せになる秘訣を知りたいか、愛する女に愛を伝え、ウソをつかず生きることだ。  今日も無職の私は映画「イエスタデイ」を観てました。上述は劇中のセリフです。 「Trainspotting」のダニー・ボイル監督作品です。 (ヤクをキメるだけの映画です。MIB2さながらの便器へ吸い込まれるシーンは圧巻ですのでおすすめです。)  ツイッターで二郎をキメるときに貼るお決まりのシーンです。 はなから脱線してすいません。本流へ戻りましょう。  「イエスタデイ」  上映してた際には

      • 脳みそ破壊系コンテンツ 『地獄色』浄土るる

         みなさんNTRって好きですか?私は好きです。NTRといっても成人向け作品で描かれるようなエロコンテンツではなく、一般向け作品の中のエッセンスとして織り込まれるNTRに特に興奮します。具体的に出すと奥田英朗の「邪魔」でのスーパーのパート主婦と社長のくだりなんかが大好物です。(厳密にはNTRに該当しないのかな)  NTRや鬱展開など、過激なコンテンツに興奮ばかりしていると脳が破壊されるらしいです。  社会のどこを見回してもエロに結びついてしまう人間は脳みそがズタボロであると

        • ポテトサラダ

          「俺のことは君にはわからないと思う」  一樹らしいくずれた字がテーブルのメモに残されていた。わざとらしくテーブルの真ん中に置いているのは彼の気障な演出だろう。朝まで一緒にいたし、私が出るときに直接言えばよかったのに。気取り屋なのかシャイなのか。あんたのことなんて私にはわからないよ。  秋も暮れてきて、気を抜くと風邪をひいてしまいそうな寂しさを感じる。冬が来るのはわかっているんだけれど、どうかこのまま停滞していたい。私の心は早すぎる時についていけずにいた。  年末には実家に帰

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        • 霞の向こうに
          18本

        記事

          深夜にパスタ茹でろ

          「霞の向こうに」をお読みいただきありがとうございました。 本作は思うところが少なくない、なんというか書いていてよくわからなくなることが多々ありましたが、完成できたことがすべてなので良しとしましょう。 そんなことより、深夜にパスタを茹でろって話なんですよ。 私は現在無収入人間なので金がありません。それでも毎日飯を作るほどには料理が好きです。好きといっても手の込んだものは作りませんが。 深夜ってニンニク食べたくなりません?特に金曜の夜とか。(まあ私無職ですけど) 大量の脂とニ

          深夜にパスタ茹でろ

          霞の向こうに 18(完)

          18  敷地を出るとすぐ急な勾配の坂が続いていた。飛び出して踏み込んだ先が斜面になっていて、思わず前のめりに転びそうになった。木々の枝が顔面を引っ掻く。後方から乾いた発砲音が何度も何度も鳴る。男たちの激昂する声も聞こえる。また爆発音がした。おそらくメルセデスに引火したのだろう。すぐにもう一度、爆発した。二台とも燃えたみたいだ。  Cとリンがどこにいるのかわからなかった。確認する余裕もないし、暗くて何も見えない。声を出したら男たちに見つかりそうで、名前も呼べない。  宙を翔け

          霞の向こうに 18(完)

          霞の向こうに 17

          17  白いメルセデスは、追い越し車線と走行車線を蛇行するように何台も車やトラックを抜き、リンのボルボに近づいた。時速二百キロは出ているように見える。Cは、間違いなくこの車から発信している、と携帯を見ながら言った。 「こいつ僕たちを追ってきたのか?」  リンはメルセデスに気づいた段階で危険を察知し、走行車線にボルボを移動させていた。  メルセデスはついにボルボに追いつくと、スピードを下げ、並走すした。メルセデスの中からこちらを覗く視線があった。十秒ほど並んだあと、またスピー

          霞の向こうに 17

          霞の向こうに 16

          16 「遅くなって悪いね」リンはそう詫びたが、疲労の滲んだ顔から、休みなく高速を飛ばしてきたのがよくわかる。イグサが連絡を入れたのが六時、仙台に到着したときにはまだ日付の変わっていなかったからちっとも遅れていない。ボルボのエンジンが興奮しているのが座席の振動から伝わる。 「君たち煙草くさいねえ」  リンは窓を全開にして仙台の複雑な交差点を通過した。後部座席のCは虚ろな瞳で外を眺めていた。  Cにはリンのことを伝えていなかったからはじめは警戒していたが、現状リンの手を借りて仙

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          霞の向こうに 15

          15  夜の十一時を過ぎた。河川敷に吹き抜ける風がアノラックの隙間に入り、肌寒く感じる。  失神しているCを橋台に寄りかかる姿勢で寝かせ、イグサはその隣にずっと座り込んでいた。  ショルダーバッグからラッキーストライクを取り出す。箱を指で弾いて揺らしてフィルターをつまみ、箱から引き出す。ライターで火を点けて煙を深く吸い込み、長く吐き出した。一昨日買った煙草は十本も減っていなかった。いろんなことがありすぎて、三箱くらいはすでに消費している感覚でいた。  彼方が死んでから、頭の

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          霞の向こうに 14

          14  夏の日はすでに没していた。通りは仕事帰りのサラリーマンで溢れている。幅広の男たちを跳ね除けるように二人は走り続けた。  仙台方向を進み、分かれ道を適当に曲がる。Cは行き先を告げず北へ走り、それをイグサは彼方を抱きかかえながら追いかけた。 「あの二人はなんだったんだ?」 「たぶん麻取だと思う。」Cは息を切らしていた。「イチと同じバッジをつけていた。あれは麻薬取締官の紋章のはずだ。私が運ぶのがどこかから漏れたんだ」  イグサは息を切らしながら訊いた。 「麻取ならイチのこ

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          霞の向こうに 13

          13  イグサはコンビニで雑誌を読むフリをしながら向かいのビルを見ていた。  ビルは古い五階建てで二階のテナントには美容院が入っていた。三階より上は看板などがなく不明だ。こんな住宅街の寂れたビルの地下にライブハウスがあっても誰も気づかないだろう。廃業したのも納得できる。  腕時計を見るとCが突入してから十五分が経っていた。イグサは焦燥と不安でいっぱいだった。Cは十五分で戻ってくると言ったのに。  隣では同じように緊張した眼差しを外に向けている彼方がいた。彼方はしきりに唇を舐

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          霞の向こうに 12

          12 「なぜこいつに私の過去をみせた」 「あなたがそれを望んだから」 「私はそんなこと望んでいない」 「それにしてはしっかりお話していたみたいだけれど」 「それは……」  意識が覚醒してきて周りの音が耳に入り始めた。Cと彼方の声がする。 「こいつは一般人だぞ。知るべきじゃない人間だ」 「それは彼が決めること」 「お前は一体なんなんだ……」  イグサは瞼を開き、息を大きく吸い込んだ。 「いいんだ。話してくれてよかったよ」  Cは何か言いたそうに口を開いたが、何も言わなかった。

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          霞の向こうに 11

          11 「イチは麻取、麻薬捜査官で、薬物を斡旋する卸売り組織を取り締まるため、街の裏で密売者を探している。危ない世界へ飛び込む人間だからか、なかなか異常な人だ。この部屋を見てわかるだろう。何も無いんだ」  Cはテーブルに乗せた手を開いたり閉じたりしながら喋る。イグサのコーヒーはすっかり冷めてしまった。大麻のものらしい甘ったるい香りが鼻につく。 「組織は決して簡単ではない。薬物を発見し、中毒者を逮捕していくだけでは元売りには辿り着けない。薬物の解明、人の流れ、金の動き、犯罪、す

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          10  深く眠りに落ちたと思った、次の瞬間、イグサは知らない居間に立っていた。じんわりと頭がぼやけていたが、冬の朝を思わせる寒さに全身が冷やされて次第に脳が覚醒した。  これは夢か。彼方が、Cを覗くと言っていたのを思い出した。  仄暗い家だ。カーテンが開いているにもかかわらず暗い。夜の暗さではなく、部屋に陽が当たっていない。陽を遮るビルでも隣に建っているのだろうか。電気も点いていないし、今この家には誰もいないのか。  だんだん目が慣れてきて居間を見渡せるようになってきた。広

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          9 「お前……なぜ携帯を処分していない」  電話に出ようか迷った挙句、イグサはドトールを出て応答した。  西東京で聞いたCの低く若い声。だが前よりドスが利いているような気がする。 「破壊しろと言ったはずだ」 「い、忙しかったんだ」  イグサは額に浮かぶ脂汗を拭う。 「お前、何を考えている」 「何も考えてなんていない……本当だ!」  慌てふためきながらイグサは答えた。電話の向こうでCが大きく息を吐いた。 「まあいい。お前に訊きたいことがある。これから十五時五十七分東京発のやま

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          霞の向こうに 8

          8  駅前のミスタードーナツのカウンターに座って五時間が経過していた。文庫本を開いて時々視線を外の交差点に向ける。イグサはただ駅前の群衆を見張る作業を何時間も続けていた。  八幡第一高校の最寄り駅前の交差点には、ミスタードーナツとドトールがあって張り込むのにちょうどよかった。夕方頃になると駅前にセーラー服の女子高生が増え、店の中から、顔の造形や髪の長さ、色、質感。スカートの丈(写真は冬服だが夏の時分でも丈の長さは変わらないかもしれない)、リュックなど様々な点に注力して見てい

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