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脳みそ破壊系コンテンツ 『地獄色』浄土るる

 みなさんNTRって好きですか?私は好きです。NTRといっても成人向け作品で描かれるようなエロコンテンツではなく、一般向け作品の中のエッセンスとして織り込まれるNTRに特に興奮します。具体的に出すと奥田英朗の「邪魔」でのスーパーのパート主婦と社長のくだりなんかが大好物です。(厳密にはNTRに該当しないのかな)

 NTRや鬱展開など、過激なコンテンツに興奮ばかりしていると脳が破壊されるらしいです。

 社会のどこを見回してもエロに結びついてしまう人間は脳みそがズタボロであると。まったくその通りですね。私も自身の脳回路がおかしいことはちゃんと理解しています。
 でも、ラーメン二郎のように、身体に悪いのが気持ちいいみたいな感覚で刺激の強いコンテンツを漁ってしまうのがサブカルに足を突っ込んだ者たちではないでしょうか。現にメインカルチャーとなっている○○の刃なんかも首が飛びまくるし、やっぱみんなそういうの好きなんすよ。ゾンビ映画とかB級映画もそれが見所だもんね。

 そんなこんなでみなさんが大好きな大鬱マンガが出てきました。それも、これまたみなさんが大好きな無名作家です。

浄土るる「地獄色」

 冒頭のNTR要素はまったく関係ないのでもう忘れていただいて結構です。たぶんこれを語ると、簡単にダークコンテンツに乗っかる浅はかピープルと思われるだろうと少し迷ったのですが、noteで検索してみると想像してた勘違いメンヘラ感想文が無かったので書くことにしました。

 浄土るる先生について。某オタク系有名ツイッタラーのツイートで見かけたな程度だったし、実際読み切りの「地獄」を当時読んでいなかったのでほぼ存じていませんでした。なんとなくkindleで短編を買って読んでみてびっくり。おやすみプンプン好きな人好きそう(なお、おやすみプンプン好きな人とは友達になれない)
 「鬼」と「猫殴り」(1話のみ)は無料で公開されているので買う前に一度読んでみるのをおすすめします。(無料公開ぶんだけ読んで批評するなんてナンセンスなことはやめましょう)

 関係ありませんが、私マンガの短編集って好きなんですよね。どうしても本と違ってマンガって場所とるし、長編はかなり長く追い続けないといけなくなったり。でも短編集はコンパクトです。それに作家さんの絵柄だったり作風がぎゅっと濃縮されていて、中には長編でできないような挑戦的な試みもみられたりして面白い。気に入ったら長編にも手を出しちゃいますしお試しパックみたいな感覚でどんどん買っちゃいます。

 閑話休題、浄土るる先生の本作について触れていきます。

 私は絵心無い芸人なので詳しいことはわかりませんが、ツイッターやレビューを見るにあまり画力に関しては褒められていないですね。表現技法等に関しても私は語れませんし、誰も私にそんなこと求めていないとわかっています。
 ただ、ハイライトが無い瞳や無表情から一転、突然ブチ切れる不安定な情緒の表現がとても思い切っていて気持ちいいです。虐待、いじめ、宗教などセンシティブな内容を扱うことに対する躊躇がかけらもありません。胸糞悪いと感想を述べる方が多い作風ですが、ここまで振り切っていると爽快さすら感じられます。私はこの独特な画が好きです。

 「鬼」では、3コマ目でいきなりナチュラルに虐待されているのに度肝を抜かれますね。主人公は小学5年生なのですぐ怒るお母さんに抵抗できません。3回復唱の「生まれてきてごめんなさい。」の二回目で「生」とカットされて、次コマの教室のシーンへ飛ぶスピード感。わずか2ページで、陰鬱な内容を明るくポップに描くよ、とイントロデュースしています。みんなさくさくテンポ良く進むの好きだもんね。

 「猫殴り」では、セーラー服の女の子たち?(セーラー服だけじゃ性別わかんないね。もともと男が着てたわけだし)が「団地A」で雑魚寝をしているシーンから始まります。彼女らが向かうのは「猫殴り学校」。「鬼」の「死ね小学校」もそうですが、基本的に固有名詞のネーミングセンスが最高にクールです。「死ね小学校」とか生きたまま卒業できる気がしない。
 制服の彼女らは学校で「今日は猫、来るかなあ」とお喋りをしています。そこに突如鳴り響くベルの音。(ここの立体的なフォントすごい好き)
猫の上陸を感知。出勤準備をしてください」と繰り返すアナウンス。嬉しそうに駆け出す彼女たち。「猫来た。」
 私も猫がやってきたら嬉しい。猫が接近してきたらベルを鳴らしてほしい。なでたい。私は猫(Cat)なので。

「門を開けます。皆さん、頑張ってください」赤いエマージェンシースイッチを殴って、厳重な扉が開きます。

「突撃ーーーーーー!!」
ポカポカポカポカ。ボコボコボコボコ。ムシャムシャムシャムシャ。
「ギャッ。」「わー!」「痛いよー。」「腕がー。」「大丈夫?」「誰か連れてかれた。」

「今日死んだのはけいさん(14)ななさん(11)です。」「よつさん(15)は重症ですが、明日死ぬでしょう」
「猫を殴った者は大天国へ行けます。」「大天国へ行ければ来世は人間です。頑張ってください。」

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 すべてのコマが狂気を孕んでいてゾクゾクします。
 動物愛護の方々は上述で騒がないと思います。だって、あれは私たちの知っている猫ではないから。

 不気味な表現、ダウナーな内容とは裏腹に異常なポップさ、救済のない絶望感。
 鬱を摂取する脳が壊れている方にはヒットすること間違いないです。でも無理はしないでください。フィクションの暗い内容に私生活が引き摺られるセンシティブな人は気をつけてください。特に私がそうですが。

 ここに書いた内容はもちろん本編のごく一部です。あとは公開ぶんを読んで、短編集を買ってください。Kindleをはじめ電子書籍は楽でいいね。

では、

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