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出会えてよかった本「漁港の肉子ちゃん」

肉子ちゃんとは

漁港の肉子ちゃん』は西加奈子さんの2011年の作品です。

物語としては...


肉子ちゃんこと、容姿が整っておらず、太っていて、だが、涙もろく、情に厚い母、そして、クールで美少女な娘、キクコ、母娘の話です。

見どころといえば、肉子ちゃんのドジっぷりが凄まじく、それにかっこ悪くても人からどう思われようと、情に脆く、困っている人を放っておけない母、肉子ちゃんの人間性がとっても温かいお話です。

肉子ちゃんは容姿が悪くても、前向きです。どんな事が起きても、常に大きな口を開けて、ガハハと笑い飛ばします。そしてすぐ男に騙される。

愛すべき女性です。その一方でキクコちゃんは、母に似ていない容姿を不思議に思いながらも、そんな母親が大好き!大好きなんですが、恥ずかしいとも感じています。

行く先々の人々との交流も心に響きます。

私がこの作品を読んだのは、発売の翌年の2012年くらいです。なんとなく、本屋で手に取って読んだのがきっかけです。この本が私の初めての西加奈子作品だったと思います。震災の翌年のことです。

私は肉子ちゃん母娘の虜になってしまい、思い出すと何度も読み返しています。そして、また胸が熱くなったのが、実は漁港の肉子ちゃんの舞台となる港町、そして、肉子ちゃんの働く焼肉屋さんは私の暮らす、宮城県だったということ!

知人からその話を聞いて嬉しくなりました。モデルとなった焼肉屋さんは三陸海岸沿いの女川町にあり、東日本大震災の津波で被災したというのです。しかも、西さんが女川町で、ふと見かけただけの焼き肉屋さんに、こんな女将さんがいたら面白そうだなあという架空の話だったようです。

ところが、その話を読んだ方から実際に肉子ちゃんにそっくりの焼肉屋さんの女将さんがいた、と西さん宛に手紙が来たそう。残念ながら、震災で亡くなられたようですがその話に西さんは運命を感じたそうです。

上:肉子ちゃん誕生のエピソードが書かれている記事

実はこの小説のどんでん返しは、肉子ちゃんが、キクコちゃんの実のお母さんではなかったこと、実のお母さんとは今でも肉子ちゃんは友達でキクコちゃんが知らなかっただけで会いに来ていたことです。

キクコちゃんを実の娘のように育てる肉子ちゃんの心の広さたるや、娘を置いて出て行った親友まで包み込んでいたのです。

その事実に感動し、さらにモデルは私の故郷の近くの海(幼い頃度々訪れ、よく遊んだ海)の街だったとは、私自身も運命を感じ、そして、震災後娘を出産して、育児休業中に娘を背負いながら、地方メディアの市民ライターに応募した。ドキドキしながら取材活動を始め、コラムを書いた。それがきっかけで新聞社が運営するWEBメディアでコラム連載の機会をいただけた。ライターデビューした事にもなにかの縁を感じています。きっかけって、すごく小さな事だけど、大きな一歩になったり、人生も変わったり。

わたしには小さなきっかけの嘘みたいな本当の人生がとても充実しています。

そのため「漁港の肉子ちゃん」は記念すべき初めての、西加奈子作品だっただけではなく、私が執筆活動を始めたきっかけだったのかも、と思い入れのある作品です。

映画はまだ鑑賞していないのですが、様々な出来事や人を受け入れ、共に暮らしていく港町の人々の人情を感じられ、最高にハートフルな物語であると感じています。

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