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田舎町 クソデカモールに エモとチル『サイダーのように言葉が湧き上がる』


(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

17回目の夏、地方都市——。
コミュニケーションが苦手で、俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、ショッピングモールで出会い、やがてSNSを通じて少しずつ言葉を交わしていく。
ある日ふたりは、バイト先で出会った老人・フジヤマが失くしてしまった想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。
ふたりはそれを自分たちで見つけようと決意。フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。
だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って——。

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

感想

 タイトル通りサイダーみたいに爽やかで少年少女の一夏の恋を色鮮やかに描いていて厳しい残暑を紛らわしてくれるような良作。
 ストーリーの展開としては王道。これといった捻りやどんでん返しがあるわけではないがこの手の恋愛映画に小細工は不要、二人の出会いから縮まる距離、ふとしたすれ違いからの大団円、何も心配はいらない。全てが調和されている上で共感できるようなネタが散りばめられているので非常に見ていて心地よかった。

アートワークから見えるエモさ

 ポスターやアートワークだけでなく作品全体の配色がとても鮮やかでグラフィックデザインのようなポップさが目立ち、まるでわたせせいぞう作品のようなテイストが80年代に感じるエモさや懐かしさを表現しており、物語のキーアイテムであるレコードも同様の印象を持つ。
 また、BGMに感じるアンビエント・エレクトロニカみからもlo-fi的な印象が紐づけられ、このジャンルのアーティストのアートワークからも今作に通じる80年代的要素が感じられることから、今作はアートワークを中心に夏、田舎、旧メディア、甘酸っぱい恋とエモ要素マシマシで構成されていることがうかがえる。

田舎は全てがそこにある

 田舎特有のクソデカショッピングモール、そこにはレストランからデイサービスまで生活の全てが揃っており夏祭りでは花火を上げるほどの地域密着スタイル。当然、モールの客から地域の住民層もうかがえる。デイサービスがあるということはやはり高齢化が進んでいる、一方でモールは学生にとっては唯一の娯楽、デートスポットでもあるので地元の若者も多い。もっとも印象的だったのがデイサービスに勤める女性の見た目である。たくさんのピアスや金髪、介護職としてふさわしいファッションとは言い難い。つまりはマイルドヤンキーの類であり、田舎で彼女たちの存在をみると下妻物語を思い出してしまう。

まとめ

 つい内容とはあまり関係のないことを多く書いてしまった。それ程に王道で真っ直ぐな恋愛映画であり、爽やかな鑑賞後感が得られる。特出すべきはやはりアートワークの色彩である。あそこまで鮮やかなアニメはなかなかない。
 普段は劇場で観た映画しか感想は書かないのだが、今回はなぜかビビッときてしまったので書いてみました。

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