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谷郁雄の詩のノート11

昨日は、娘と旦那さんが遊びに来ました。妻が焼いたチーズケーキをみんなで食べてから、娘の旦那さんが持ってきたボードゲームに興じるひと時。なかなか楽しい時間でした。夕方はどしゃぶりの雨に雷鳴。雨がやむまでと、あと1回だけゲームをすることに。でも雨はやまず、二人は雨の中を帰っていきました。今日は三連休最後の日、真っ青な青空が広がっています。窓の外の電線にキジバトのカップルがとまって、なにやらゴソゴソと毛づくろいをしています。一見平和な一日の始まりです。(詩集「詩を読みたくなる日」も読んでいただけると嬉しいです)



「虹」

バットに
弾き飛ばされた
ボールが
空に
美しい孤を描き
七色に輝く
虹になる

虹を
見上げる
人々は
数秒だけ
すべてを忘れる

失恋の悲しみや
愛する人の死や
妻との不仲や
ふくらむ借金や
患っている病気や
その他さまざまな
人生にふりかかる
厄介事を

虹に
励まされ
明日も
生きてみようと
考え直す人もいる


「たこ焼」

花は
たしかに
美しいけど

おなかが
すいても
食べられない

ああ
きれいだなと
思うだけ

この花の
名前は
何だっけと
思ってみたり
するけれど

見飽きれば
もう
どうでも
よくなり

人は
たこ焼の
いい匂いが
するほうへと
ふらふらと
呼ばれて
いなくなってしまうのだ


「額縁」

君の一日は
ニュースにならない

くしゃみしたこと
ためいきついたこと
テーブルの脚に
左足の小指を
ぶつけたこと

コーヒーを
飲みながら
小説の続きを
少し読んだこと
物語は 暗い方へと
向かっている!

読書のあとで
緑色の鳥の群れが
空を飛んでいくのを
見たこと
あの鳥の名前は
何て言うんだっけ?

描いては
消されてしまう一枚の絵
一日は
からっぽの額縁


©Ikuo  Tani  2022


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