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谷郁雄の詩のノート10

4月から始めたnoteの連載が10回目になりました。noteを始めてからたくさんの方との出会いがありました。実際にお会いしていない方ばかりですが、記事を通してつながり、作品を読んでは「どんな人なのかな」と想像してみたり。これからも自分のペースで続けていきますので、皆さん、気軽に遊びにきてください。写真の黄色いポストは、若い友達2人の絵の展示を見るために訪れた武蔵小金井のギャラリー入口にあった、なつかしい昭和のポストです。間違って手紙を投函しないように黄色く塗ってあるのでしょう。いい感じで立っていました。(詩集「詩を読みたくなる日」も読んでいただけると嬉しいです)


「朝の光」

血や肉や
骨から
作られている君

やわらかな
よく弾む心を
持っている君

ときどき
世界に
背を向ける君

一人で
生きるのが
上手な君

明日が
ないかのように
生きている君

それでも
やっぱり
朝の光を愛している君


「虫」

虫に刺された
首の赤みが
徐々に薄れていく
痒みもすっかり
消えている

何でもない
小さな出来事
虫とぼくとの
不幸な出会い

空や
木や
人を作った
神様は
ついでに
小さな虫も作った

生意気なぼくを
チクリと刺して
ちょっと
こらしめるために


「本」

木は紙になった
人は紙に
言葉を印刷して
本を作った

木も
人も
本も

燃えて
灰になった

灰に
ならなかったのは
本に印刷された
言葉だけだった


©Ikuo  Tani  2022


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