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レトロ感に息を呑む、極上のトロン温泉 茂原市「旅館鈴木屋」

2021年2月某日
ふと、銭湯にいきたいと思った。
大きいお風呂に入りたい、と思った。
自宅のお風呂が故障し、翌日まで使えない事情があったからだ。
そして今日は人に会う約束がある。
よし、大義名分は出来たっ。
奥さんに透かした顔で「◯時までには帰るから」と言い、家をあとにした。お風呂グッズを忘れ、一度家に帰った。

時が止まっているようなレトロに癒やされる

少しだけ入り組んだ市街地を車で進むと、この旅館鈴木屋さんはある。木製の看板が素敵。
杢目フェチの私にはたまらないな、と思っていると、玄関先にミニ神社とミニ鳥居がある。サイズ感かわいい。
この時点で心を掴まれた私は、この旅館のお風呂への期待を、更にはてなきものにしていった。とっても楽しみだ。

フロントカウンターの隅っこでは、招き猫がお出迎え。開店時に寄贈されたものだそう。彼は開店からずーっとこの旅館を見守ってきたんだね。もしかしたら、私も彼に招かれたのかもしれない。招き猫に感謝。

世界一の名湯 いざ、トロン温泉へ

フロントで日帰り入浴の料金600円を支払うと、お風呂場への道を案内して頂いた。愛嬌のあるカウンターの方で、そこもほっこりポイント。

清潔感のある脱衣場は、裸になっても寒くない適温に空調が設定されていて、
トロン温泉の歴史やトロン温泉の入浴作法の指南が掲示されていた。

お風呂セットを小脇に抱え、ウキウキで大浴場へ。
冬場でもくもくになった大浴場。
ミストサウナのようで、奥にはトロン温泉独特の金色にもエメラルドにも見える浴槽が鎮座。
おおっ、コンパクトな大浴場だっ、落ち着く。
大浴場には私一人しかおらず、貸切状態だ。

これはあくまでも持論だが、
貸切状態のお風呂は神が人間に与えた唯一の救いである。
誰にも邪魔されず、誰にも気を遣わず、日頃サラリーマンとして疲弊した現代社会を生きる大人を慰めてくれる、天使の微笑みなのだ。

トロン温泉の指南をしっかり覚えていた私は、しっかりと実践をした。遠赤外線の効果で、体の芯から温まる。温まりすぎたら半身浴に切り替える。深呼吸をするたび、目に見えない疲労物質がお湯に溶けている。気がする。

最高のお湯加減、最高のひととき。
良い風呂夢気分だ。
ちなみに、貸切状態だったためか、私はお湯に浸かり、入浴中の私は終始"いい湯だな"の歌をハミングしていた。まったくめでたいやつだ。


まったりスペースで、想いを馳せる。

大浴場を後にして、フロントまで戻ってきた。
フロントから大浴場までのストローク中には、食事スペースや厨房もみえた。通路ではカレーと言われればカレーのような、魚の煮物と言われれば魚の煮物のような、鼻の奥を経由して胃袋をくすぐる、どうも美味しそうな芳しい香りがした。

オレンジ色のソファーが「まあ座って行けや」と言っているようで、その言葉に甘える事にした私は、入浴後の火照りを冷ましながら、リラックスしてもたれかかった。
クタクタになったソファーに年季を感じ、どこか懐かしい気持ちになった。
長年この旅館で、疲れた旅人たちを癒やしてきたのだろう。
そんな大ベテランなソファーには、尊敬の念すら覚えた。足腰を柔らかい生地で受け止め、包み込むその器量たるや、見習うべきものがあった。


冬の正午の日差しが館内の静寂さをやわらかく包む玄関。
ミニ神社や招き猫が、次のお客様をお待ちしている。ゆるく流れる時間に心がたゆたう。すばらしい時間だった。


旅館鈴木屋
http://e-szky.com/
〒297-0026 千葉県茂原市茂原133
交通アクセス:JR外房線 茂原駅より車で3分
日帰り入浴料:600円
(営業の詳細はお電話にてご確認ください)

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