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ワークライフバランスを役割の観点で考える・ライフロールと量・質という考え方

少子高齢化や産業構造の変化を発端に、ワークライフバランスという単語が出てくるようになりました。

仕事とそれ以外の生活の調和を取ることで、それぞれに相乗効果を生み出し、結果として人生の充実を図ろう!というのが、ワークライフバランスの考え方です。

それでは、それ以外の生活とは何で、調和が取れている状態とはどのような状態なのでしょうか?それは「個人が担う人生の役割の、量と質が、個人の理想とするバランスになっていること」を指します。

今回は、ワークライフバランスをライフロール(役割)という観点で考えていく話です。

1.ワークライフバランスが悪い=役割の優先順位のギャップ

この記事を読んでいただいている方は、ご自身のワークライフバランスは十分だと思いますか?それとも不十分だと思いますか?

私が人事として社員の話を聞いている中で、バランスが悪いという人の話でよく聞くのは次のようなものでした。

・仕事が忙しくて、趣味に割く時間を作れない
・親の介護と仕事があるから、休む時間を作れない
・仕事と家事と育児を全て行うのは大変、時間が足りない

どれも時間が足りない!ということを言っています。これを少し踏み込んでみると、自分が担う役割の中での時間のバランスが取れていないと読み取ることができます。

・仕事が忙しくて、趣味に割く時間を作れない
 →社会人としての役割に割く時間が多い、趣味人としての役割に割く時間をもっと増やしたい。
・親の介護と仕事があるから、休む時間を作れない
 →子としての役割に時間を割いているけれど、社会人としての役割の時間を減らして、個人という役割の時間を確保したい。
・仕事と家事と育児を全て行うのは大変、時間が足りない
 →社会人と配偶者と親としての役割を全て担うには時間が足りない。どれかに集中したい。

つまり、ワークライフバランスを考える上では、その人が担う役割の優先順位がポイントになるのです。理想とする優先順位で時間を割けていたとき、バランスが良い、となります。

この人生で担う役割のことを、キャリア用語では「ライフロール(人生で担う役割)」と言います。ドナルド・スーパーというキャリア研究をしている人が提唱した考え方で、理論の中では8つのライフロールがあると分類しています(子ども・学習者・職業人・配偶者・家庭人・親・余暇を楽しむ人・市民)。

ただ、実際には8つ以上に細分化することは可能です。例えば、余暇を楽しむ人は、私であれば、飲み仲間・登山仲間・一人の時間・コミュニティメンバー・・・などです。

大切なことは、自分が時間を割く必要がある、自分にとってのライフロールがどのようなものなのかをハッキリさせることです。また、その理想とする優先順位や時間配分は、その時々によって変わってきます。そのため、都度見直すことで、自分にとっての十分な状態のワークライフバランスが見えてきます。

もし、今ワークライフバランスが悪い!と感じている方は、恐らくライフロールの優先順位や時間配分の理想と現実にギャップがあるのではないでしょうか。

2.役割に割く時間が十分なだけでは満たされない

では、自分の役割がハッキリし、時間配分のバランスも理想的だった場合、必ずワークライフバランスが良いと言えるのでしょうか。恐らく、バランスに物足りなさを感じる人もいると思います。

例えば、仕事は9時ー17時勤務で残業無し。完全土日休みで、仕事以外の時間も十分確保できている。その状態であれば、仕事も余暇を楽しむ人としても十分満足し、バランスが取れているかというと、そうではありません。

過剰に仕事をしているわけではないけれど、同じことの繰り返しで成長実感が得られない。勤務後に飲み会に行っても愚痴ばかりで面白くない。積み上がっている本やゲームを消化しても、何となく作業感が出てくる不満はないけど満足もない。そんな状態であることも多いと思います。

つまり、役割に対して十分な時間を割けているだけでなく、役割を通じた体験の質も、ワークライフバランスには重要と言うことです

理想とする、ライフロールごとに割く時間(量)と、ライフロールごとに得られる体験(質)の程度によって、ワークライフバランスが決まってきます。量と質という点で見ると、次の4つのバランスになります。

3.充実した人生には役割ごとの量と質を高めることが大切である

ワークライフバランスという考え方の背景には様々な考え方があります。それでも、私が考えるワークライフバランスの一番の目的は、人生の充実であり、その人らしい人生歩むことであると考えています。

そのためには、①自分が担うライフロールを明らかにし、②理想とする量と質を定め、③現実とのギャップを明らかにした上で、④自分が取るべき行動を設定していくことが大切です。

自分の話で恐縮ですが、私にとって昨年の年末は大きな出来事が3つありました。

社会人としては、転職先が激務で3ヶ月間全く休みが無かったこと。
夫としては、奥さんの妊娠が分かり酷い悪阻で家事の全てを担ったこと。
子としては、父が末期がんで年を越せるか分からなかったこと。

仕事は大変でしたが、とても質の高い経験をさせてもらっていました。ただ、明らかな「一点集中型」のバランスでした。

そのため、最終的に私は、夫そして子としての役割を優先すべく、仕事を辞めました。その後、父が亡くなり、母親のケアと相続などの手続きをしつつ、奥さんの出産準備を一緒に行い、今は生まれた娘の育児と家事を行っています。

今の私は、社会人としての役割は全く担っていない状態です。ですが、今のライフロールのバランスは、私にとっては理想の状態で「高バランス型」と感じています。スパッと仕事を辞めたことは、自分らしいなぁと思っています。

ただ、子としての役割が落ちつつあり、時間にも余裕が出てくるため、少しずつ社会人としての役割に戻るため準備を進めています。理想の状態は、変化しているのです。

4.ワークライフバランスは自分で整えるもの

改めてお聞きしますが、ご自身のワークライフバランスは十分だと思いますか?それとも不十分だと思いますか?4つのタイプであればどれになるでしょうか?

多様な世の中で、生き方はこれからも可能性豊かに大きく変化していくと思います。そのような中であっても、充実した人生を送るために必要なことは、ご自身の担うライフロール、そして理想の量と質を明らかにすることです。

ワークライフバランスは会社が整えるものではありません。自分の人生を豊かにするのは自分自身です。ご自身の理想的なワークライフバランスを、役割・量と質の観点から考えてみて欲しいと思います。

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