Keiichi Kakui

タナイス屋.北海道大学で無脊椎動物の系統分類学を主とした研究を行っています.個人アカウ…

Keiichi Kakui

タナイス屋.北海道大学で無脊椎動物の系統分類学を主とした研究を行っています.個人アカウントです.あまり反応はしないと思います.

最近の記事

ウミナナフシの模様の種内変異(Shiraki & Kakui 2024)

私が関わった論文の短い紹介. ”ウミナナフシの模様はいつも同じではない” Shiraki & Kakui (2024) は,指導学生の白木祥貴さんが主導したウミナナフシに関する研究成果です.モヨウウミナナフシ(Mesanthura miyakoensis)が属するMesanthura属は,体の模様が分類上重要視されていましたが,個体発生に伴って模様が変化するのかしないのかという,模様の種内変異に関する情報はありませんでした.本研究ではモヨウウミナナフシのメスとオス(メスか

    • スナガレイに寄生するカイアシ類(Kakui 2024)

      私が関わった論文の短い紹介. ”スナガレイに寄生するカイアシ類(甲殻類)” Kakui (2024) は,スナガレイという魚の寄生虫に関する研究成果です.魚の寄生虫には様々なグループが知られていますが,特に有名なグループの一つにカイアシ類というケンミジンコなどが含まれる甲殻類の一群があります.本研究はスナガレイの鰓の近くに寄生するカイアシ類の一種の正体について調べたもので,本種についてメナシウオジラミ属(Lepeophtheirus)の一員(Lepeophtheirus

      • 寄生性フジツボ類の新種(Kakui 2024)

        私が関わった論文の短い紹介. ”深海生エビに寄生するフジツボ(甲殻類)の新種” Kakui (2024) は,白鳳丸という学術調査船の調査航海中に採集された寄生性フジツボ類に関する研究成果です.千島海溝の水深3893–3890 mから得られたメイフノキジンエビ Sclerocrangon zenkevitchi というエビの腹側に,黄色いふさふさをもった物体が付いているのが見つかりました.寄生虫であろうことはわかりましたが,正体がわからぬまま下船し,研究室でDNA配列情報

        • タナイスの化石のまとめ(角井 2024)

          私が関わった論文の短い紹介. ”世界のタナイスの化石情報のまとめ” 角井 (2024)は,現在知られるタナイス目甲殻類の化石に関する情報を日本語でまとめたものです.現時点で日本からタナイス類の化石は見つかっていませんが,今後の発見の助けとなると良いなと考えて執筆しました.基本的に海で見つかるタナイス類ですが,琥珀に閉じ込められた化石も知られています.タナイス類に関する簡単な概説,全27種のリスト,産出年代・地域情報,一部種の写真・図を示しました.

        ウミナナフシの模様の種内変異(Shiraki & Kakui 2024)

          知床の沿岸生無脊椎動物(Sonoda et al. 2024)

          私が関わった論文の短い紹介. ”知床半島の沿岸にすむ海産無脊椎動物について” Sonoda et al. (2024)は,東京農業大学の園田武博士が主導してまとめられた知床半島沿岸の海産無脊椎動物に関する研究成果です.調査した13地点それぞれでどのような無脊椎動物が得られたかを調べ,各地点の生物の構成(生物相)を形作った要因に関する議論を行いました.

          知床の沿岸生無脊椎動物(Sonoda et al. 2024)

          ウミナナフシの新種(Shiraki & Kakui 2024)

          私が関わった論文の短い紹介. ”宮古群島伊良部島から新種のウミナナフシを発見,報告” Shiraki & Kakui (2024)は,指導学生の白木祥貴さんが主導したウミナナフシ(海に住むワラジムシの仲間)に関する研究成果です.宮古群島の伊良部島沖の水深約10 mより得られた標本の研究を行ったところ,名前のついていない種(未記載種)だと判断されたため,Cruranthura viridisという学名で新種記載しました.和名は,尖った口と苔色の体色,多くのウミナナフシより脚

          ウミナナフシの新種(Shiraki & Kakui 2024)

          小さな親と大きな子(Kakui & Hiruta 2024)

          私が関わった論文の短い紹介. ”タナイスの近縁2種間で見られた成体ー幼体のサイズの差の違い” Kakui & Hiruta (2024) は,タナイスの近縁2種(Apseudes nipponicusとApseudes sp.)の最小抱卵個体(つまり繁殖開始時)のサイズと自由生活第1齢(マンカ2という発生段階)のサイズを比較した成果です.対象とした2種はいずれも同時的雌雄同体です.本研究は,同2種を扱った以下の先行研究で提示した「小さな種(Apseudes sp.)は,体

          小さな親と大きな子(Kakui & Hiruta 2024)

          深海に住むプラナリア(Kakui & Tsuyuki 2024)

          私が関わった論文の短い紹介. ”プラナリアの世界最深記録と彼らの子供の育ち方” Kakui & Tsuyuki (2024) は,2023年に実施された白鳳丸という学術調査船の調査航海中に採集されたサンプルに関する研究成果です.千島海溝の水深6,176-6,200 mから得られた岩の表面に,たくさんの直径3ミリ程度の真っ黒な玉がついているのが見つかりました.初めて見たときは動物なのかすら分からず割ってみたところ,プラナリア類の胚(子供)が出てきたため,彼らのコクーン(卵殻

          深海に住むプラナリア(Kakui & Tsuyuki 2024)

          宝石サンゴの新種(Nonaka et al. 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”日本東方沖の深海域から新種の宝石サンゴを発見,報告” Nonaka et al. (2023)は,沖縄美ら島財団 総合研究所の野中 正法博士が主導した宝石サンゴに関する研究成果です.宝石サンゴは宝石に加工される種(アカサンゴなど)を含むサンゴ類で,南の海のサンゴ礁と聞いてぱっと思い浮かべるもの(造礁サンゴ)とはやや遠縁な動物です.今回は福島県東方沖にそびえる磐城海山の頂上付近,水深約1750 mの地点から採集された個体について研究を行い,名

          宝石サンゴの新種(Nonaka et al. 2023)

          海底洞窟のセンチュウ(Shimada et al. 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”海底洞窟から新種の自由生活性センチュウを発見,報告” Shimada et al. (2023)は,国立科学博物館の嶋田大輔博士が主導したセンチュウに関する研究成果です.センチュウというと寄生虫が思い浮かぶかもしれませんが,実は何かに寄生せずに単独で生活している自由生活性(自活性とも言います)の種の多様性も非常に高いです.今回は国内では自活性センチュウの報告のなかった環境である海底洞窟から採集された海産自活性種について研究を行い,名前のつい

          海底洞窟のセンチュウ(Shimada et al. 2023)

          ヨコエビの新属新種(Matsumoto et al. 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”日本の深海域からヨコエビ類の新属新種を発見,報告” Matsumoto et al. (2023)は,松本裕さんが主導したヨコエビ類に関する研究成果です.三重県沖の熊野灘の水深775–800 mより得られた標本と宮城県沖の840–873 mよら採集された標本の研究を行ったところ,既知の属のいずれにも属さない,それぞれ名前のついていない種(未記載種)だと判断されたため,Capropodocerus (ワレカラドロノミ属)という新属を設立した上

          ヨコエビの新属新種(Matsumoto et al. 2023)

          タナイスの2新種(Sato et al. 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”日本の浅海域からタナイスの2新種を発見,報告” Sato et al. (2023)は,指導学生の佐藤あかりさんが主導したタナイスに関する研究成果です.三重県沖の熊野灘の水深113–185 mより得られた標本と沖縄県備瀬崎の潮間帯から採集された標本の研究を行ったところ,それぞれ名前のついていない種(未記載種)だと判断されたため,前者をChondrochelia sublitoralis (ツツソデタナイス),後者をNeoleptocheli

          タナイスの2新種(Sato et al. 2023)

          海底洞窟のウミグモ(Kakui & Fujita 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”海底洞窟から新種のウミグモを発見,報告” Kakui & Fujita (2023)は,琉球列島宮古群島の下地島にある「悪魔の館」という海底洞窟から採集された1個体のウミグモに関する研究成果です.形態観察の結果,近縁種から形態的に区別できる名前のついていない種(未記載種)だと判断されたため,Pantopipetta hosodai(ドウクツスイクチウミグモ)という学名で新種記載しました.なお本学名(厳密にはhosodaiの部分)は,私の指導

          海底洞窟のウミグモ(Kakui & Fujita 2023)

          オスっぽさの違い(Kakui & Hiruta 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”タナイスの近縁2種間で見られた異なるオスっぽさ” Kakui & Hiruta (2023) は,タナイスの近縁2種(Apseudes nipponicusとApseudes sp.)のハサミにおけるオス化の程度を比較した成果です.本研究では,(1)Apseudes nipponicusはApseudes sp.と同様に同時的雌雄同体(1個体が同時にオスとメスの生殖器官を有する状態)であること,(2)両種はハサミのオス化(節が幅広くなったり

          オスっぽさの違い(Kakui & Hiruta 2023)

          タナイスの走光性(Okamoto & Kakui 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”タナイスにおいて初めて実験的に走光性の存在を示した研究” Okamoto & Kakui (2023) は,指導学生である岡本暢躍さんが主導した研究の成果です.沿岸域で見つかるナミタナイス属のタナイスの2種(エゾナミタナイスとエンピツナミタナイス)が走光性を示すことを実験的に明らかにしました.走光性を持ったタナイスの存在は過去に示唆されていましたが,今回,初めて実験的に明らかにされました. 興味深いことに,同じ属に含まれる(つまり比較的近

          タナイスの走光性(Okamoto & Kakui 2023)

          寄生性カイアシ類の新種(Kakui et al. 2023)

          私が関わった論文の短い紹介. ”超深海に棲む寄生性カイアシ類(甲殻類)の新種” Kakui et al. (2023) は,白鳳丸という学術調査船の調査航海中に採集されたカイアシ類(ケンミジンコなどが含まれる甲殻類の一群)に関する研究成果です.千島海溝の水深7,184-7,186 mから得られた深海性等脚類(ワラジムシの仲間;Eugerdella cf. kurabyssalis Golovan, 2015)に付着していた丸い物体について研究を行ったところ,寄生性カイアシ

          寄生性カイアシ類の新種(Kakui et al. 2023)