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ヨコエビの新属新種(Matsumoto et al. 2023)

私が関わった論文の短い紹介.

”日本の深海域からヨコエビ類の新属新種を発見,報告”

Matsumoto et al. (2023)は,松本裕さんが主導したヨコエビ類に関する研究成果です.三重県沖の熊野灘の水深775–800 mより得られた標本と宮城県沖の840–873 mよら採集された標本の研究を行ったところ,既知の属のいずれにも属さない,それぞれ名前のついていない種(未記載種)だと判断されたため,Capropodocerusカプロポドケルス (ワレカラドロノミ属)という新属を設立した上で,前者をCapropodocerus tagamaruカプロポドケルス タガマル (カイゾクワレカラドロノミ),後者をCapropodocerus kamaitachiカプロポドケルス カマイタチ(オオガマワレカラドロノミ)という学名で新種記載しました.なお前者の種小名「tagamaru」は多娥丸たがまるという「紀伊国熊野の海を荒らし回った鬼の大将」(Wikipediaより)に因みます(本種が熊野灘から得られたのが主たる理由).また後者の種小名「kamaitachi」は,本種が大きな鎌状の脚を持っている様から鎌を持った妖怪カマイタチを連想したことに因みます.

今回研究を行った2種が含まれるドロノミ科のヨコエビ類は,今回記載した2種を除くと,日本近海では大陸棚以浅の比較的浅い海域から得られた種しか研究がされておらず,比較的研究の進んでいないグループだと言えます.今後より広い水深帯で調査を行うことで,より多くの未発見種が見つかることが期待されます.

Matsumoto Y, Kajihara H, Kakui K (2023) Capropodocerus, a new genus in Podoceridae (Crustacea: Amphipoda) from Japan, with descriptions of two new species. Zootaxa 5336: 577–589.

doi: https://doi.org/10.11646/zootaxa.5336.4.8


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