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「M&A=乗っ取り」ではない。

「全国あちこち、乗っ取ってるらしいな」

久々に会った先輩からの一言。
再会の第一声がこれかと思いつつ、やっぱりM&Aに対してはこのようなイメージが強く残っていると実感した。

はじめまして、医療法人田本会・代表、田本直弘です。

私は、小児科の医師として現場で働きながら、内科クリニック、美容クリニック、訪問看護ステーション、保育園、介護施設、エステサロンなどを経営しています。

介護施設、エステサロン、美容クリニックはM&Aを行い田本グループで運営させていただくことになりました。

「M&A=乗っ取り」というイメージがあるかと思いますが、私にはそんなつもりは全くありません。

困っている経営者の力になりたい、残されるスタッフに安心感を与えたい、お客様に変わらぬサービスを提供したいと考え、M&Aに踏み切りました。

今回は、私のM&A実際を綴らせていただきたいと思います。

医師と経営者を分業させるためのM&A

私は医師でありながら、患者さんのことを第一に考えて日々の診療を行っている『お医者さん』を尊敬しています。

医師は、患者さんのために、知識や技術の向上に没頭し、寝食の時間を忘れてしまうこともあります。
人のことを考え行動できることは誇りであり、また、いち患者の立場としてはありがたく思います。

一方で、自身で医院を経営している開業医が、常に患者さんのことに集中できているか、と言われると必ずしもそうではないのが現実です。

医院の運営のために、経営者としての仕事もしなければならないからです。
収益計画、スタッフの教育、マネジメントなど、経営者が考えるべきことは多岐に渡ります。
患者さん一人一人のことを考える傍ら、医院の存続へも思いを巡らせる必要があるのです。

医師と経営者、開業医は二つの立場で考えなければなりませんが、すべての開業医が"経営"に向いているわけではありません。
医師は大学病院で〈良い医師になるための訓練〉を受けてきたのであって、〈良い経営者になるための訓練〉は受けてきていないからです。

医師の仕事も経営者の仕事も、どっちつかずになり、患者さんは良い治療が受けられず、医院の経営も傾くという悪循環になりかねません。

これは、医師も患者さんも幸せな状態ではありません。

経営に要する時間と労力に、医師の想いや技術を邪魔されたくない

医師としての患者さんへの想いや、技術の研鑽を、"経営"に要する時間や労力が邪魔をして、十全に発揮できないのはもったいない、と私は思います。

そのような状況を変えるために、M&Aという手法を私は使っていきたいと考えています。
M&Aを行い、経営者としての重荷を降ろしていただくことで、先生方が患者さんに100%集中できるようにしたいのです。

私自身、開業医として独立してから、経営者と医師のバランスに苦闘してきました。
その経験を最大限活かしていければと思っています。

一つ実際にあった事例を書かせていただきます。

先代から病院を引き継いだ院長先生から「経営者としての責任に押しつぶされそうだ」というご相談がありました。
長らく大学病院で働いており、病院を継承され、慣れないながらもスタッフのマネジメントなど、経営を頑張っておられました。

しかし、思った以上に、医師としての責任と、経営者としての責任の両方を背負うことが重く、「重圧のせいで、思うような診療ができない。だから助けてほしい!」 とのことでした。

この思いは、「経営の負担を減らして、治療に専念してほしい!」という私の思いと重なり、M&Aを進めていくことになりました。

M&Aはあくまでも手段

先ほどのお話には続きがあります。

実は、最終的にはM&Aは成立しませんでした。

きっかけは、M&Aを進める過程で、その内容をスタッフに説明をしたときのこと。

「院長先生がそんなに悩んでいるとは知らなかった」
「外部に頼る前に、私たちに頼ってほしい」
「協力するから、まずは一緒に頑張りませんか?」

なんと、病院内でスタッフから、院長先生に協力したいという声が上がったのです。

「スタッフたちにこう言われたから、一度、自分たちで頑張ってみたい」

院長先生からこうお話を伺ったとき、私はとても嬉しかったです。
「M&Aはやめましょう。みなさんで解決できれば、それが一番いいんですから」

これは、M&Aに向けた動きをきっかけに、院長先生の状況が、そして院長先生の患者さんへの想いが、改めてスタッフたち全員に伝わった結果、全員が納得する形で組織が良い方向に進んだ事例です。

当初私が予想していたM&Aとは違った形になりましたが、状況改善のきっかけとなり、院長先生・病院の力になれました。

本当に最高の出来事でした。

私の目的は、M&Aをすることではなく、医師の力に、そしてその組織の力になること。

だから、結果として力になれるなら、M&Aに至らなくて構いません。

まだまだ「M&A=乗っ取り」というイメージが根強く残っていますが、このイメージを覆せるように、また田本は力になってくれる人だと信じてもらえるように、もっともっと世の中に自分の想いを伝えて、一人でも多くの院長先生、経営者の方々の力になれるように努めていきたいと思います。


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