パンと体調の意外に深い関係
「パンがない!」
もうすぐ宣言が出るか、あたりの頃、まず売り場から消えたのが食パンだったと記憶しています。カップラーメンやパスタも。
そんなパンが、不調の原因のひとつになることを知ったときは、本当に驚きました。
家にいてもだるさが抜けない、なぜか下痢や便秘をしやすい、頭痛がある、肌あれがひどい、集中力が続かない、などなど。こうした「なんとなく不調」の背後に、なんと小麦が関係しているというのです。
やみつきのモチッと食感! その裏で起こっていること
小麦に含まれるグルテン。タンパク質の一種で、パンやうどんのモチッと感を生み出しているものといえばイメージしやすいでしょうか。小麦粉と水をこねてできる物質です。
そもそもタンパク質とは、アミノ酸という物質が何百、何千と集まってできたものです。グルテンもそうです。
胃、十二指腸、と消化器を通りながら少しずつ分解され、最小単位であるアミノ酸、あるいはアミノ酸が2、3個くっついた状態で腸から吸収されるのが本来の流れなのですが、グルテンの消化が不得意な人の場合、これがうまくいきません。
栄養を吸収する小腸の粘膜は、よくザルにたとえられます。通常であればアミノ酸のように小さいものだけを通し血液中に入れる一方、大きいものは吸収せずに通過させます。
しかし、腸が弱く粘膜が荒れてしまっている状態、つまり目の荒いザルのようになった状態だと、アミノ酸と一緒に、グルテンのように大きいサイズのものも血管に通してしまうのです。
一方で、身体には細菌をはじめ異物を外に出す機能・免疫が備わっています。人によってはグルテンの大きい分子が反応してしまうことがあり、さまざまな不調があらわれる、といったことがあります。
疲れやすくなったり、頭痛が起きやすくなったり、太りやすくなったり。さらには老化も進みやすくなるというから見逃せません。しかも、グルテンによる不調はタイムラグがあるので、「本当にパンが理由なの?」となってしまうことも。
腸を荒らしやすいので、「パンって健康的にどうなの?」と聞かれたときには、控えめがベターだよ、とお伝えしています。腸はトラブルを起こすと回復するのに時間がかかるケースが多いので。
いつまでもパンをおいしく食べるために
「もしかしたら自分も」と感じるなら、ぜひ試して欲しいのが、小麦製品を2〜3週間ほど抜いてみること。
小麦はパンや麺類、クッキーなどの焼き菓子のほか、揚げ物の衣、餃子の皮、しょうゆや味噌にも少量ですが含まれています。だるさが取れた、肌がきれいになった、朝の寝覚めがよくなった、頭痛や肩こりがやわらいだ、などの変化が起こったなら、もしかしたらグルテンが悪さをしていた可能性も考えられます。
乳製品に含まれるカゼインも一緒に抜いてみるのもおすすめ。カゼインもタンパク質の一種ですが、グルテン同様、腸を荒らしやすいことがわかっています。
コツは一度きっちり抜くこと。少々しんどいですが「控えめに」程度だと、腸の中を少なからずグルテンが通過している状態なので、見極めることが難しくなります。
経験上、「そんなの無理に決まってんじゃん!(怒)」という人ほど、グルテンカゼインの影響を受けている傾向にあるなあと感じます。実際、抜いてもらうと、「わたしって本当はこんなに調子がいいんだ」と180度違うコメントがかえってくることも少なくありません。「苦節○年、何をやってもお腹の調子がよくならなかったのに……」という人も。
ちなみに。世界的テニスプレイヤーのジョコビッチもグルテンフリー食に切り替えたら、試合に勝てるようになったというから見逃せません。
影響を受けていることを知ってパンと付き合うのと、そうでないのとでは、自分の体調が大きく変わってきます。ご機嫌もしかり。いつもだるかったり、お腹の調子が悪い状態では、気分も下がってしまうものです。
わたしの場合は「今日はパンを食べよう」と意識して食べています。逆に気づけば口にパンを入れていた、と無自覚でいるのはやめています。だから、食べると決めた日は気になっていたお店のパンをチョイス。おいしさをしっかり楽しみます。このぐらいの距離感がわたしには合っているようです。
好きなのに、行き過ぎると身体にダメージを与える可能性もあるというのはなんとも皮肉なもの。身体に拒絶されて好きなものが食べられなくなることは本当につらいこと。
いつもおいしく食べたいからこそ、無自覚にべったりの関係でいるのではなく、自覚しながらいい関係をキープしたいと思っているところです。あ、これ、人づきあいも一緒かも。
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