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【感想文】カラマーゾフの兄弟(上巻)/ドストエフスキー

『3番、ショート、大審問官くん。』

高校球児の憧れ、春のセンバツ開催がまもなくであり、今年も各地から強豪校が甲子園に集結して熱戦を繰り広げるであろうと思われる。

そこで今回、2022年春のセンバツ高校野球大会において最注目のロシア枠、『私立・カラマーゾフ高校』のオーダー表を極秘入手したこの私が、その詳細をいち早く御覧に入れよう。

【カラ高のオーダー表・打線】
1(中):スメルジャコフ
2(捕):イワン・カラマーゾフ
3(遊):大審問官
4(二):ドミートリー・カラマーゾフ
5(右):フョードル・カラマーゾフ
6(三):ホフラコワ夫人
7(二):グルーシェニカ
8(一):リーズ
9(投):アレクセイ・カラマーゾフ
 代打:カテリーナ・イワノーヴナ
 抑え:フェチュコーウィチ
 監督:ゾシマ長老

【解説】
まず、トップバッターをつとめるスメルジャコフは、<<最前線の肉弾>>(※第1部第3編第8節) なので先頭打者としてはうってつけの切り込み隊長であり、機動力のある彼なら、2番・イワンの巧みな送りバントあるいは犠牲フライで安々と歩を進めるだろう。だがこの2名、自打球じだきゅうが多いのが課題である。

そして本大会注目の3番・大審問官だいしんもんかん
おそらく彼がバッターボックスに立つやいなや、相手ピッチャーは彼の威圧感におののいて、タイムリーヒットを許すことになるだろう。
よって、ここまで述べた1番~3番打者はこれぞまさしく <<超ウルトラモンタニズム>>(※第1部第2編第5節) な超強力打線といえ、この3名、今季ドラフトの目玉である。ただ、それぞれ自己主張が激しくそれが仇となりチームの輪を乱すことになるかもしれない。

4番ドミートリーは、心にマドンナとソドムの理想を燃やす矛盾に満ちたカラマーゾフ的バッターである(※第1部第3編第3節)。この気性の荒いお祭り男は、走攻守を兼ね揃えたスラッガーでありゲームを作る動きをするに違いない。5番フョードルも彼に負けず劣らず、55歳のロートルでありながらも、まだまだ俺は現役を続行してやるんだと意気込んでいた(※第2部第4編第2節)。あと、彼はデッドボールとクロスプレーで故障しやすいのが欠点である。

6番ホフラコワ夫人。
実はこのおばはん、かなりの存在感を持つ強打者である。
が、ゲーム序盤(=上巻)では調子が上がらない傾向がみられる。
※彼女の実力はゲーム中盤「中巻,第3部第8編第3節」で存分に発揮される。

7番〜9番の下位打線に関しては、殊更な説明は割愛するが、しいて言うなら、8番リーズはチームメイトのホフラコワ夫人をもしのぐ一発を秘めた、いわゆる「恐怖の8番バッター」であり、病的かつ気まぐれなその性格は、ゾシマ監督に言わせれば <<おちゃっぴい>>(※第1部第2編第4節) な野球部のムードメーカーだという。

代打といえば、やはりカテリーナ・イワノーヴナであろう。
彼女は序盤では <<気位の高い、事実また品行方正な女性>>(※第1部第3編第4節) って感じのベンチウォーマーだが、このパワーヒッターは、センバツ決勝戦9回裏ツーアウト満塁の状況から突如現れて「代打逆転サヨナラ満塁決勝ホームラン」を甲子園球場バックスクリーンに叩き込むような気がする。
※彼女のサヨナラ満塁弾は「下巻,第4部第12編第5節」参照。

また、カテリーナが「代打の神様」ならフェチュコーウィチは「抑えの切り札」といったところであろうか。
※彼の名投球は「下巻,第4部第12編第10節」参照。

ここで、カラ高の守備に目を向けてみよう。
なんとこのチームには2塁手が2名いることに気付く(グルーシェニカ&ドミートリー)。そのため左翼をカバーできる野手が誰もおらず常にガラ空き状態であり、とすれば対戦相手のバッターはレフト方向を狙えば楽々とヒットできそうにもみえるが、ピッチャーのアレクセイがそうはさせない。
なぜなら、彼はピッチャーでありながら左翼も完璧にカバーできるからだそうで、なんでそんな二刀流が成立するのか俺にはよく分からんが、どうやら彼の内に秘めたるキリスト教&社会主義的なマジカルパワーによって恐るべき左翼手に変身するらしい。もしこれが真実だとすれば、球界を揺るがす一大革命となるかもしれない(※第1部第2編第5節)。ただし、マジカルパワーの考案者が死没したためその原理は未だに解明されていないという。

とまあこんなイカレタ野郎どもを適切に指導できる監督はゾシマしかいない。それでは、Dixie(※第2部第5編第5節)。

といったことを考えながら、『次回このパターン使って書いたら殺すからそのつもりで。』という幻聴に私は悩まされている。

以上

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