「あなたを操縦してきた。つもり」ヒスイの毎週ショートショートnote
夏のはじめ、主従が埃っぽい道をゆく。馬のくつわを取っている小者がつぶやく。
「そろそろスルガの動きが…」
馬上のあるじは秀麗な顔をむっとさせ、
「とっくに陣触れの支度をさしとるわ!ほっとけ、子ザルめ」
8年後。主従は山城のふもとを歩いている。小者がつぶやく。
「都の秋はさぞ見事……」
「紅葉に用は、にゃーわ!進軍するわ!」
さらに14年後。あるじは都に、小者は軍をひきいて備中にあった。
暗い夜に密使が捕まる。密使の口から、あるじの死が伝わった。
小者はぼうぜんとする。