「ノスタルジア・モンブラン」ヒスイの毎週ショートショートnote
「ガキの頃のモンブランって、黄色だったよなあ。俺、あれが嫌いでさ」
俺がそう言うと、彼女はカフェテーブルの向こうで小さく首をかしげた。
「そうだったかしら?」
「言っただろ、あの色が漬け物みたいで、どうしても我慢できなかったって」
「…そうだったかしら?」
「なんだよお、きみは俺の言うことを全然聞いていないんだな。これから結婚めざして、1日でも早く一緒におやじの借金を返そうって約束したのに」
彼女が立ち上がった。カバンを持っている。
「おい、何なんだよ?」
「帰るのよ、そし