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世界は、肉球よりも、丸い。【きりこについて/西加奈子】

今私はとっても不安です。
この本の節々からにじみ出る深すぎるメッセージを、ひとつとして溢さずこの記事にしたためることができるのか。

西加奈子さんが書いた本だからと、なんとなく手に取ったこの本がここま私に衝動的の記事を書かせるとは思ってもみませんでした。

この本は簡単に言うと、
現代の容姿への考え方に対して疑問を投げかける一冊です。

幼いころは容姿とか関係なかった。それがだんだんと変わってしまう。
かわいい(とされる)子ほどもてはやされ、ぶす(とされる子)はさげすまれるように。この本では、その変換期が事細かに記されています。

今は容姿の多様性や自己表現の自由さについて声を上げる人が多く、それを許容する風潮が強くなってきたと思います。

そんな発信者の方々を見て、失った自分への自信をまた思い出す人も多いのではないでしょうか。

周りとの違いや自分はぶすなのかもしれないと薄々感じている人、
自分をぶすと信じて疑わない人、
自分がぶすであることを理由に好きな服を着れない人、
そんな世界の見方しかできなくなってしまった自己表現ができなくなりつつある若い世代の方には、ぜひこの本を手に取ってほしいと思います。

さらに、長らく自分への自信を忘れ、さらに昔は自信満々だったことも忘れ、それを忘れたということすら忘れてしまった多くの大人たちも。

ぜひ、きりこの考え方と生き様に触れてほしい。

それから、きりこともう1人の重要な登場人物であるラムセス2世(猫)。

猫がいかにありのままで生きているか、人間はいかに猫とはかけはなれた愚かな考え方をしているか、さらに、『世界は、肉球よりも、丸い。』ということを教えてくれます。

ラムセス2世は可愛いと言われることを嫌い、賢いと言われることを好みます。猫は本当はとっても賢いみたいです。猫にわからないことはなくて、ただ1つわからないことは何でわかるのかだけ。

人間は人と比較して評価するという習性を持ち合わせています。(猫にはありません。)どうしても余計なことを考えてしまう生き物みたいですね。

猫みたいに余計なことを考えなければ辛い思いをすることもないのかもしれません。猫って生物の最終形態なのでしょうか。

作中で、きりこは容姿のことを”容れ物”と表現しました。多くの人が”容れ物”にとらわれて身動きがとれなくなってしまっているようです。この容れ物という表現すごくしっくりきます。

自分のしたいことを叶えてあげられるのは自分しかおらん、ときりこは言います。

容れ物にとらわれると、
ぶすだからこんな自分がかわいい服を着ちゃいけないとか、太っているから足を出しちゃいけないとか、自分のしたいことが叶えられなくなるのではないでしょうか。

それをしていいかどうかは周りが認めるのではなく自分が認めることなのです。


この本を読み終えて、とにかくこの本はもっともっとたくさんの人に読んで欲しいと思いました。教科書に載せればいいのにとも思ってしまいます。小中学生にもかなり響く内容だと思うので。

長くなってしまいましたが、『きりこについて』に少しでも興味をもっていただけたらと思います。

みんながきりこの考え方や生き方に触れて、忘れたことを思い出してくれれば、本当の意味で”世界が肉球よりも丸くなる”と思います。

本日もよい一日を!


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