空想お散歩紀行 有害図書館
東京都のどこか、それは地下にあった。
何重もの分厚い扉のその向こうにある部屋。
そこは牢獄だ。
しかし、そこに入れられるのは人間ではない。
その牢獄となっているスペースに並べられているのは数えきれないほどの本棚。
ここは牢獄ではあるが、正確な名前は有害図書封印図書館と言う。
日本全国の書店。ビル型の書店から、個人経営の田舎の本屋まで、いつの間にか商品棚の中に見知らぬ本が並んでいることがある。
誰がそれを行っているのか、何十年、いや歴史的にはもっと古くからそれは行われていたが、いまだ判明していない。
何か一つの意志を受け継いでいる人間がいるのか、はたまた悪魔のような人外の仕業か。
とにかく世の中にいつの間にか入り込んでいる謎の本を手にし、読んだ人間には必ず災いが起こる。
それを防ぐために、表社会には決して公表せず、秘密裏に有害図書指定本を回収、封印する者たちがいる。
それらの本の処分方法もいまだ明らかになっていない。
明らかに見た目は紙の本なのに、焼くことも切り破ることもできないのだ。
だから、対処療法として封印するしかないのが現状だ。
今日も、東京の地下に新たに本棚が増えていく。
しかもどこからか悪い噂も流れてきている。
電子書籍の中からも災いを受けた人間が出始めているとの話だ。
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