見出し画像

空想お散歩紀行 理想の見た目を手に入れるために

自分の見た目を気にするということは、少なくとも誰もが一度は通る道である。
そしてそれは大抵自分の容姿に対する不満が大半だ。
もっと目が大きかったら、もっと鼻が小さかったら、もっと胸が大きかったら・・・
見た目を変えることができれば全てが良い方向に動き出すはずだと信じて、今日も鏡の前でそこに映っていない自分を想像している人は大勢いる。
そして、その願望を叶える方法の一つが整形という手段である。
比較的理想の容姿を手に入れるのに近道である整形は若者から大人まで幅広い人が興味を持っている。
しかし、それに継承を鳴らす人も多い。
技術は日々進歩しているとは言え、体に負担が掛かるのは避けられない。あまり若いうちから整形をするのは身体的によろしくないという考えの人や、単に親からもらった体をいじくることに拒否感を覚える人たちなどが整形に対して難色を示している。
「私は正直、整形というものには反対なんです」
とある討論系番組。様々なテーマで議論を交わすその番組のテーマはまさに、若者の整形に関してだった。
「確かに手軽に自分の見た目を変えることで自信を手に入れることはできますが、多くの場合それで満足することはなく、もっともっとと歯止めが効かなくなるケースが多いのです」
中年の、いかにも伝統や歴史というものに価値観を置いていそうな見た目の男性が最近の若者たちに苦言を呈している。
彼が座っているその対面には、今どきの若者代表として、ファッション誌でモデルをしている若い女性が難しい顔で男性を見ていた。
「でも、今は整形するのは別に珍しいことじゃないんですよ。自分の体をどうするかは自分で決めるべきで、周りがとやかく言うのはおかしいと思う」
片や、昔から伝えられてきた価値観。片や、今この瞬間の流行。得てしてこういう討論系番組は、噛み合わない価値観と並行する議論がお決まりだが、この番組もその形から外れることは無かった。
「だいたい、自分の体をいじって変えて得られた自信なんて、本物の自信じゃない」
「じゃあ、本物の自信って何なんですか?」
次第に熱を帯びてくる議論、と言うより言葉のぶつけ合い。
「今はいいかもしれないが、将来後悔したらどうするんだ?もう元には戻せないかもしれないんだぞ」
「そんなの分からないじゃないですか?」
「本当にそう言えるのか?その耳がいい証拠ではないか」
男が軽く指で差した先には、モデルの女性の耳があった。その耳はわずかに上に向かって長く、そして尖っていた。
「普通のヒューマンがエルフの耳にしても不自然だとは思わないのかね?」
「かわいいと自分で思えればいいと思います」
昔から整形に関する議論は終わることはないが、近年特に話題になっているのが、『異種族整形』である。
そのモデルの女性はヒューマンでありながら、耳をエルフのような形に整形していた。
エルフ耳にするのは整形の中ではオーソドックスなもので、他にはオーガの角、ワーウルフの牙、サキュバスの尻尾などを整形で作る人が巷で流行っていた。
一番整形しているのは、見た目的にそれほど特徴のないヒューマンだが、他種族がヒューマンの姿に憧れて整形するパターンも多い。
逆に耳を短くするエルフや、ヒゲを脱毛するドワーフなどがそれだ。
だが、中には有翼の種族が翼を取ってしまい、後になって後悔するという例も近年増えてきているという話もある。
「結局、自信というものは、どういう人生を歩んできたかという心からでしか得られないと私は思う」
「そういうのって単なる根性論でもう古いと思いますよ」
おそらくこの議論がどこかで落ち着くということはないだろう。このまま熱を持ったまま時間切れになる。視聴者の誰もがそう思っていた。
見た目に関する話題はいつの時代も変わらない。今はそれが種族の壁すら越えて繰り広げられているということだ。

その他の物語
https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

この記事が参加している募集

私の作品紹介

つくってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?