空想お散歩紀行 ヒトとケモノのライン
人類は常に空に輝く星に夢を馳せていた。
あそこには何があるのだろうと、どれだけ手を伸ばしても届かない場所へ、想いは止まることはなかった。
そして長い年月を掛けて、この度ついに火星にその足をつけることになった。
初めて月に降り立ってから、どれほどの月日が流れただろうか、人類にとって大きな二歩目である。
地球という星の中で人々は生きてきた。母なる地球という言葉が使われて久しいが、人類は着実に親離れをしつつある。
新たなる可能性、未知の領域に向けて、これからも人類の歩みはゆっくりではあるかもしれないが、決して止まることはないだろう。
「では、本日の議題ですが・・・」
宇宙は、人類の想像がどれだけちっぽけなものか、いとも簡単にあざ笑う。宇宙の広さなど誰も分からない。となれば当然そこに、別の生命があっても何も不思議ではない。
「チキュー人の生息域の拡大の対策についてです」
会議室には各星々から集まった10名が席についていた。見た目はバラバラ、中には容器に入った液体にしか見えない者もいるが、全員ちゃんと意思疎通はできている。
「チキュー人たちは、この度現地語で言うところのカセイという惑星までその足を伸ばし、着実にその生息圏域は広がっています」
「彼らの本意は、単なる知的好奇心ということでよいのかね?」
「今のところはそうだが、当然資源にも目を向けているだろうな」
「一応技術力は持っているようだが、それでもレベル3程度だろう」
「うむ、宇宙に進出する傍ら、星内ではいくつもの勢力に分かれ、未だに争いが絶えないらしい。惑星統一すらできない水準だ」
各々が自分たちの意見を出し合う。今回、彼らが集まったのは、地球人がその活動範囲を広げていることについてどう対処するかという話し合いをするためだ。
宇宙は広大と言っても無限ではない。当然その資源も限られている。彼らは宇宙を統治する者として常にあらゆる星々の様子を見ていた。
「とりあえず、太陽系の第6惑星あたりまでは様子を見てもいいのではないか?それ以上外に出てくるようなら、その時また考えればいい」
「そうだな。その時点でレベル7まで達していれば迎え入れる。それ未満なら、我々や我々に属する星系の害になる可能性の方が高い」
「その時は駆除もやむを得まい。我々と害獣の生活圏はしっかりと分けるべきだ」
「では、今回の会議はここまでとします。次回は2チクタク後に」
人類は着実に宇宙へ、憧れと希望を持ってその手の届く範囲を広げている。
だがそれは、遠い遠い彼方から見れば、動物がエサ場を広げている様子として処理されていた。
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