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空想お散歩紀行 みんなの力で作る平和

1000年続く平和な魔法国家があった。
そこには「賢者の石」と呼ばれる物があった。
だが、その形状や色などは一般の国民は知らず、極一部の者だけが詳細を知っている。
人々が知っているのは、賢者の石には何かの意志のようなものが宿っており、それが未来を予知し、人々に適切な助言を与えてくれるというものだ。
その助言に従ってきたので、長い時代この国は平和を保ってきたのだった。
国民たちは産まれたときから一人一人、賢者の石の助言を受けながら生きていく。
1000年その慣習が続いて来たので、誰もそれに疑問を持っていない。なぜなら国民が皆それで平和で安息な日々を生きているからだ。
仕事もそれぞれに適したものが割り振られている。
ある人々は農業を行い、皆のための食糧を作る。
またある人々は鉱山へと赴き、そこにある鉱石を採ってくる。その石は魔力を秘めた魔法石で、国の魔法使いたちにとって欠かせない物だ。
魔法石は鍛冶師や祈禱師たちによって細工され、様々な魔法を使うための道具となる。
魔法の素養を持っている者たちはそれぞれに一番得意な種類の魔法を使って仕事をする。
火や水を操るもの、力の流れを増幅させるもの、一つの魔力を別の魔力へと変換させるもの等々、多岐に渡る。
また、魔法だけでは国は成り立たない。様々なカラクリもまた、国を支えるためには必要である。
これも手先が器用で細かな作業が得意な者から、頭脳労働が得意な者まで、皆がそれぞれの役割をこなしている。
彼らは自分の仕事に誇りを持ち、充実感を持って働いていた。
そして、彼らが作った魔導具やカラクリたちは一つに集められ組み上げられる。
それを行っているのは、賢者の石が直接命令を下す人造機械人間のゴーレムたちだ。
普通の人間たちにはその作業は危険なので、人間の力に依らない労力によって作業が行われている。
国民たちはそうやって出来た製品が国外へと運ばれて使われていると、そう信じていた。
とある夜、国中の人々が眠りに落ちている時間。
国の中央にある賢者の石が保管されている塔の頭頂部から、一本の巨大な槍のような物が天を衝くように出現した。
それは、国民たちが作ったカラクリに魔法術式が組み込まれた物だった。
少しの静寂の後、その巨大な槍の先端に光が集まりだしたように見えた次の瞬間、それはまるで、地上から空へと放たれる稲妻のように夜を引き裂いて天へと昇って行った。
長距離殲滅雷撃魔法兵器『グングニル』
一度に一発限定のこの兵器を国民たちは作っていた。だがそれを知る者はいない。
この夜、国から遠く離れた一つの街が消え去った。世界を1000年支配する魔法帝国に反旗を翻そうとレジスタンスたちが集まっていた街だった。
賢者の石は国を護る。他の全てを支配しながら。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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