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都市木造への考察⑧ Wood Archipelago|海に住まう作法


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「建設すればするほど、自然を拡張する」新たな都市開発手法
インドネシアは、⼈⼝増加と経済成⻑の渦中にある。それに伴う社会問題・環境問題は過去に同じ島国である日本の都市開発の系譜と類似しており、自然との距離を遠ざけ、「つくればつくるほど、環境を破壊する」という、従来型の開発手法による経済活動が前提となっていると言える。本提案(ケーススタディ)においては、このような社会課題を念頭に、熱帯気候に位置する多島国家・海洋国家という気候的、地勢的特徴を生かした独自の解決法として筆者が構想するものである。

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Wood Archipelago|海に住まう作法
インドネシア周辺の遠浅の海に、多孔質な⽊陸地を構築する。これは酸素、養分、菌のうちどれか1つと触れ合わなければ腐食しないという木材の特性に着目したもので、「水中では木材は腐らない(にくい)」という従来の「貯木場」の在り方から発想を得たものである。

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⽊造の⼩さなユニットで作られた陸地は、⽔と空気が交錯しながらお互いの連続性を阻害せず、複雑で豊かな環境を作り出す。木の構造体は無酸素状態で海中に保存され、多量の炭素を海中に固定しながら、集まった⽣物たちの活動をまるでマングローブのように許容する生態域を構築する。

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図4 単純なジオメトリの連続による多様な生育空間

本⼟で営まれてきた⼤規模な農場は「Wood Archipelago」により生まれた海上の新たな陸地に移⾏し、原生林を保存しながら持続可能な発展を続ける。

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図5 「作れば作るほど、新しい大地を増殖する」都市基盤として

インドネシア諸島をつなぐ小さな島々の連なり:Wood Archipelagoは、人と自然のつながりを守りながら、地球上の全生命の生育と共生を未来へとつないでいく社会基盤として根付いていく。

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(文:大庭拓也)(協働制作:木下皓之)






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