見出し画像

危険な脳のダメージ4 子どもの脳の脆弱性

「子どもは大人のミニチュアではない」

これは子どもの命や健康を考える上で忘れてはならない格言です。大人はつい、子どもを「大人の小さいの」と考えがちですが、身体と心を知れば知るほど、「子どもと大人は全く違う生き物」です。

早速、頭蓋骨の内側を画像で覗いてみましょう。

1:大人の脳、子どもの脳


AとB、2つの脳のMRI画像。片方は10代(子ども)の脳、もう片方は60代(おとな)の脳です。

さて、どちらがどちらの脳でしょう?

A

B

こたえは上Aが10代、下Bが60代です。

 このMRIはT2強調画像といって「液体が白く映る」撮影モードです。上の10代の画像は、下の60代のそれと比較して、白く映る液体(脳脊髄液・のうせきずいえき)のスペースが少ないのがわかると思います。

これは「10代のほうが60代よりも脳の実質が密である」ことを示しています。わかりやすい表現にするならば「子どもは脳みそがギッシリ詰まっている」ということになるでしょう。


2:脳が大きくなる途中

では、なぜ子どもの脳は「密」なのでしょうか?それは子どもの脳がどんどん成長して、物理的にも大きくなる、その途中だからです。

子どもは、

脳が物理的に大きくなり→頭蓋内の圧が高まり→その圧に押される形で頭蓋骨が大きくなる

ここが物理的な面における大人との大きな違いです。大人は脳機能が向上することはあっても、脳が大きくなることも、頭蓋骨が大きくなることはありません。

子どもは骨がまだ軟らかく未完成だから、頭部が大きくなるんですね。

人間の全身の骨が完全に出来あがるのは20歳前後ですから、子どもであればあるほど、頭蓋骨は薄く物理的に脆弱で、陥没骨折しやすいという特徴があります。

3:子どもの血管は非常に細い

では、脳につながる血管はどうでしょうか?

大人に比べて、子どもの血管径は非常に細いです。身体の成長と共に、血管は長く、太くなっていきます。

細いということは・・・物理的に弱いことになります。

大人に比べて子どもの脳の血管は細く、弱く、切れやすいという特徴を知っておく必要があります。

柔道などの投げ技で超高速で投げられて、脳が揺さぶられて血管が破綻するケースも報告されていますので、  「ぶつける」はもちろん、「高速で揺らされる」のも危険であるという認識が必要です。


4:小児の頭部外傷

国民生活センターが「小児の頭部外傷の実態とその予防対策」にて、
「小児が頭部外傷を起こしやすい理由」を挙げています。

小児が頭部外傷をおこしやすい理由
• 頭部が大きく重心が上方にあるため転倒しやすい
• 身長が低いため視線が低く、相対的に視野が狭い
• 興味の対象に関心が集中し、全体を見ることや、とっさの状 況判断や危険予知能力が乏しい
•位置感覚把握能力が未熟である
• 腕力が弱く、危険回避動作が遅れる

国民生活センター 小児の頭部外傷の実態とその予防対策より

「転んだ時に手をついて脳や身体を守る」
「それまでの経験から予測したり判断する」
「冷静になって俯瞰する」

などの大人には簡単なことが、子どもにとって困難なのです。(長い期間をかけて適切な負荷のもとそれを学んでいくわけですから)

 これらからも「子どもが自分で自分を守るのは困難である」ことがわかります。子どもを守るのは大人たちの責務といえるでしょう。

 スポーツ安全指導推進機構では、スポーツやパフォーマンスに必要な医学知識を共有し、安全意識の高い指導者・責任者の「見える化」を進めています。ひとりでも多くの人たちが安心してパフォーマンスの向上に取り組めますように。 
          スポーツ安全指導推進機構代表 医師 二重作 拓也


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?