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#読書

グレゴワール・シャマユー著『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』

グレゴワール・シャマユー著『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』

ドローンを用いた戦争による死倫理学についての哲学的探究.非常に面白い.建築民には,Forensic Architectureのエイヤル・ワイツマンの言説の参照が複数ある点も見所かも.

本書が扱うのは,「武器を装備した飛行型ドローン=ハンター・キラー」について.
その技術を〈持つ者〉と〈持たざる者〉に分断してしまったことで,これまで戦争が暗黙裡に相互承認していた“殺しあうがゆえに”無罪化されていた

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『ウェルビーイングの設計論ー人がよりよく生きるための情報技術』

『ウェルビーイングの設計論ー人がよりよく生きるための情報技術』

ラファエル・A・カルヴォ/ドリアン・ピーターズ著、渡邊淳司/ドミニク・チェン監訳『ウェルビーイングの設計論ー人がよりよく生きるための情報技術』通読.

ウェルビーイングとは何なのか?原題の通り,ベースにはデジタル・テクノロジーにおけるポジティブ・コンピューティング――心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーのデザインおよび開発(p.13)――があるが,題材的には広く一般に理解できる

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『nyx 第五号』

『nyx 第五号』

〈聖なるもの〉とは何か『nyx第五号』通読.第一特集の聖なるものがお目当て.
〈聖なるもの〉という概念は,神秘的なものや超越的なもの,あるいは言語化不可能なものを,内容を十分に分別することなく投げ入れる「ゴミ箱概念」(p.8)として便利に利用されている節がある.
それに対して〈聖なるもの〉と何か,その可能性と限界について様々な方が議論している.

佐々木雄大氏は〈聖なるもの〉がなぜそのように使われ

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カトリーヌ・マラブー著『新たなる傷つきし者――フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える』

カトリーヌ・マラブー著『新たなる傷つきし者――フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える』

<可塑性>というキーワードを展開し,<可傷性>や<不安定性>を提示するジュディス・バトラーとも近いテーマを取り扱っている哲学者カトリーヌ・マラブーの著書.この<可塑性>を取り巻く概念が興味深い.

「新しい傷つきし者」とはまず,「新しい傷つきし者」を彼女は次のように定義している.

(…)さまざまな脳疾患や脳損傷の被害者のことである。頭部の外傷、腫瘍、脳炎、髄膜脳炎等々の神経変性疾患の患者、パーキ

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【2018年の読本リスト&ベスト5】

【2018年の読本リスト&ベスト5】

【2018年の読本リスト&ベスト5】
1年を振り返って読んだ本を.今年は1級建築士の勉強にだいぶ時間を割いたため,去年より少なめ.

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◆ベスト5
何かしら内容が思考に響いたものをリストアップ.21世紀の建築において,不安定性precarityがテーマになりうる.
・『我々は人間なのか?』ビアトリス・コロミーナ、マーク・ウィグリー著
・『アセンブリ 行為遂行性・複数性・政治』ジュディス・

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【2017年の読書リストと個人的BEST5】

【2017年の読書リストと個人的BEST5】

【2017年の読書リストと個人的BEST5】
今年もあと僅か。習慣化している読書をこれまであまり振り返ったことが無かったので、周りの方々を見習ってやってみる。
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◆BEST5

内容が響いたものをリストアップ。具体的な理由は直接聞いてください。笑 ちなみに順不同です。
・『コスモポリタニズム』デヴィッド・ハーヴェイ著
・『勉強の哲学』千葉雅也著
・『時がつくる建築』加藤耕一著
・『サピエ

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アルド・ロッシ著『都市の建築』

アルド・ロッシ著『都市の建築』

最近、改めて建築の在り方について考えていて、思い至った一つの解答として<都市の建築>が適切なのではないかと考えた次第。
そこで同じワードを表題としてる40年ぐらい前の本、アルド・ロッシ著『都市の建築』を読んでみる。
※ちなみに、ここでいう<都市>とは国家―資本―都市という三権分立構造における都市であって、ものすごくざっくりいうと人間のための拠点です。

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『都市の建築』アルド・

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國分功一郎著『中動態の世界』

國分功一郎著『中動態の世界』

議論を明確にするために何ごとも二項対立関係に還元しがちな世の中ですが、その只中において中動態の存在を詳らかにする名著です。生きるのが大変だと思う人には一種のカウンセリングみたいになるかもしれません(出版も医学書院です)。

『中動態の世界 意志と責任の考古学』國分功一郎著

ふだん当たり前のように認識している能動―受動という関係性だが(特に英語を学習するときはこれがベースになるといっても過言ではな

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