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匿名希望のアンケート

 今回はアンケートの「匿名性」について記事を残しておこうと思う。結論からお伝えすると、個人の詳細な属性を拾うと思えば思うほどに、アンケートの回答率は著しく下がっていくよ、という簡単なメッセージだ。

 どうしてこんな記事を作ろうと思ったかというと、恒例の如くアンケート依頼が届いたので開いてみたところ、そこには驚愕の必須項目が設定されていた。

氏名*
メールアドレス*
年齢*
年収*

*は必須項目

氏名必須

 そもそもアンケートは不特定多数に対して無数にコピペして配布するからこそ、その価値があるものだ。誰が回答したのかどうかは正直なところ、関係がない。アンケートの回答主の名前が「山歌 和人」であっても、「柑密 好大」であっても、「中本 卓利」であっても、アンケートの結果に何一つ影響を及ぼさない。

にも関わらず「名前を提供せよ!」なんて風に人に迫ってしまと、「何故にッ!何故に見ず知らぬの貴様なんぞに名前を渡さねばならんのだ!さては千と千尋の湯婆婆のように名前を奪うつもりだなっ!?」と疑われアンケート画面は勢いよく閉じられてしまうことだ。

メールアドレス必須

 メールアドレスを取りたい気持ちは痛いほど分かる。アンケート結果を読み直した時に「この人は自分が想定した課題を持っているペルソナそのものだ!もっとお話を聞いてみたい!」という気持ちになることもあるし「おや、この回答の真意はちょっと図りかねる」という気持ちになることもあるだろう。必ずと言っていいほど、連絡を取りたい気持ちに駆られてしまう。

 ただ、アンケートを回答する側の気持ちになってみて欲しい。「全く見ず知らぬの良く分からない人に、どうして自分と繋がる手段を相手に手渡さなければならないのだろう?」といった風に怪訝に思われアンケートはそっと画面上から消されてしまう確率が高い。

年齢必須

 アイデアを検証する上で、確かに年齢は必要なことがある。そのPainを持っている人はいったいどんな人なのか、そのSoluitionが突き刺さる人はいったいどんな人なのか、その姿を明らかにする上で役立つケースがあるからだ。

 けれどもこれも聞かれた側に回ってみよう。匿名回答といえども年齢を明かしたくない人は多い。女性に年齢を聞くのは失礼であるのと同じように、男性側も年齢を聞かれるとネガティブな感情を抱いてしまう人は一定数いる。センシティブなところには触れないようにしよう。

年収必須

 そもそも、年収はアイデアをカタチにする上で(仮説検証する上で)聞く必要はないのでは?と思いつつも、もちろんこれもアンケート回答率が下がるアイテムの一つだ。自分の年収を見知らぬ誰かに伝えたい気持ちを誰が持っていようか。もし仮にアンケートで答えてくれる稀有な皆様がいたとしても、本人の年収よりも「上振れして」申告される可能性が高い。

 例えば年収400万であれば500万で申告、500万であれば600万で申告するイメージだ。「もっと残業したら、これぐらい到達するに違いないし」「流行り病以降は出張が減って、手当がなくなったから減ってるだけだし」みたいな風にして、なんやかんや心の中で言い訳をつけて、人は自分をより良く見せようとしてしまう。故に、そもそも必須を推奨しない以前に項目として推奨しない。

続きはインタビューで

 最初から全ての項目を必須して情報を取ろうとすると、アンケート主に対する不信感が主に働き回答率は著しく下がる。もしどうしても、回答に対して深掘りして調査をしたいと考えるのであれば、アンケートの最後に連絡先を求める項目を一つだけ追加しておこう。もちろん任意項目で

より詳細なヒアリングにご協力くださる場合、連絡先を記載ください

(ニュアンスはアンケート毎に変わるかと思うので一例として)

 覚えておこう。人は自分の情報を手渡したくない生き物だ。自分のことを詮索されたくない生き物だ。自分のことをより良く見せたい生き物だ。だからこそ、アンケートでより高い回答率を求めるのであれば、仮説検証に関係のない項目は出来る限り「必須ではなく任意」として進めていこう。

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