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書籍にも問いの力を

 中本がファシリテーターや講師として前に立つとき、必ず質問を投げかけることから始めている。「顧客って、そもそもどんな人でしょうか?」といった具合に。そして一人一人、もしくはチームで考えてもらい、その後に中本が用意した答え(らしきもの)をお伝えし、具体的なエピソードを盛り込みつつ解説を進める。

 この一連の流れは人に話をする時だけに有効だと思っていたけれども、書籍を作るにあたってご相談させていただいた方から「書籍の構成も、タクトさんが講師として話す時と全く同じですよ」と伝えられ、目から鱗が落ちた。

 というわけで今回は、講義でも書籍でも「問い」がなぜ大事なのかを簡潔に三つのポイントでまとめておこうと思う。

 問いが持つ一つ目の力は、深い思考を促すこと。人は単純に結論だけを伝えられても、なかなか頭に入ってこない。しかし、問いかけられ、それをきっかけにして本気で集中することで理解が深まる。

 例えば、「ミカンの名前を“蔵出しミカン”と名付けて売り出すことで、高値で売れるんです。その理由は…」と説明するよりも「"蔵出しミカン"という商品名を時々見かけませんか?どうしてそんな名前が付いているのでしょうか?」と問いかけから始めると、思考が見事に加速する。

 問いが持つ二つ目の力は、関係性を結ぶこと。人は単純に結論だけを伝えられても、相手が遠い存在に思えてしまう。しかし、問いかけられ、それをきっかけにして交流が始まることで、相手に親近感を覚える。

 例えば、「あなたなら、ミカンにどんな名前を付けますか?」と本の中で著者が問いかけると、読者は自分の知識を総動員して考え、著者との対話が生まれ始める。その結果、読者は著者に対して共感を覚え、読者は受け手ではなく著者の対談相手へと発展を遂げる。

 問いが持つ三つ目の力は、自分事にすること。人は単純に結論だけを伝えられても、知識だけを受け取り他人事に思えてしまう。しかし、問いかけられ、それをきっかけにして自分と関わりがあると感じることで、これは自分のことなんだと思いを強める。

 例えば、「ミカンの名付け手法、あなたの仕事にどう活かせますか?」と本の中で著者が問いかけると、読者は自分の状況を当てはめ、掲げている目標に結び付け、学びを具体的で実践的なものへと昇華する。

 講義であったとしても、書籍であったとしても、問いかけが持つ力は大きい。読者がただ情報を受け取るだけで終わらず、思考を促し、関係を紡ぎ、自分事へと発展を遂げるもの。さぁ、問いの力を活かしていこう!

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