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解釈分岐のアンケート

アンケートは言葉選びが重要、というお話を本日はしてみようと思う。

事の始まり

恒例のフィードバック依頼

こんな風にして中本のところにフィードバック依頼が届くのは日常茶飯事だ。そのフィードバックを手掛ける中で、これは他の人もハマっている可能性があるのでは、と思い当たるものを一つ見つけてしまったので、今回はそれを具体例(もちろんラーメンで例えて)解説していこうと思う。

唐突な問い

 よーし、どんなアンケートなのかな?と思って開いたところ、度肝を抜かれる質問が飛び出してきたのだ。こんな風に。

あなたは「ラーメンを楽しむ時間」で悩んだことはありますか?

いったい何を言ってるんだ…?

もちろん自分の頭の中が「!?」で埋め尽くされたことは言うまでもない。きっとラーメンを食べている最中に関する課題確認を進めようと思っているのかな?と勝手に決め打ちして読み進めてみたところ、次なる問いの強襲が。

あなたは、どのくらいの時間「ラーメンを楽しむ時間」を一食当たりお持ちですか?凡その平均時間を教えてください。

一食当たりのラーメンを楽しむ時間とは…?

もちろん自分の頭の中に「???」が新たに急浮上したことは言うまでもない。必死にない頭を振り絞って、きっとこれは「ラーメンを食す時間」=「ラーメンを楽しむ時間」ということなのかな?と解釈を勝手に加えて読み進めてみることにしたところ、激震が走る。

「ラーメンを楽しむ時間を15分増やすことが出来るラーメン用の食器」に対して、いくらまでなら支払えるか教えてください。

新手の魔法使いか…?

アンケートの真意

 謎が謎を呼ぶストーリー、タイムリープから密室殺人事件まで真っ青になりそうなアンケートの真意を確認してみたところ、実は下記のようなことを確認したいとのことだったのだ。

ラーメン好きが持つ課題感

ラーメンが美味しすぎて、気付けば食べることに夢中になってしまい。ラーメンを出されてから僅か数分で食べ終わってしまい、もっとゆっくり食べたかった、もっとゆっくり味わいたかった、とラーメン好きが後悔していること。次こそはゆっくり食べようと思っても、ラーメンが大好き過ぎて、すぐに食べることから逃げ出せない現状を何とかしたいという想い

ラーメン好きあるある課題

課題感に対する解決策

ラーメンを急いで食べ終わることがないように、ラーメンを掴み辛い箸を開発してみたり、レンゲのサイズを変えてみたり、はたまたラーメンの器そのものを加工することで、「どんなに美味しかったとしてもゆっくり食べざるを得ない状況を作り出す」ことが出来ればラーメン好きにニーズがあるのではないか。

ソリューションの仮説

これを聞いた自分からのツッコミはたった一つで、人によって解釈や理解の異なるアンケートは作ってはいけない、というものだ。

解釈の分岐

 例えば上述の「ラーメンを楽しむ時間」は、人によっては「ラーメンを食べている時間」となるかもしれないし、人によっては「店舗で並んで待っている時間」も含まれるかもしれない、人によっては「次はどのラーメンを食べに行こうかな?」と思案している時間さえも加わるかもしれない。解釈が見事に分岐してしまうのだ。

 コピペで無数の人からフィードバックを回収することが出来るアンケートは確かに有用だ。けれども残念ながらインタビューと異なりインタラクティブではないので、一度作ったアンケートの言葉は独り歩きを始めてしまう。「この質問はいったい何を意図しているんだろう?」なんて風に思われてしまったら、ウィンドウを簡単に閉じられてしまうか、適当に回答されてしまって有益なフィードバックは中々に届かないことだろう。

説明と確認

 もちろんアンケートはSimple is Bestだけれども、それで人の解釈が分岐してしまっては元も子もない。誰でも同じ認識の元に回答を進められるよう丁寧に説明を書き加えていこう。そしてアンケートの叩き台を作成した後は試しに複数名に送付してみて、言葉の認識がきちんと意図した通りになっているかを確認していこう。

 どうか言葉足らずで悲しいアンケート結果を受け取ることが二度と生まれないことを心から願いたい。

追伸

 他にもアンケートTIPSを纏めた記事を手掛けており、下記マガジンの中に格納済みなのでもしよろしければご参考くださいませ。


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