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人の価値を引き出す共感型の事業伴走

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は栃木県宇都宮市を拠点に事業開発支援を手掛ける常川 朋之さん。起業家コミュニティを育てつつ、自身もコーヒー事業を手掛ける背景について伺いました。

── 常川さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

はい!株式会社エンターテインの常川です。ベンチャー支援から大企業の新規事業開発支援まで幅広く手掛けています。


── 事業開発の支援について、具体的にお聞かせいただけますか?

新しく事業を始める入口を、なかなか掴むことが出来ない皆様に対して、これまでベンチャー支援をする中で培った事業創造のコツをお届けしています。


── 入口でのサポート。

多くの場合「新規事業のアイデアが思い付いた!」と入口に立ったような気持ちになるのですが、提供したいソリューションだけの場合が多いんです。ビジネスでは必ずソリューションとセットで必要な課題を見つけるお手伝いをさせていただいています。

講師としても事業作り支援を手掛けられていらっしゃる常川さん


── 課題こそ大切という常川さんの言葉には共感しかありません。どうして常川さんは支援側のお仕事を始められたのですか?

実は元々のキャリアが商工会議所なんです。地域密着型の創業支援として開業届を出すところからサポートさせていただいていました。


── 支えることを人生の軸として持っていらっしゃるんですね。その想いの根源はどちらにありますか?

最初は、支援することがただ好きな人間だと自分のことを思い込んでいたんです。二番手でいたいというか、COOタイプというか(笑)けれども、事業作りを支え続けているうちに、事業を作り出すことこそが人の価値を最大限発揮する手段だと感じ始め、のめり込んでいったんです。


── 人の価値を発揮する事業作り。

やっぱり、人って会社や組織に属していると、「ここまででいいな」といって線引きをして一歩引いちゃうんです。例えば食料が豊富な森に住んでいると、そこで衣食住を確保できれば、敢えて別の山に挑戦する必要もなく、現状維持を続けてしまう。けれども会社や組織を作る側になると、その線を超えていかなくちゃいけない。その過程で人として大きく成長していくところに惹かれました。


── 人を変える事業という観点に心打たれます。そんなプレイヤーの皆様をサポートする支援者側は何を大切にすべきでしょうか?

StartupWeekend(以下SW)の本質とも近いと感じているのですが、必要以上の支援をしないことに尽きると思うんです。


── 必要以上の支援をしない。

人によって事業に取り組む中で成し遂げる成長速度は異なりますし、また経験から得られる気付きや学びも人それぞれ。だからこそ、事業に挑戦されている皆様を注意深く観察して、今この人が考えるべきところを、ちゃんと考えられるような機会を提供するようにしています。

今、相手は何を考えるべきなのか、それを突き詰めて支援される常川さん


── 今この人が最も考えるべきところ。

例えば、事業構想の初期段階でマネタイズを考えたとしても仕方がないですよね。物事が前に進まなくなってしまう。だからこそ、事業を土台から積み上げていけるよう、相手に合わせて何をアドバイスすべきなのかを見定めることが大事。


── 先程のお話の中で触れられたSWについてお伺いさせてください。どうして宇都宮にこのコミュニティを持ち込まれたのでしょうか?

宇都宮に、失敗を恐れない空気を醸し出したかったところが大きいです。やっぱり、日本全国どこでも失敗を忌避する文化があると思うんです。宇都宮は中規模都市なのでまだ良いですが、特に人口が20万人以下とか、町の規模が小さくなればなるほど、人と人との繋がりが近いので、失敗すると恥ずかしいという気持ちが強まっちゃうと思うんです。


── 失敗すると周りに顔向けが出来ない。

実際、私がかつて事業に失敗した時も、中々に恥ずかしくて。商工会議所でキャリアを積んで経営を理解して支える立場でありながら、いざ自分で起業してみると上手くいかなかったんですよね。それはもう周りに顔向け出来なかったですね(笑)けれど、いま私は失敗こそ自分を成長させるチャンスだと思っているんです。


── 失敗こそチャンス。

何かに挑戦してみることで、人は新しい気付き学びを得られることが出来る。先程もお伝えさせていただいた通り、起業は人を大きく飛躍させる。だからこそ、週末でスタートアップにチャレンジして、その中で小さな経験を積み重ねる場が、地元宇都宮にもあって欲しかったんです。


── 実際に宇都宮に持ち込まれてみて、如何でしたか?

実は最初は心配しかなかったんです。誰も参加してくれないんじゃないだろうかと(笑)けれども蓋を開けてみると、満員御礼で会場が埋まり切ってしまうぐらい、挑戦したい人たちに溢れていたんです。保守的な町だと勝手に思い込んでいたんですが、そうではなかった。ちゃんと挑戦者は街の中にいらっしゃったということを証明できて本当に嬉しいです。

挑戦者が集いコミュニティが育ちつつあるStartupWeekend宇都宮


── 常川さんの想いに賛同してくださる方が多かったということですね。

「体験から学びを得る」というコンセプトに共感してくれた皆様には感謝しかないです。オンラインが当たり前になった時代、自分たちは知識をどこからでも得られる。だからこそ、オフラインで同じ経験を分かち合い、ウェットな関係性を築くことの価値がより多くの人に響いているのではないでしょうか。開催を重ねるごとにアントレプレナーを育てる土台が宇都宮で厚くなってきていることを感じています。


── 常川さんの目から見て、コミュニティはどんな価値を持っているとお考えですか?

本来どこにでもあるものを繋ぐ価値を持っていると思うんです。言うなれば「コップ」ですね。


── 人生で初の比喩に度肝を抜かれました(笑)その心は?

例えば水って、どこにでもあるじゃないですか。もし仮に水を撒くと、水はどこかに流れて消えてしまう。けれども水をコップに入れると、その水はコップの中に留まって、形を成すことが出来るんです。そして形を成せば、「コップに入った水」と新しく表現することができて、誰かに認識して貰うこともできる。


── コミュニティとは器である。

もしコミュニティがなければ、人は水と同じように自由勝手に流れていってしまう。けれどもコミュニティがあることで、人は一か所に留まってお互いの熱を交換したり、情報を届け合ったりと価値創造が始まっていく。もうそれはどこにでもあるものじゃなく、ここにしかないものに、に変わるんです。

コミュニティを通じ、ここにしかないものを届け続ける常川さん


── そのコップの水を沸騰させるには、コミュニティの熱量を上げるためには、何が必要でしょうか?

密度を上げること、ですね。居酒屋で飲んでいて、最初にお客様がまばらだと、普段の声でお互いに喋るじゃないですか。けれどもお客様が満員近く入って騒がしくなってくると、一気に声のトーンが上がる瞬間がありますよね?あんなイメージですね。


── 密度はどのようにして上げられるでしょうか?

関係性を構築することが一手じゃないでしょうか。声を掛け合ったり、本音を晒すような機会を設けて、深く濃密な関係を築いてなんでも話せる空気感を作っていく。液体だけにウェットさが大事ですね(笑)ウェットでアナログで地道なもの…ですね。


── 液体での例えが分かりやす過ぎて涙が出そうです。ちなみにコップの中に注ぐ黒い液体、人が愛して止まないコーヒー事業を常川さんは手掛けていらっしゃいますが、どうして支援するだけなくご自身で事業を始められたのでしょうか?

まず最初にコーヒーが大好きだから、ということがありますね(笑)そして勿論、支援する人間として、自分で事業を作る感覚を養うこと、という理由もあります。


── 事業作りの感覚。

例えば、人にユーザーインタビューをしましょう、とアドバイスをした際に、もし自分が一度も経験したことがなければ、肌感覚を持っておらず的を得た表現もできないと考えています。そしてもし三つ目の理由を挙げるなら、抽出という概念が好き、だからですね(笑)


── 抽出好き(笑)

コーヒーって、どうやって豆から成分を取り出して、豆本来が持っている味を引き出すかで勝負が決まるんです。事業作りも同じで、会社という枠組みの中では抽出し切れていない人の価値が引き出されてこそ事業は伸びていく。


── コーヒーと事業作りの本質は同じ。

どちらも最後の一滴まで絞り切らないと勿体ない、ですね(笑)


── 実際にご自身でコーヒー事業を手掛けることで、支援者としてのスタンスに変化は起きましたか?

共感型の支援がより出来るようになったと感じています。料理に例えると、包丁を握れなくても味の評価は出来る。けれどもなかなか良い味を出せない苦労であったり、包丁を握って指を切ったりして苦労した経験があると、「○○って中々に辛いよね」「xxには気を付けなきゃいけないよね」といった風に事業を作られている方と気持ちを一つにして伴走が出来るんです。


── 共感型の支援。

もちろん、共感し過ぎてもダメですが(笑)私たち支援者側が気持ちを完全に同じにしてしまうと、客観的なアドバイスが出来なくなってしまう。ただ一緒になって走る前に、道の先を走っておくことで「こうすれば大丈夫」「こっちの道は危ないかも」と先行きを見せてあげたいなと思うんです。

自らコーヒー事業を手掛けることで、共感型の支援に磨きをかける常川さん


── これまでと逆の質問になるのですが、伴走を受ける側の皆様は何を大事にして走るべきでしょうか?

適性を見極めることじゃないでしょうか。人によって向き不向きがあります。例えばアイデアが無数に閃く人とか。ソリューションだけを思い付いて課題がなおざりな人とか。ひたすらプロダクトを試作設計が出来る人とか。そんな風に、誰もが凹凸があることを忘れずに進んでいくのが良いんじゃないでしょうか。


── 自身の適性を見極めて道を歩む中で、人としての成長が必ず必要になってくると思うのですが、そこには何が欠かせないと常川さんはお考えですか?

インプットとストレッチの二つが重要だと私は考えます。インプットについてはもちろん、やってみないことには本を読んでも人に話を聞いても分からないことはたくさんあるのですが、まず必要最低限の知識がなくては戦えない。


── ストレッチはどのようなニュアンスでしょうか?

続きは下記よりお読みください。


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