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【#9】退社した元社員のヨーロッパ1人旅<プラハ編③>

これは、拓匠開発に新卒で入社した社員(みほ)が会社を辞めて、2ヶ月間のヨーロッパ1人旅に出る壮大な(?)物語である。

みほは会社員時代に叩き込まれている(はず)の「拓匠力」を旅の中で活かし、人間として大きく成長することはできるのか?!

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プラハのオードリー・ヘプバーン


プラハの観光最終日は、のんびりお昼から行動を開始しました。

ぷらぷら歩いて、まずは行きたかったパン屋さんへ。

大きなチョコクロワッサンカフェラテを購入し、イートインをしようと席を探しましたが見当たらず、食べ歩きました。

ショーウィンドーを見ながらクロワッサンとカフェラテを嗜む私の気分はさながら、プラハのオードリー・ヘプバーンです。


しかし、食べ終わったあと自分の服を見るとあまりにも食べカスだらけで、現実はオードリーというより、どちらかというとクッキーモンスターであったことに気付かされました。



理想と現実


公園を散歩したり、観光名所をいくつか回ったりして疲れ果てた私は、そろそろ宿に戻るかと帰路に着きました。



イタリア人版 寅さんに口説かれる


カレル橋からの風景を目に焼き付けながら、ゆっくりホテルへ向かっていたその時。

ハロー!君はどこから来たのかい?

と、デカい中年男性から話しかけられました。ジョージ・クルーニーを一旦膨らませてからギュッとしたみたいな風貌で、いかにもヨーロッパ人という顔つきです。


ずーっとついて来るので話を聞いていると、彼はイタリア人アーティストで、写真を撮ったり絵を描いたり文章を書いたり農業をしたりして生活をしているそう。今は車でいろんな国を巡っているとのことです。

「へえ〜すごいですねえ〜」と適当に相槌を打っていたところ、彼は途中からスイッチが入ったように共感性羞恥を感じる言葉の数々を私に浴びせてくれました。

「君は陶器のように美しいね」
「まるで小さな子猫のようだ」
「なんてデリケートでセンシティブなんだ」


よくもそんな言葉を真顔で言えるなあと感心してしまいます。同じ人間とは到底思えません

しかも彼はベタベタと私を触ってこようとします。

日本人ならすぐに察するであろうこれ以上ない引き攣り顔を披露しても、彼は辞めてくれません。鋼の精神力をお持ちのようです。

途中から流石に恐ろしくなってきて、
「あなたのことを知らないので、怖いです。辞めてください。さようなら!」と言い放ちました。


すると彼は本当に申し訳なさそうな顔をして、
「怖い思いをさせてしまっていたなら、本当にごめん。君にとって僕が今ここからいなくなった方がいいなら、そうするよ。」と言って私を解放してくれました。



腰が抜けるくらい素直でした。悪い人ではないようです。

あまりの素直さに呆気に取られながらも、


よっしゃ今だ!!!

と心の中でガッツポーズをし、競歩選手もびっくりの全力早歩きでその場を立ち去りました。



どうかついてきませんように・・・



と願ったのも虚しく、案の定、後ろからドラマチックに引き留められました


ミロ!ウェイト!!


ミロは大麦飲料です(彼は私を終始ミロとよんだ)。


やっぱ来ちゃったか・・・と残念な表情を浮かべる私に対し彼は、

「僕のパスポートを君にあげる。本当に悪い人じゃないんだ。信じてくれ!」

と、別に欲しくも見たくもない身分証を押し付けながら、私を説得し始めます。


「君はもっと冒険をした方が良い。日本にいる人と連絡したり、スマートフォンで色々調べたりするのをやめて、現地で友達を作るべきだ。僕みたいなね!」

「嫌なら君にはもう触らない。ただ、出会えた奇跡に感謝して、一緒にチェコ料理を楽しもうよ!僕は君という人に興味があるんだ。人生について語ろう!


うーむ。
確かに私は1人で旅をしているのに、現地の人とあまり積極的に話をできていなかったし、まだチェコ料理を食べていませんでした。

妙に納得させられてしまったのと、彼のこの溢れ出る謎のエネルギーはどこから生まれてくるのか、その根源を知りたい取材心が動きました。


そうして私は不信感と警戒心を抱きつつも、このイタリア人版 寅さんと、一緒にご飯を食べる決断をしたのでした。



サーモグラフィーで温度差を見てみたい



彼は食事中、人生や愛について、私にひたすら語りかけてきました。分厚い名言集(ポエム集?)が1冊できそうな勢いです。


愛は雷だ。僕は愛の力を心底信じている。君は愛を信じるかい?」(頼むから質問してこないでほしい)

イタリア人版寅さんの名言(と、みほの心の声)

「大人になると人は、冒険することを辞めてしまう。全部わかった気になって。でも本当は、何もわかっていないんだ。だから僕は毎日、自然の中を冒険しているんだよ」(へえ〜)

イタリア人版寅さんの名言(と、みほの心の声)

「ホテルなんて退屈だから泊まらない。夜は山に登って、原っぱで眠るんだ。星空がいっぱいに見えて最高さ。君も来るかい?」(絶対に行きません)

イタリア人版寅さんの名言(と、みほの心の声)

「毎日が奇跡なんだよ。日常は当たり前なんかじゃない。地球という惑星が太陽を回っているのが、奇跡のようにね。僕は夢の中の夢を、生きているんだ。」(え、どういうこと?)

イタリア人版寅さんの名言(と、みほの心の声)

「僕は毎朝、赤ちゃんとして生まれる。そうして夜は老人になって死ぬ。それを繰り返している。明日、また生まれるかはわからない。だから、今という瞬間を楽しみたいんだ。君といる今のこの瞬間もね。」(毎日大変ですね)

イタリア人版寅さんの名言(と、みほの心の声)



心の声を言語化するのも面倒で「ワオ!ナイス!」とか「オ〜、イエ」とかそんなしょうもない相槌しか打たない私に、彼はなぜこんなにも真剣に語り続けられるのか、私には不思議で仕方ありません。


彼の極端な人生哲学にそろそろ蕁麻疹が出てきそうになった私は、一旦トイレに行って自分を落ち着かせました。
トイレに小窓でもあればそこから外へ出て走って帰りたかったのですが、あいにく窓はありませんでした。


仕方がないので、すごく帰りたそうな顔をしてトイレから出てみます。


すると流石に彼も気がついて、「もう帰りたいのかい?」と聞いてくれたので、私は元気よく「はい、疲れたから帰りたい!!」と言いました。



彼は「普段、女性にご飯を奢ったりはしないんだ。君がスペシャルだからだよ」という多分ありきたりのセリフを言いながら、お会計をしてくれました。

ロマンチックな言葉に寒気を感じてしまう私はまたもや、斜め左下を見ながら引き攣った笑顔で「センキュー・・・」と伝えました。



彼は帰り際、「君はたまに悲しそうな顔をしている。なぜなんだ。人生をもっと楽しまきゃ!!」と心配してくれましたが、それは彼の言葉にドン引いてる顔です。


そして、記念に私の写真を撮りたいと言ってきます。
撮られて何か減るもんじゃないし、まあいいか・・・と思い、彼の古びたカメラで数枚、写真を撮ってもらいました。

顎を引いて、こっちを見て・・・と色々指図してきて面倒なのですが、プロはこだわりがあるのでしょう。大人しくその指示に従い、期待して完成写真を見せてもらいましたが、

全然下手くそじゃねえか!!

とカメラを投げ捨てたくなるくらい、ピンぼけの滑稽な写真でした。


現地で友達を作ることは夢だったけれど、勇気を出してついて行った結果、不信感警戒心でエネルギーを使い果たし、ただただ疲れ果てました。


しまいには、

GPSでも付けられていたらどうしよう・・・

明日の朝、ホテルの前に奴がいたらどうしよう・・・

と恐ろしくなって、疲れているのに眠れない夜を過ごしたのでした。

(今後は知らない人についていくのは辞めます。)



次はベルリン!

明日は電車で、ベルリンへ行きます。たったの1泊ですが、イタリア人のせいで疲れ果てた体と精神を休めつつ、街をぐるっと歩けたらなあと思っています。

それでは、行ってきます🚃


〜旅の順路〜
ブダペスト(ハンガリー)ウィーン(オーストリア)プラハ(チェコ)今ここ!→ベルリン(ドイツ)→ハンブルク(ドイツ)→ローマ(イタリア)→ハンブルク(ドイツ)→コペンハーゲン(デンマーク)→パリ(フランス)→コペンハーゲン(デンマーク)→ボーンホルム島(デンマーク)→ストックホルム(スウェーデン)→トゥールーズ(フランス)→リスボン(ポルトガル)

出発日:8/27(火)〜帰国予定日:10/14(月)



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