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ポストイナ鍾乳洞探検

 スロベニア、リュブリャナ二日目。開けっぱなしにしていた窓から入り込んでくる、冷たい空気に起こされる。外を見ると大粒の雨が降っていた。「雨が降っただけでこんな涼しくなるのか」と改めてヨーロッパの天気の不安定さに嫌気が差す。

 冷えた体を温めようとシャワーへ向かう。シャワー室はフロアごと共用なので、肌寒い廊下を駆け足で通り抜けた。そういえば日本の夏は雨が降っても寒くはならない。ただジメジメと湿気が残るだけだ。ヨーロッパはジメジメしないけど、急に寒くなったりする。そういう日に限っていつも、半袖短パンという格好なのだ。

 今日はスロベニアの数ある鍾乳洞の中でも一番有名な「ポストイナ鍾乳洞」へと向かう。リュブリャナからは電車で約1時間の旅。

 もちろんこんなホステルで朝食なんか出ないので、シャワーの後、準備を終えたらすぐに出発した。鍾乳洞はとても混雑するので早めに行こうと思ったので、大体9時くらいの電車に間に合うように小走りで駅まで向かった。

 リュブリャナの中央駅は首都の駅とは思えない小ささだ。まあスロベニアの人口は200万人くらいしかいないので、そこまで大きい駅は必要ないだろう。僕の地元の横浜より人口が少ないのだ。通勤ラッシュなんてものとは程遠い国なんだろうなと思った。

 プラットフォームで電車を待っていると、人々が思いっきり線路上を向かい側のプラットフォームまで渡っていた。「ドイツでこんなことしたら一発で逮捕なんだけどなあ」なんて思ったけど、それと同時に、これくらいの自由さがある方が気持ちが良いなとも思った。

 電車に乗るとすぐに睡魔に襲われた。日本で電車通勤をしていた時の癖で、電車に揺られていると眠くなってしまう体になってしまっていた。日本の電車内は大丈夫だけど、海外で居眠りしてしまうのはとても危ない。知らぬ間に貴重品を盗まれていたり、次の駅のアナウンスがないとこもるので、乗り過ごしてしまう危険性もある。

 そういえば日本の電車内はとても不思議だ。あれだけ沢山の乗客がほんのわずかなスペースにぎっしり詰まっていても、そこにいる人たちは同僚や友人などではない限り、完全なる他人である。近くに座っている人と世間話を始めたり、電話をかけている人たちもいない。そもそも話声がほとんど聞こえない。図書館の様な静けさだ。

 スマートフォンを手に持ったまま寝てる人も、ズボンの後ろのポケットに長財布を入れている人も、全くスリに遭わない。どうしてこんなにも安全なんだろうか。僕たちが罪を犯すのを極端に恐れているからなのか?それとも経済的にそこまで困窮している人が少ないから?

 日本の電車に乗るときは、切符を買って改札口を通らなければならない。ヨーロッパなどの様にどんな人でもとりあえず電車に乗るということは基本的に不可能だ。盗人も「切符を買ってまでする程では無いかな」と思っているのだろうか。

 そんなことを考えたら、ポストイナ駅に到着した。駅の外へ出ると、ただの田舎まちがあるだけだった。Google マップを開いて鍾乳洞の位置を確認しながら歩いていくことにした。

 徒歩で行くと25分以上かかってしまったがようやく鍾乳洞入口についた。しかし駐車場のあたりから長い列が続いている、、、これはもしかして、、、

 最後尾の人に聞いてみた。「これは鍾乳洞に入るための列?」もちろん答えはYES。東京ディズニーランドでもこんなに長い列あるのかなってぐらい長かった様な気がする。

 周りで並んでいる人たちはカップルや家族連ればかりで、一人で来た僕は少し居心地が悪かった。でも一人旅をしている時は基本いつもそう。なんでもどこでも自由にできる代わりに、孤独感とも戦う必要がある。僕自身の戦い方としては、とにかく何かに夢中になること、熱中していることが必要になる。僕は写真を撮っていると、自然と熱中しているので、孤独感を感じなくなる。

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 1時間半くらいだっただろうか。それからようやく入口まで来ることができた。チケットを買っていざ中へ。

 そこにあったのは、トロッコ?

このポストイナ鍾乳洞はトロッコでも有名なのだ。始めの何キロかをトロッコで進んでいく。その間に光に照らされた洞窟の中が徐々に姿を現し始めた。

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 トロッコから降りると、ツアーガイドがこの鍾乳洞について説明し始める。もちろん英語だ。留学の間に英語ができる様になって本当に良かったと思った。

 主なルールとしては、洞窟内は撮影OKだけどフラッシュは禁止。後直接手を触れることも禁止である。なぜならこの鍾乳洞を傷つけることになるからだ。

 ガイドが実際に人間が触れた鍾乳石を見せてくれた。普段は真っ白な鍾乳石の天辺あたりが真っ黒に変色してしまっている。人間の皮脂や油分が染みを生んでしまっているのである。

 それだけ言われてもフラッシュ撮影や鍾乳石を触る人は少なくない。世界中からくる人々を一言で従わせることは不可能なことだとも言えるだろう。。

 混んでいたこともあって結局洞窟を出た頃はとっくに昼過ぎになっていた。

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 ツアーではガイドさんが鍾乳洞について色々と解説しながら、鍾乳洞内に作られた人工の道を歩いていく。ただガイドが何を言っていたかは全く覚えていない。

 一つだけ、その時の自分に言いたいことがある。「洞窟は夏でも寒いぞ」と。この時の旅での格好は基本半袖に半ズボン。ユニクロのパーカーを一つ持っていただけなのだ。結局早く洞窟を出たくてたまらなかった。だからあまり鍾乳洞についての解説を覚えていないんだ。

 洞窟を出た頃はとっくに昼過ぎだった。帰り際に売店で、鍾乳洞ないに住む「類人魚」のぬいぐるみを買って帰ることにした。

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↑これが類人魚(Wikipediaより)

 昼飯をまだ食べていなかったので、近くのキオスクで適当にパンとかお菓子を買って駅で食べることにした。食べ終わって数十分過ぎても電車はこない。。。

しばらくした後、駅構内にアナウンスが響き渡った。耳を凝らして聞いてみたが、スロベニア語だ。何を言っているか全くわからなかった。この後に続いて英語のアナウンスが来るのかなと思ったが、そこで放送はピタリと止まってしまった。

周りに観光客は見当たらない。僕一人だけだ。すると駅のベンチに座っていた地元住民だと思わしき人たちがゾロゾロと駅の外に出て行った。「何が起こっているんだろう」と不安になった僕は駅員さんを探すことに。

プラットフォームに駅員のおばさんがいた。こんなど田舎の駅で英語が果たして通じるのかと思いつつ、ダメ元で聞いてみた。「リュブリャナ行きの電車はいつ来ますか?」

すると駅員のおばさんは答えた。めちゃくちゃ流暢な英語で「ああ、リュブリャナ行きの電車は故障してもうしばらくこないから、バスを出すよ。駅前で待ってな」と。スロベニアはいろいろな国と国境が接している小国なのもあってか、英語の普及率が高いんだなと感じた。

 直後にバスが駅前に到着したので乗り込んだ。電車のチケットを見せたらそのまま通してくれた。バスよりも電車派だけど、電車で来た時とは違う風景を見ながら帰れたのでまあいいか。

 この日は雨で濡れたのもあるし、寒かったこと、洞窟探検でどっと疲れてしまっていた僕は、今晩の晩飯を適当にスーパーで買って、ホステルに帰ることにした。

 ホステルに帰ると、僕たちの部屋の隣の部屋にカップルが到着していた。「どこから来たんですか?」と尋ねてみたら、オーストラリアから来たそうだ。オーストリアじゃなくてオーストラリア。「わざわざよくこんな遠くの小国まできたね」って言ったら、「夫婦でヨーロッパ中を旅行してるんだ」って返してきた。なるほど、結婚してからもこうやって遥々遠くまで長期間旅行する夫婦がいるんだなあと感心した。

 どんなライフステージであっても、長期の旅行は不可能じゃ無いんだ。そう思ったら、今後の人生そう悲観するほどのものでも無いかなって思えてきた。

 社会人だからこうしなきゃ、結婚したからこうしなきゃって誰かが決めるもんではなくて、当事者たちが決めるべきなんだよね。これは簡単に聞こえるかもしれないけど、実際にそうできる人はとても少ない。そうしないことが、僕らのマインドセットとして、深いとこに埋め込まれているからなのかな。

 さて、明日は朝のバスに乗ってクロアチアの首都、ザグレブへ向かう。衣類を真空パックに詰めて準備を済ませて寝ることにした。ザグレブのホステルは前日に予約し、バスも予約した。この旅では、柔軟に動ける様に宿泊先と交通手段は前日までに決めることにしている。いつ何があるかわからないから。

次の記事からはクロアチアでの様子について書いていきます。

では、また。

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