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4. キリマンジャロへ行こう

内定ゲット

あの約束から早1年が経とうとしていた。子供の頃父親から、年寄になればなるほど時間の経過が早くなるよと聞いたことがあった。その当時はちょっと何言ってるのかよく分からなかったが、今はそれを頭でより身体で理解することができる。
僕はあの大崩山登山後の約束をモチベーションに、自分なりにではあるが死ぬ気で就職活動に取り組んだ。お世辞にも上手とは言い難いエントリーシートを友人及び先輩、また大学のキャリアセンター職員の方に添削してもらってはきついダメ出しをくらい、メンタルブレイクする毎日。テスト期間や授業課題以外で利用したことがなかった図書館にほぼ毎日籠もっては、ずっと就職試験に向けての勉強やエントリーシート作成に取り組む日々を過ごしていた。

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そんなかいあってか、志望していた企業から複数内定をもらうことができ、僕の就職活動はめでたく終了したのであった。今となっては新卒で入社した会社とはおさらばし別の会社で働いているが、この場をお借りして再度当時協力してくれた方々に深い御礼申し上げたい。さて。そうとなったらあの約束を果たすしかないだろう。無事内定通知をもらったところで、僕は早速大橋に電話をかけるのであった。

キリマンジャロへ

内定をもらってから3ヶ月が経った9月中旬。僕は1人成田空港で、キリマンジャロの所在国「タンザニア」へと飛び立つ準備をしていた。あれ1人?大橋は?
みなさんよく気づいてくれました。相棒大橋。なんと、地元で日給2万超えのバイトがあるという理由で急遽日程を変更すると言い出すと、僕の反対を押し切り最終的には日程を変更してしまったのだ。これには僕も憤りを隠せずかなりきつく怒ったのだが、タンザニアでビール10本奢るという条件で和解した。今の日本と韓国も、これくらいの勢いで和解してほしいものである。

それでは搭乗券確認します。一列にお並びください」
ついに搭乗ゲートが開かれた。CAさんの指示のもと搭乗者がきれいに一列に並んだのだが、僕以外全員アフリカ人というなんとも奇妙な光景。スイミーになった気分である。さて、今回キリマンジャロに行くにあたり僕が使用した飛行機は、「エチオピアエアライン」。決め手の理由は目が飛び出るほどの安さ。日本→韓国→タンザニアと、トランジトットを1つ挟むだけのスーパー便利な便にも関わらず、その値段なんと片道6万円、、、!!!
これには僕も驚きを隠せずすぐに購入を決めた。しかし購入して数週間後、驚愕の事実を知ることとなる。なんとこの飛行機。つい最近墜落事故を起こしたのである。しかも搭乗者全員死亡という、かなりの大事故だ。
しかし知った頃にはもう遅く、返金または日程変更の期間は締め切られていたため、僕は恐怖に慄きながら搭乗することになったのであった。

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モシという町

成田を飛びたってから15時間が経過し、僕はようやくタンザニアの首都である「ダルエスサラーム」に到着した。ここに来るまでの道のりで、飛行機の翼が折れるだのエンジンが止まるだのといったメンテナンス不良による事故はなかったものの、気候に恵まれず揺られに揺られながらのフライトだったため、何度死を覚悟したものか。しかしその都度僕の目の前に現れてくれた、超絶色気たっぷりのCAさん。そして僕の隣に座り、スワヒリ語で何か呪文のようなものを呟いては、僕にオスマンサンコンのようなしわくちゃな笑顔を振りまいてくれた、Notorious Big似のおじさん、本当にありがとう。あなた達のおかげで、ひとまず旅の序章を乗り越えることができました。改めて、ありがとう。

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さて。ダルエスサラームへと到着したはいいものの、これで終わりではない。ここから、キリマンジャロの麓の町「モシ」へと移動しないといけないのだ。モシという町を聞くと、モシモシと言いたくなることは承知済みである。モシへの移動はまたまたエチオピアエアラインを使用と、この国はエチオピアエアラインに支配されているのかと思うくらいの頻度での使用である、、、、。

ダルエスサラーム空港で3時間ほど暇を潰してからモシ行きの飛行機に乗り、そこから更に1時間空の旅を楽しんだところで、ようやくモシの町へと到着した。さすがはキリマンジャロ麓の町。成田からタンザニア行きの搭乗者とは打って変わり、世界各国からの登山者がモシの小さな小さな空港に集結した。なんだか自分もその一部になっているのかと思うと、自然と胸が高まった。

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無事入国審査を終え外へとでると、多くの登山ガイドで賑わっていた。そう。キリマンジャロは世界遺産かつ国立公園であるため、現地ガイドの同行が必ず必要なのだ。そのため、いつも空港前は彼らで埋め尽くされているという話をキリマンジャロ先輩が話していたのをふと思い出した。そんなときだ。

「Takuro-Takurosan!!!」

明らかに他の人間とは一線を画す濁声で僕の名前を呼んでいる声が聞こえた。その声を頼りに群衆の中を駆け巡ると、1人水色の服をきた清々しい男が立っていた。

「Hi, My name is Richard. Nice to meet you」

濁声の彼の名は、リチャードであった。

次回 「リチャードという漢」

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